「次は私の話をきいてほしい」
「愛の話?」
愛が自分から自分の話をしてくれるのは多くない
「うん。みっちゃんも昔の話をしてくれたから、今度は私がみっちゃんに私の話を聞いてほしい」
「わかった。聞かせて。」
愛は学校での愛のような真面目な顔で話し出した
「前に教室でみっちゃんに少し弱音を吐いたことを覚えてる?」
「覚えてるよ」
あれは初めて愛とちゃんと話した時のことだし、その日に付き合ったから忘れるわけがない
「私だって最初は期待に応えたいと思って頑張ってました。でもずっと期待に応えるのは本当に辛くてきつくて。しかもいつの間にか才色兼備の完璧な女の子といわれるようになって。どの自分が本当の自分かわからなくなる気持ちがあなたにわかりますか?」
教室で愛が言っていた言葉だ
「私はいつのまにか才色兼備の完璧な女の子というイメージを作られてその期待に応えようと考えっていたけど、本当はもっと前から私は期待に応えるために努力をしてきたの」「もっと前?」
「うん。私の両親は共働きで2人とも出張が多かったり、夜は遅かったりで私よりも仕事優先って感じで私はお祖母ちゃんに育てられたの」
そこから愛は昔の話をしてくれた
私は普段から家に両親はいないものと割り切ろうとしていたけど、それでも子供ながらにお母さんには甘えたいし、お父さんには遊んでほしかった。だからどうやったら両親に相手にしてもらえるのかを考えた時に、頑張ってたくさん褒められたいと思っていた。
だから勉強も運動も人よりも頑張っていたし、同級生が放課後遊んでいるときも家で勉強をしていたし、時間があればyoutubeなどで調べた運動をしていた。 だんだんと努力の成果が出てきて同年代の中では勉強も運動も上の成績を残せていた。 それでも本格的に部活動をしている人には勝てないし、自分よりもすごい人たちはいっぱいいたから1位にはなれなかったけど、どれも平均以上の成績を残すことはできたと思う。 そしてある日テストの点数がいいときがあったから、両親が帰ってくるのを寝らずに待っていた日があった。 その日は両親の帰宅時間が重なったらしく2人同時に帰宅していた「なんで愛がこんな時間に起きているんだ」
第一声は起きていたことに対する説教だった。
普段は21時半には寝ておかないといけないのに、両親が帰宅したのは22時半。 いつもより1時間遅くなっていたから当然っちゃ当然だったのかもしれない。「ごめんなさい。でも今日テストの点数がよかったからお母さんとお父さんにみてほしかったから」
「テストの点数?」
そういってお母さんは私のテストをみた
「90点ってあんた100点じゃないじゃない」
「100点取ってから私たちにみせにきなさい」
両親が私に言った言葉は私が期待していた言葉ではなかった
お祖母ちゃんは私の90点をみたときには「愛ちゃんは頑張ったね。今日は愛ちゃんが大好きなプリンを作ってあげる」
お祖母ちゃんがたくさん褒めてくれたからお母さんとお父さんからも同じようにたくさん褒められると思っていた。
しかし現実は思っていたよりもずっと残酷で元々頭がよく学歴もある両親からしたら小学生のテストの点数なんて満点取って当たり前だったのかもしれない。 だから90点をみたときの反応も薄く、むしろもっと頑張れよということだったのかもしれない。「早く寝なさい」
「お父さんたち疲れているんだ」
「はい...」
この時に私の中で何かにヒビが入ったような気がした。
今まで頑張ったら両親が振り向いてくれると思っていたのが、子供ながらに諦めてしまったのかもしれない。 問題はこの後も続いた。 両親に振り向いてもらうために努力してきた勉強も運動が学校の先生や同級生には認められていた。 勉強が苦手な子はわからないことは私に聞きにくるようになったり、運動会などではリレーのアンカーを任されたりといつの間にか自分が求めていなかった「期待」をされるようになっていた。 容姿も両親の遺伝をちゃんと受け継いでいてスタイルも悪くないと思う。だから中学に入ったあたりから男子生徒から告白などをされるようになった。 当時の私は恋愛には全く興味がなかったから全部断っていた。 元々男子生徒とは関わることが少なかったのもあるけど、告白を断り続けていると女子生徒からの見え方も変わってきて私は学校で孤立した存在になった。 でもさくらだけは常に私のそばにいてくれたから学校では常にさくらと一緒に過ごしていた。 それでも一部の男子生徒からはアイドル的存在にされて、それが盛られに盛られて高校では才色兼備の完璧な女の子というイメージをもたれてしまった。「これが私の過去の話。ごめんみっちゃん。みっちゃんの話を聞いていたら自分も聞いて欲しくなって...」
話し終えた愛の表情は先ほど俺が話し終えたときと同じような顔をしているのかもしれない。
「いいんだよ。俺も弱音吐いちゃったし」
愛にこんな昔の話があったことに正直驚いていた。
大げさに言わなくても愛はいい子だと思う。 だから両親に愛されて育ってきたと思っていたけど、両親に愛されるために今の愛がいるということがわかった。「愛はこれからも努力を続けていくの?実際周りのことなんて気にしなくてもいいんじゃないかなとも思うけど。だって周りの期待に応えるって辛いだけじゃん」
「私も何度も辞めようと思ったよ?でも辞めれないんだよ」
「どうして?」
「結局私は期待しているのかもしれない。努力を続けていればいつか両親が私のことをみてくれるかもしれないって」
そう言っている愛の目から涙が流れていた
「ごめん。変だよね。今まで全く振り向かれていなのにそれでも期待してしまうなんて」
俺は泣いている愛を抱きしめてた
「みっちゃん???」
愛は突然の出来事に思考がつていきてなかった
「愛は変なんかじゃない。子供が親に振り向いてもらいたくて頑張る姿はおかしいわけない。もしおかしいって言っている奴がいたらそいつがおかしいんだ」
今の愛の姿をみたときに芽生えた感情は「怒り」だった。
愛の頑張りを認めない両親、勝手に期待している周りの人間。 そうゆう目に見えない空気がこの子を苦しめている。 そしてどうしてやることもできない自分に対しての怒りだ。「でも、これだけは覚えてほしいんだ。
ここに愛の努力を見ている奴がいる ここに愛の努力を認めている奴がいる ここに愛の努力を応援している奴がいる 愛が俺に弱音を自分に吐いてほしいっていってくれたみたいに、愛は俺に弱音を吐いていいんだ 疲れたらここで休めばいい。泣きたくなったら抱きしめてあげるから。 これからの愛は一人じゃない。絶対に俺は君の味方であり続けると誓うよ。」「私めんどくさいよ」
「いいさ。だって付き合っているんだから。お互い様だ」
「みっちゃんんんんんんんんんん.....」
愛は大声で泣きだした。
子供のように大声で泣くこの女の子を心の底から守ってあげたいと思った 自分にも表と裏がある。表では愛を見守って、裏では愛を守ろう 今自分にできることはこんなことだ。 そしていつかは....「春乃って可愛いよな」「わかる」「でも嶋野さんの次だけどな」「それもわかる」愛ちゃんとの仲は中学生の時からで、最初のきっかけははっきり覚えている~中学一年生のとき~私は元々人見知りということもあり、学校が始まって1週間が経っても仲のいい友達を作ることができていなかった。それもそうだ。だいたい中学校は小学校からそのまま上がる子たちが多いから地元同志だったり、小学校が違っても幼稚園・保育園が一緒だったりして顔見知りのパターンが多い。私は中学からこっちに引っ越してきたから顔見知りの人はいないところからのスタート。しかも人見知りという最悪の中学校生活のスタートだった。ある日次の授業が移動教室の時、私はトイレにいっていて出遅れてしまった。教室に戻ると誰も人がいなくて焦って教科書をまとめて教室を出ようした。出ようとした瞬間、誰かが入ってきて盛大にぶつかり持っていた教科書を下に落としてしまった「あちゃ~。やっちゃった。ごめんなさい」「こちらこそごめんなさい」「ありがとう」その時のことは今も鮮明に覚えている。ありがとうと顔をあげた時に美人な顔が目の前にあった。そう、この時が春乃桜と嶋野愛の初めての出会い。「大丈夫?」「う、うん!!ありがとう。えっと~」「私は嶋野愛」「嶋野さんね。私は春乃桜」「春乃さんはここで何しているの?次の授業始まっちゃうよ」「トイレにいって帰ってきたら教室に誰もいなくて焦って教室出ようとしたら嶋野さんにぶつかっちゃった感じ」「なるほど。私は忘れものしたからとりにきただけ」「そっか。嶋野さんって次の移動教室の場所わかる?」「わかるよ」「それなら一緒にいっていいかな」「いいよ」「ありがとう」中学校に入って初めて面と向かって話せた瞬間だったそれからも愛ちゃんと話す機会が増えていって愛ちゃんことを知っていった。愛ちゃんは周りから才色兼備の完璧な女の子ってイメージを持たれているけど、案外抜けていることが多くて、一番驚いたのが初めてするスポーツはなんか上手くいかないところ。勉強も常に上位にいるし運動神経も決して悪くないのに、なにかがおかしいというのが笑えた。愛ちゃんの深い事情は知らないけど、周りからの期待に応えようとする気質が強くて、球技大会みたいな周りから期待される行事のときは私が練習に付き合ってい
「母さんこれ」「愛ちゃんがきてくれたから奮発しちゃった」「お母さんこれは奮発しすぎじゃ」真紀に呼ばれて下にいってみるとテーブルの上には俺たちの誕生日でも用意されないぐらいのご馳走の山があった。テレビでしかみたことがない高級なお肉や、お寿司とお刺身の盛り合わせ。他にもサラダやらなんやら。愛の存在は松岡家の食卓を一気に豪華にしてしまった。「愛ちゃん遠慮せずに食べてね」「はい!!」愛は最初ほどの緊張感はなく、徐々に松岡家の空気に慣れてきている。まぁ自分でいうのものおかしいが、家は比較的馴染みやすい家かもしれない。両親はあんな感じだし、妹は愛にべったりだし。他の家をみたことがないからわからないけど。「じゃぁお腹もすいたし、いただこうか」「俊哉君、今日はシャンパンでもあける?」「いいね。愛ちゃんもいるし飲もうかな」「え~。お父さんとお母さんがお酒飲むの久しぶりだね」「今日は特別な日だからね」「愛にこれ以上プレッシャーかけるのやめてあげて」愛は父さんと母さんからの歓迎のされ方に圧倒されて、どうしていいのかわからなくなっている「みっちゃん、私は大丈夫だから」「愛がいいならいいけど」「さぁ飲み物も行き渡ったところで、いただきます」「「「いただきます」」」「何このお肉。めちゃくちゃ美味しいんだけど」「そりゃそうよ。グラム1000円超えているんだから」お肉の相場がわからないからグラム1000円がどれぐらい高いのかわからないけど若干父さんも驚いているところから高いのは間違いない「ほんとだ。このお肉美味しい」愛もお肉にご満足のようだ「えっ?」俺もお肉を食べようとしたときに母さんが急に驚いた声をだした「急にどうしたの」「愛ちゃん泣いているの?」「えっ?」今度は愛が
愛の「彼女」発言から教室はすごいことになっている。そのあとに俺が倒れた後に愛が俺のことをお姫様抱っこしたこと、サッカー部の主将が保健室まで運んでくれたことや倒れた後のことを敬都に聞いた。起きたことを聞くと俺たちが付き合っていることを隠すことも難しいのはわかる。わかるけど、こんな注目を集めている状態で言わなくてもいいんではないかなと思っている。なぜなら先ほどから「あんな地味なやつが彼氏なら俺でもいけたんじゃね」「絶対俺の方がいけているのに...」「嶋野さんって男をみるセンスはあまりないんだね」などなどネガティブな発言が聞こえてくるのが俺の心に刺さりまくっているからだ。愛は何とも思っていないみたいだけど「・・・・」あれ、なんか目がすごく怖くなっているのは気のせいかな「あいつらの顔覚えておこう」なんか怖いこと考えているような気がするけど気のせいかなそんなこんなで俺は男子から、愛は女子からの質問攻めにあいながらもなんとかその場を乗り越えた。球技大会よりも疲れたかもしれない~放課後~「ごめんねみっちゃん」「いいよいいよ。別に絶対隠しておきたいわけじゃないし」「そうなの?」「陰キャ男子と才色兼備の完璧な女の子が付き合っているとなると嶋野愛のブランドが低下してしまって今までの愛の努力の邪魔になるかなって思っていただけ。あとは他の男子の視線が怖かったから」「そんなことみっちゃんは気にしなくていいよ。だって私はそんなイメージなんかよりもみっちゃんの方が大切だし、みっちゃんと付き合って才色兼備の完璧な女の子が崩れなるなら全然大丈夫」「愛...」「みっちゃんが嫌な思いしていないんだったらそれでいいよ」「むしろ助けてもらって嫌なわけないよ」「それならよかった」「さっきから気になっていたんだけど」「なにかな」「なんかそわそわしていない?」「そう?」「
保健室の扉が開いた先に立っていたのは「母さん...」俺の母親の松岡真奈だった「瑞樹大丈夫?先生から頭を打って倒れたって電話があったから」「うん。さっき起きたところだけど大丈夫そう」「そう。よかった。」「心配かけてごめん」「いいのよ。ってそちらは」「わ、わ、私は瑞樹くんの彼女の嶋野愛と申します」「瑞樹の彼女?」「は、は、はい。瑞樹くんと健全な交際をさせていただいております」こんな緊張している愛をみるのは初めてで、面白いし可愛いと思えてきた「あらそうなの。瑞樹にこんな可愛い彼女がいたなんて。母さん初耳なんですが」「いうタイミングがなくて」本当は家に何回も連れていて真紀もしっているぐらいだ。母さんは基本的に仕事で日中はいないからそのうち紹介すればいいかなぐらいで思っていて彼女ができたことをいっていなかった「まぁいいけど。愛ちゃんこれからよろしくね」「はい。お母さま」「真奈でいいわよ」「はい!真奈さん。よろしくお願いします」いきなり息子の彼女に名前呼びさせる母親ってどうなのかっていいたくなるが愛も母さんも楽しそうだからいいか「瑞樹に彼女ができていたことにも相当驚いたけど、学校の先生から電話があったときに球技大会のサッカーで頭を打ったときいたときも同じぐらい驚いたわよ。瑞樹がまだサッカーをしてくれているなんて」「どうゆうこと?」「私はあなたの母親よ。あなたがサッカーを辞めた理由もなんとなくは理解しているし、本当はまだあきらめがついていないことも理解しているつもりよ」母さんにはすべてお見通だった「それに瑞樹は覚えていないかもだけど、瑞樹は「お母さん、僕は将来プロサッカー選手になってみんなのヒーローになるんだ」っていっていたときの顔は今も忘れない。私はなれるなれないは関係なくあんな顔しているあなたのことが大好きで誇らしかったのよ」「でも、あなたが中学の最後に
「母さん、俺サッカーは中学で辞めるよ」「そう」母さんは一言だけ返事して、そのあとは何もきいてこなかった。その時の母さんの気持ちは呆れだったのか悲しいだったのかはわからない。ただ母さんのあの時の顔は悲しそうに見えた。「夢か...」また昔の夢をみてしまった。最近はよく自分がサッカーしてたあの時の夢をよくみるそれもそうだ、久しぶりにサッカーをして...あれ、サッカーをしていて俺どうなったんだっけ。「みっちゃん!!」「愛?」愛が突然俺の胸に飛び込んできた。俺はどうゆう状況なのか全くわからなかったが、愛は泣いていたからとりあえず抱きしめた「えっと。俺はどうなったの?ここ保健室だよね」「覚えていないの?」「そのようです...」「みっちゃんはあのクソ男に横から飛ばされて頭を打って気を失っていたんだよ」「確かに。横からかなりの衝撃を受けて飛んで行ったところまでは覚えているような覚えていないような」記憶が曖昧なのは脳震盪を起こしたからだろう。前もこんなことがあったからなんとなくわかる。しかも飛ばされた衝撃で倒れた側の身体は傷と砂だらけになっている。「それよりも俺が気を失った後どうなった?」「それよりもじゃないよ!!心配したんだから。」「ごめんなさい」「みっちゃんが倒れた後、サッカー部の主将が間に入って相手のクラスは失格になって私たちのクラスの勝ちになったよ」「失格って...そんなルールあるんだ」通常のサッカーだったら故意なファールはイエローカード、レッドカードが出たりするが、球技大会だからこその失格ということかなそれにしても、相手から飛ばされて脳震盪で退場ってどんだけださいんだよ俺。愛と「区切り」みたいなかっこつけたこといってこの体たらくはあまりにも残念すぎる「...」「どうしたのみっちゃん。どこか痛いの?」「いや、自分が情け
調子に乗っていたのは間違いない敬都が今までされていたことを考えると木村にこのぐらいをの「恥」をかかせてもバチは当たらないでも恥をかかされた男の思い切りを甘くみていたのかもしれない。佐々木にパスを出した後に横からものすごい衝撃を感じた。次の瞬間俺の視界は一瞬真っ暗になった。おそらく俺以外は今どのような状況になっているのかはわかっていただろうが俺は何が起こったのが理解するまで時間がかかった。今の衝撃は木村がボールがないタイミングでラグビーなみのタックルを横からあびせてきた衝撃だった。俺は衝撃で飛び、頭を打った感じだ。この感じは現役時代も一度経験したことがある。脳震盪を起こしてるんだろう。周りの声は聞こるけど意識が朦朧としているそのころコートの中では「おいてめぇあきらかにわざとやっただろ」「黙れ、こいつが調子に乗ったからだろ」「てめぇ」森田と木村が殴り合いになる前に3年生のサッカー部の主将があいだにはいった「おい木村」「なんすか」「お前今わざとやったな」「だったら」「退場だ」「何言っているんですか?これぐらいで!」木村は興奮した態度で3年生に食らいつく「これぐらいじゃねぇよボケ」サッカー部の主将は木村に対してどなった。体育会系の主将ともあり、怒鳴り声は怖い体育教師なみだ木村も主将の圧に圧倒されている「今の状況わかっていってんのかお前。お前がぶっ飛ばしてそこに寝ている子はおそらく脳震盪をおこしている。もし打ち方が悪ければ障害が残ることだってあるんだ。サッカーはスポーツだ。競技中におこってしまった怪我でも故意じゃなければ許されることもある。でもお前が今やったのは明らかにわざとだ。お前にスポーツする資格なんてねぇよ。お前らのチームは運営の権限で失格にする」「そこまでするのか」「当たり前だ。これはスポーツじゃない。あくまで