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第574話

Author: レイシ大好き
緒莉が外に出たあと、彼女の心はひどく混乱していた。

これから、いったい何をすればいいの?

京弥を追いかけて止めに行くべき?

でも、もうだいぶ時間が経ってるし、どの方向に行ったのかすら分からない。

探しようがない。

緒莉の顔には、これまで見たことのないような「迷い」の色が浮かんでいた。

本当に、怖くなってきた。

もし紗雪が目を覚ましたら、自分の人生は、どう変わってしまうのだろうか。

やっと会長代理の座に就いたばかりなのに、こんなにも早く引きずり下ろされるなんて......

そんなの、絶対に認めない。

どうして?

同じ二川家の子どもなのに、なぜ自分ばかりが身体の弱さに苦しめられるの?

それに比べて紗雪は健康で、頭もよくて、顔も綺麗で......

思い出すたび、緒莉の胸には嫌悪感がこみ上げてくる。

母は一体どうしてるんだ?

同じ子どもなのに、どうしてあんなにも不公平なの?

彼女だって一生懸命頑張ってきた。

なのに、どれだけ努力しても紗雪の背中さえ見えない。

だからこそ、今回の「手段」を選んだのだ。

せっかく計画はもう大半成功していたのに。

今一番大事なのは、しっかりとその座を確保すること、それだけだった。

なのに、まだ邪魔が入る。

どうして?

京弥も、彼の友人も。

みんなして、自分の邪魔をする。

緒莉は心の底から不満だった。

これまで積み重ねてきた努力を思えば思うほど、彼女の心には絶望が広がっていく。

その時、辰琉が出てきた。

道端にぽつんと立ち尽くしている緒莉を見つけたのだ。

彼女の表情は暗く、感情の読めない顔をしていた。

それを見ただけで、辰琉には分かった。

計画は失敗したのだと。

こんな顔をしているのが、何よりの証拠だった。

彼自身も気分は最悪だったが、こんな時だからこそ、男としてしっかり立ち上がらなければならない。

彼は緒莉のそばに歩み寄り、そっと肩に手を置いた。

「緒莉......大丈夫か?」

聞き慣れた声に、緒莉はついに堪えきれず嗚咽を漏らした。

「どこに行ってたの?あの人たちが、私を......!」

そう言うと、彼女はついに声をあげて泣き出した。

ここまでの毎日が、あまりにも過酷だった。

身体も心も疲弊していて、母の目を警戒しながら会社を回し、あの年配連中の監視の中で、一瞬の気の
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