Share

15話

Author: Yuu
last update Last Updated: 2025-06-28 21:00:43

愛と春乃さんと敬都との球技大会の練習を終えた帰り、俺と愛は二人で帰っていた。

「ねぇみっちゃん」

「どうした?」

「サッカー辞めて後悔していない?」

「いきなりどうしたの?」

「さくらに聞かれたときに本当はみっちゃんはもっとサッカーやりたいって思っていたのかなと思って」

「なんでそう思ったの?」

「みっちゃんの返事はもっとやりたかったけど途中で諦めたみたいな感じだったから」

愛の言葉で少し考える...

「後悔なくきっぱり終われているのかと聞かれたら違うんだと思う」

「なんで辞めてしまったのか理由を聞いていい?」

「いいけど大した話じゃないけどいい?」

「みっちゃんの話なら私にとってはどれも大事なことだから」

愛の目は真剣だった。

俺は歩きながら少し昔の話を始めた

俺は小学校2年生から友達に誘われるのがきっかけでサッカー部に入部した。

そのころ部員の数も少なくて俺たちの世代は人数がいたけど上の世代には人がいなかったから5年生の時にはキャプテンに任命してもらった。

小学校の時のキャプテンの仕事はリーダーであるけど、あくまで監督・コーチがまとめてくれるから、特にキャプテンの仕事はなかったと思う。

サッカーは他の同級生には負けないぐらい上手だった。だから中学に入っても1年生から試合に出させてもらえたし、2年生でも一つ上の学年の試合にレギュラーで出させてもらっていた。

先輩が引退してから自分たちの世代になった時に小学生の時と同じようにキャプテンに任命された。

小学校のキャプテンと中学校のキャプテンでは仕事と役割が違っていて、小学校は監督・コーチがまとめてくれるけど、中学校では基本自分たちが主体になっていくから試合こそ監督や顧問がきてくれるけど練習ではキャプテンがその役割をこなさないといけなかった。

その時の俺はキャプテンとしてチームを勝たせるのが仕事だと思っていたから

練習から部員に対して厳しく接していた。

多分最初は上手くいっていたんだと思う。

同年代の部員は協力してくれていたし後輩の子たちもついてきてくれていた。

その時にもっと俺が気づくことができればよかったんだけど俺は「勝つ」ことを優先していた。そして間違った...

ある日の試合で

「今日の試合内容最悪だったな」

「確かに全員動けていなかったな」

その日の試合は格下だったけど試合の内容は散々で結果も0-3と何もできなかった。

公式戦が近くに迫っていたのもあったから少し焦っていたのかもしれない

「よし!今日はこのまま練習していこう。監督いいですか?」

「そうだな。キャプテンのお前がそういってくれるなら今日はこのまま練習していくか」

勝手に決めてしまったのはあったが、みんなも同じ気持ちだと勝手に勘違いしていた

「監督すいません。俺この後用事が会って」

「キャプテンの松岡がこんないってくれているのに、部員のお前がついてこなくてどうするんだ」

「はい...」

監督も昔の人間だったから俺みたいな「やる気あります」みたいな選手は大好きで、逆に「やる気がないようにみえる」選手は好きじゃなく、その時用事があると言い出した選手を怒っていた。

俺も当然監督の言い分が正しいと思っていた。

しかし、実際その部員の用事はとても大事なものだった。

後から聞いた話だが、部員のお祖母ちゃんがあまりよくない状態だったらしく、その日の試合の後に病院に行く予定だったそうだ。

それが練習になってしまったせいでお祖母ちゃんと最期に話せなかった。

もちろん当時は「なんで言ってくれなかったんだ」と思ったが、元々気が強くない子だったし監督に怒られたのもあってそれ以上言えなかったんだと思う。

この出来事がきっかけで部員の不満は募り始めて

俺と部員たちの間にモチベーションの格差ができ始めた。

キャプテンとして勝ちたいと思っている俺と楽しくサッカーをしていきたい部員たち。

もちろん中には俺と同じ気持ちになってくれる人もいた。

しかし、サッカーは11人でするスポーツ。

数人の矢印が同じ方向を向いていても他の部員の矢印が違う方向を向いていると上手くいくわけがない。

そうやって最後にはチームの向いている矢印はバラバラになっていた。

自分なりに精一杯キャプテンをやろうとしていた。だからそのときは自分がどこで間違ったのかわからなかった。でも自分がもっとうまくやっていたらいいチームを作ることができたんじゃないかとも思う。

「これが俺の中学時代の話かな。つまんなかったね....」

自分で話しておきながら少し下を向いてしまう

「みっちゃん辛かったね」

愛の言葉で下を向いていた顔は上を向く、そこにいる愛の顔もとても優しかった。

その言葉を聞いて優しい表情をみて俺は泣きそうになっていた

「全部自分で蒔いた種だから」

「それでもみっちゃんは頑張ったよ」

「まぁ確かに頑張りはしたかな。上手くはやれなかったけど」

「私は部活動をしたことがないし、リーダー的な存在になったことがないからみっちゃんの気持ちを全部理解することはできないけど、みっちゃんが頑張ってきたのはわかるよ」

「愛は優しいね」

「みっちゃんが優しんだよ。だってみっちゃんは自分だけが勝ちたいんじゃなくてみんなで勝ちたいと思ったから試合の後に練習しようって提案したんでしょう。もし自分だけが勝ちたいと思っているなら試合の後に自主的に練習すればいいだけなのに、それをわざわざ監督に直談判して自分も疲れてい中、次こそはみんなで勝ちたいって思って練習したと思うの」

「みんなで勝つ...」

「確かにその部員にとってお祖母ちゃんと最期に話せなかったのは一生の後悔になってしまったのかもしれない。でもその部員ももっと自分で伝える努力をしていれば状況は変わっていたかもしれないし、他の部員もその子の話を聞いてあげてもよかったかもしれない。終わったからいくらでもいえるけどみっちゃんだけのが全責任を負う必要はないんだよ」

「でも練習を言い出したのは俺だから」

「そうかもしれない。みっちゃんの性格は私もわかってきたつもり。みっちゃんが背負うのは仕方ないことだし、実際に起きたことはなかったことにできない。でも辛いことを一人でためこむ必要はないんだよ。私はきついことがあったり、辛いことがあったりしたらみっちゃんに聞いてほしい。だからみっちゃんにも私のことをもっと頼ってほしい。弱音は吐いていいんだよ」

「弱音を吐くか...」

俺は確かに弱音を吐くような相手はいなくなっていた。

勝手に一人で孤立して

「おばあちゃんに教えてもらったんだけど、弱音はずっと吐いていたら、いずれ弱音は吐かなくなっていくんだって」

「弱音を吐いていけば弱音を吐かなくなっていくか」

「うん。吐くだけ弱音は吐けばいいんだよ。それを受け止めるのも私の役割だから」

「ありがとう」

「全部おばあちゃんの言葉だけど」

「なら愛のおばあちゃんにありがとうって今度いわないとな」

「でも、サッカーはもういいの?」

「そうだね。流石に今からサッカー部に入って頑張るモチベーションはもうないかな。それに...」

「それに?」

「今は彼女ができて毎日楽しいし」

「へへへ~」

今日の愛は学校での嶋野愛と家でデレデレのちょっとポンコツな愛でもなくて、新しい愛を見れたような気がした。途中ちょっと泣きそうにもなったけど、彼氏の威厳を保つためになんとか堪えた。

弱音を吐く.....

サッカーを引退してからは部員たちとなんとなく距離を置いていて、同級生とも深くかかわってこなかった分、弱音を吐けるような相手もいなかったし、弱音を吐くという選択もなかった。

でもこうやって愛に自分を少しさらけ出して自分の本音を出すのも大事なのかもしれないと思った。

後悔は消えないけど少しだけ前に進んだような気がした

「でもさ、部活はもういいとしてもサッカーの後悔はずっと消えないと思うの」

「サッカーの後悔?」

「そう。だから今度の球技大会のサッカーで一旦区切りをつけていいと思うの」

「区切りか.....」

「部活に比べたら全然大したことがないんだけど一つの区切りとしては良いような気がして」

「区切りなんて考えたことなかった」

「せっかくだから考えてみて」

「わかった。ありがとう」

「じゃぁ次は私の話を聞いて」

愛はいつもの優しい顔から少し顔を引き締めて

まっすぐ俺の目をみて話し出した

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • クラスで一番人気の彼女が裏ではポンコツで可愛い   41話

    「今日は夕方予約入っていないから店閉めてラーメン食べに行こう」「お店閉めていいんですか?」「いいのいいの。予約制でしているから予約が入っていなくて予定があるときは少し早めにしめるのは結構多いから。それに時間の融通を利かせることができるのは自営業の特権だから」個人的に自営業の都合はよくわからないが、山田さんがいいというのだからいいんだろう。確かに予約制じゃないお店の場合いつお客さんがくるかわからないから営業時間まであけておかないと文句を言う人がいるかもしれないが、予約制だったらコントロールはしやすいのだろう。「それでラーメン食べに行く?」「「いきます」」「よかった。最近の若い子ってこうゆう誘い嫌がる子多いらしいから」それは俺もテレビやSNSで見たことがある。上司からのご飯の誘いが苦だと感じる人は多いらしい。でもこんだけよくしてもらっている山田さんの誘いを嫌と思うわけなくて喜んでという気持ちが強かった。まぁこれが嫌いな上司だったら嫌だと思うのは当然だと思うが。。。会社の上下関係も大変だな・・・山田さんが閉店の準備をしている間、俺と敬都も掃除などを手伝った。夕方5時のタイミングでお店を閉めて、近所のラーメン屋に入った「好きなの頼んでいいから。今日は俺の奢り」「いいんですか?」「当たり前だろ。俺から誘ったうえに高校生に手出しさせるなんて美春に殺される」なんでだろう。俺たちにお金を出させたことを普通に報告してすごく怒っている美春さんが想像できてしまった。美春さんごめんなさい「じゃぁお言葉に甘えて」「おう」俺も敬都も定番のラーメン+チャーハンセットを注文した。「2人はよく飯にいったりするのか?」「2人ではあまりないかもしれないですね」思い返してみると敬都と2人のご飯はないかもしれない「2人はないんですが、よく3人か4人で一緒にいます」「もしかして今日の2人かな?」「そうです」「でも3人ってもしかして瑞樹と嶋野さんと敬都ってこと?」「そうです」「敬都お疲れ様」「はい・・・」なんで敬都がお疲れ様と言われているのかはわからなかったがなんとなく俺と愛のことなんだろうは思う「実際に美容室で働いてみてどうだった?」「はい。すごくいい経験になりました。俺は髪の毛をセットするのは好きだったけど誰かの髪の毛をという視点はあ

  • クラスで一番人気の彼女が裏ではポンコツで可愛い   40話

    「なんで2人がきているの?」「私たちの職場は2日目は午前中で終わるってわかっていたからネットで予約しました」「なるほど」「ダメだった?」「ダメじゃないよ」「よかった」「なんだ二人の知り合いか。それにしても二人ともかなり美人だな」「知り合いというかクラスが一緒の同級生です」「左の人は瑞樹の彼女です」「おい瑞樹。お前は実はすごい系の男だったりするのか?」初めてみる人からしたら俺みたいな陰キャにあんな美人の彼女がいたら不自然に思うのは当然だろう「しかも瑞樹の彼女は学校でもクラスでもNo1と言われているぐらいの人です」「おい瑞樹。お前実は惚れさせる能力でももっているんじゃないか」「持ってませんよ。本当にたまたまご縁がありましてお付き合いすることになりました」「お見合いか」「ほんとですよね。たまたまあんな美人と付き合えるはラノベの主人公ぐらいですよ」「さっきから敬都くんの言葉に悪意を感じるのは気のせいかな」「気のせいです」「まぁ冗談はさておき、嶋野さんと春乃さんはカットで予約してもらっていたけど一人ずつでいいかな?」「はい。愛ちゃんからしてもらおう」「うん」愛のカットの時は後ろには俺がつくようになり、敬都はさくらさんと話しているなんか最近あの二人仲良くなっていないかな「愛さん。なんかこっちを見ているのは気のせいかな?」「本当だよ。俺のカットをみてほしいのに」「あっすいません。ついみっちゃんがかっこよくて見つめていました」「あ、そう...」恥ずかしがることなくストレートな物言いに山田さんは言葉がでなくなってしまっている「嶋野さんは瑞樹のことが大好きなんだね」「はい。みっちゃん以外に興味がないぐらい好きです」「うん。ちょっとまってね。おい瑞樹。お前の彼女なんかすごくないか」「はい。何もしていなかったら才色兼備なんですが、裏ではだいぶポンコツなんです」「そっか。了解。瑞樹せっかくだから嶋野さんの髪の毛ドライヤーで乾かしてあげたら」「えっ。できますか?」「大丈夫。だいたいでいいからやってあげな。多分俺がするよりも瑞樹がした方が嶋野さん喜ぶと思うよ」愛の方を見ていると嬉しそうに目がキラキラしているようにみるのは多分気のせい俺がドライヤーで愛の髪を乾かしている間に山田さんはさくらさんをカットするらしい。さくらさん

  • クラスで一番人気の彼女が裏ではポンコツで可愛い    39話

    「職場体験一日目どうだった?」「めちゃくちゃ楽しかったよ。山田さんって美容師さんも優しくて面白い人だったし。愛は保育園どうだった?」「う~ん。やっぱり子供って難しいよね。予想外の動きをするし変なこと言ってくるし、途中いらってくることもあったけど、さくらからなだめられて落ち着いたよ」「それはよかった」「愛の先生姿みてみたいけどな」「それなら今度みっちゃんの先生になってあげる」「それは恥ずかしいな」「みっちゃんの美容室で働いている姿をみてみたい」「それこそ後ろに立っているだけだよ」「いいのいいの」なぜか上機嫌の愛に違和感を覚えながらも、お互いの近況報告を終えてその日は早めに寝た~職場体験2日目~2日目も1日目と同様に朝から二人のお客さんの予約が入っていて、昼から2人のお客さんが同時に入っているらしい。普段はマンツーマンスタイルでやっているから2人同時に予約を入れることはないそうだが、家族や友達でくる場合は2人同時にすることもあるそうだ。だから今日は俺も敬都も2人組が終わるまではいてほしいといわれた。それでも夜までというわけではないから喜んで了承した。朝のお客さんを終えて昼休憩に入ろうとしたタイミングでお店に女性が入ってきて「「いらしゃいませ」」「私はお客さんじゃないからきにしなくていいわよ」「????」「お~。来たか。2人とも昨日話したけど俺の奥さんの山田美春だ」「山田美春です。よろしくお願いします。あなたたちが瑞樹と敬都ね。昨日の夜2人のことをこの人ずっと話していたから覚えちゃった」「はい。松岡瑞樹です」「中村敬都です」「じゃぁ俺は今からお客さんしてくるから美春が買ってきたデザートでも食べて休憩していていいぞ」「「はい」」「2人ともB&Cはどう?楽しんでる?」「山田さんが予想以上に接しやすくて楽しんで体験できています」「僕も人見知りな方なんですが、山田さんは人見知りな僕でも話やすい環境を作ってくれるから助かります」「まぁあの人の長所だからね。今でこそあんな感じだけど最初の方は不安でいっぱいだったんだよ」「今の山田さんみていたらポジティブな印象しかなないので、ネガティブ山田さんを想像できないです」「そりゃそうよね。私たちが結婚したのはこのお店がオープンして1年後だったの。だからオープンした時はまだ付き合ってい

  • クラスで一番人気の彼女が裏ではポンコツで可愛い   38話

    「昼休憩に入ろうか」美容室は病院や整骨院みたいに昼休みがあるわけではなくて、お客さんが途切れた合間などにお昼ご飯を食べるみたいだ、今の時間は13時だが今から1時間ほど間が空いたからお昼ご飯を食べることになった。「山田さんはいつもお弁当なんですか?」山田さんの弁当は色合いもよく野菜と肉がバランスよく入っているものだった「うちは奥さんが毎日作ってくれている愛妻弁当だ。羨ましいだろ」「羨ましいかはわかりませんがいいですね」「瑞樹ノリ悪いな」「すいません」「山田さん一つ質問良いですか?」敬都が山田さんに質問をした「いいぞ」「B&Cってどうゆう意味があるんですか?美容室っていろんな名前があっておしゃれなものから美容師さんの名字をそのまま使っているところとか様々だと思うんですが、山田さんはなんでB&Cってつけたのかなと思って」「別に大した理由はないけど聞いちゃう?」「はい」「B&Cはな....」「.....」山田さんは数秒間をおいた「ブラックコーヒーって意味だ!!」「????」俺と敬都のあまたの中には?しか思い浮かばなかった「ブラックコーヒーですか?」「そう。俺がお店を独立したのは25歳の時で、独立というよりは元々あった美容師を居抜きという方で引き継いだというのが正しいかな。さっき敬都がいったように美容室の名前っておしゃれだし個性的なものが多いだろ?だからいろいろな候補をあげてもしっくりこなくて。でもお店のオープンの日は決めていたから店名は決めないといけなかった。この名前をつけたときはカフェでオープン準備の事務作業をしていたときで。その時にマスターが淹れてくれたコーヒーがめちゃくちゃ美味しくて、なんか頭のモヤが晴れたような気がしたんだ」山田さんは持っていた缶コーヒーを飲んで続けた「ブラックコーヒーって苦いけど美味しいんだ。最初は苦くて飲めなかったけど徐々に飲み続けていけばブラックしか飲めなくなってしまうぐらい美味しく感じるんだ。美容師は外から見たら煌びらかな印象があるけど実際に働いてみると辛いこと苦しいことはたくさんある。それでも続けていけば美容師が一番いいと思える瞬間があると思う。それに経営も人生も簡単じゃない。こんな美容室になりたいというよりはこの名前は自分に対して「お前の道は甘くないぞ」の意味も込めて付けた感じかな。まぁ最初

  • クラスで一番人気の彼女が裏ではポンコツで可愛い   37話

    「一人目のお客さんは谷口さんっていって30代の女性の方で、メニューはカットとカラーだから敬都はカットの後の掃除やカラーの準備の手伝い、瑞樹は飲み物の準備をお願いするから準備してて」「「はい」」山田さんのやり方は事前にやることを教えてくれるスタイルみたいだ。これは俺と敬都みたいな陰キャにとってはすごく助かる。陽キャにあって陰キャにないもの、それは「コミュ力」である。コミュ力が弱いということは急な展開にも弱いということだ。だからお客さんがきて急に飲み物準備してといわれてもすぐに動くことができない。しかし事前に教えてくれれば気持ち面でも準備することができる。おそらく敬都も同じ気持ちだろ。山田さんの話を真剣に聞いている。早速予約の時間に合わせて谷口さんが来店してきた「「いらっしゃいませ」」事前に言われた通り、お客さんが入ってきたら元気に「いらっしゃいませ」という。元気にいえたかはわからないが俺も敬都も無事にいうことができた「えっ新しいスタッフ雇ったの?」谷口さんはいつも通っている美容室で2人の若者に迎えられて驚いている様子だ「違います違います。この子たちは高校生で職場体験で今日から2日間うちで働いてもらうんです」「なるほど。流石に2人も雇う余裕はないか」「本気出せばいけるっすよ」「いつ本気出すか楽しみだね~~」今の会話だけでも山田さんがお客さんによく思われているのが伝わった席に座ると山田さんは谷口さんに要望などを聞いて髪を切りだした。髪の毛を切っているときの山田さんはさっきまでののほほんとした雰囲気から一転してプロの美容師って感じがしてかっこよかった「ねぇ山田君。いつもよりちょっとかっこつけてない?」「なんでいうんですか。高校生の前だからかっこつけていたのに」「だっていつももっとへらへらしているじゃない」思っていたイメージとは違ったみたいだただ、山田さんの手際の良さは流石の一言で話しながらも素早くカットを終えた「あとはカラーが終わってから仕上げのときに切りますね」「はぁい」敬都は山田さんの切った髪の毛を掃除し、俺は谷口さんに飲みたい飲み物をきき飲み物の準備をしている。たった飲み物を聞くだけの簡単作業ですら緊張してしまっている陰キャですいません。山田さんは話しながらも手早くカラーを塗り終えた。俺も卒業したらカラー

  • クラスで一番人気の彼女が裏ではポンコツで可愛い   36話

    俺と敬都はB&Cという美容室に決めた。B&Cは男性が一人で経営している美容室で、男子生徒が希望ということと家から近かったのもあり、この美容室に決めた。今日は2日間の職場体験の1日目である。職場体験は職場に合わせた服装でいいということで、B&Kの方に電話すると「私服でいいよ」といってもらえたので、今日は愛とデートしたときに着た洋服といつものように髪の毛をセットしてお店に向かった。途中で敬都と合流したが、敬都も最初に出会った時とは見違えるほど髪の毛のセットが上達している。あれからも続けて練習しているのだろう。「こんにちは」「あ~君たちが職場体験の子たちだね」「はい。今日から二日間よろしくお願いします」「君たち2人さ、そのセットは自分でやってきたの?」「はい!ダメでしたか?」「う~~~ん.....めちゃくちゃいけてるじゃん」「はぁ...」「最近子たちはセットが上手だとは思っていたけど二人ともすごく上手だね」「ありがとうございます」「まず自己紹介からだね。俺の名前は山田大輔です。名字でも名前でも好きな方で呼んでくれていいから」「はい。松岡瑞樹です。二日間よろしくお願いします」「僕は中村敬都と申します。よろしくお願いします」「了解。瑞樹と敬都だね。二日間よろしく」流石美容師さん。初めて会って数分で会話の主導権は握りつつ俺たちの緊張をほぐしながら喋りやすい空間を作ってくれている。俺も敬都も人見知り気質があるからこそ、このような方はありがたい「それで今日から二日間体験してもらうんだけど、ざっとうちの店のことについて説明するね。うちの店は見ての通り俺が一人で経営しているお店でスタッフも雇っていないから、カットからシャンプーからドライヤーで仕上げまで全部一人でやっていて、マンツーマンスタイルでやっているから同じ時間帯にお客さんが重なることは基本的にない。それに予約制だから飛び込みで入ってくる人も少ないからある程度余裕をもって体験してもらえるかなと思

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status