Masuk翌日、ジルベールの家を出てマラス子爵邸に向かった。
ジルベールは私が困らないようにお金を渡してくれて、たくさんチヤホヤしてくれた。もちろん婚姻届が出される日など来ない、私はすでに結婚しているのだ。
結婚前リゾート地に来た時、私は子爵に他に妻が2人いると知りショックを受けていた。その時も私の心を回復してくれたのは彼だった。
彼は本当に存在するのか、追い詰められた私が生み出した妖精なのかと思うこともあった。ミゲルとの別れが難しかったのに対し、ジルベールは私が別れを望んでいると悟るとあっさり別れてくれた。
別れるよう圧力をかけても、私に執着するミゲルとは違った。お腹の子の予定日も過ぎていたし、子爵邸で主治医の元で産むのが安全だと思い子爵邸に戻った。
3日間留守にしていた私を診察に主治医がきた時、陣痛が始まった。 生まれるタイミングから母思いで、周りからも好かれるレオの誕生だった。ミゲルと私は村で幼馴染だった。
村一番可愛い私はモテモテで12歳から村のいろいろな男と付き合った。 来るもの拒まず、去る者追わずな私が唯一付き合うことを拒んだのがミゲルだった。幼馴染で昔から私に一途な彼は私には重かったのだ。
私は付き合った相手の誰のことも好きにならなかった。 ミゲルと付き合ったところで当然彼のことを好きになることはないだろうと予想ができた。 だけど、付き合ってしまうと別れるのが大変になることは目に見えていた。ミゲルがなぜ私と結婚していると思い込んでいるかと言えばレオを産んですぐの時に再会したのだ。
彼とだけは付き合いたくなかったのに、私は彼が必要になってしまった。貴族は妻ではなく乳母に子育てをさせるのが基本だ。
ダンテの時にもそうしたので、私はレオの時も乳母に預けていた。 マラス子爵が男の子が生まれたことに喜び、明らかにダンテとは違う早い成長を見せていたレオは跡取りと考えられていた。ダンテは首座りから、成長が何から何まで遅かった。
その上、生まれた時期が早かったせいで常に子爵の子か疑う声があった。 しかし、レオは何から何まで他の子よりも成長が早く、赤子にも関わらず目つきから聡明さが漂っていた。 そのことが2人の夫人は今後自分たちが男の子を出産してもレオが跡取りになるという危機感を持ってしまった。最初にレオが命の危機に晒されたのは生後4ヶ月の時だった。
乳母が目を離した隙にベビーベットから落下したという。 おかしな話だと思った。 普通の赤子が首が座るだろう時期に、レオはベビーベットの柵に捕まることができた。「レオ様が自分で柵を乗り越えてしまったのでしょう」
乳母の表情を見てすぐに彼女が嘘をついていると分かった。「事情は後で聞くわ。あなたはそれまでそこにいなさい」
私は子爵邸の主治医に頭から血を流すレオをすぐに見せた。
レオの処置が終わると、彼を抱えながら乳母から事情を聞くことにした。
もう、片時もレオを離せなかった。 この子爵邸に彼の命を狙う人間がいるのだ。「つかまり立ちができるだけで、柵を乗り越えられるとでも?レオの腕に自分の体重を持ち上げられるだけの筋肉がついているようには見えないけれど⋯⋯」
私の指摘に乳母が震え上がった。
「赤子の成長はいつも突然で、あの、レオ様は成長がお早いから」 彼女はしどろもどろになって言い訳をしてくる。「誰の差金?自白しなさい。」
乳母に鋭い視線を向ける、絶対に許せない。 「ご勘弁ください。もう、屋敷を去ります。ご勘弁を⋯⋯」 跪き私に許しを乞うてくる。「何を言ってるの?貴族の後継者の子を殺害を試みたのだがら、即日死刑よ」
私も帝国法を学んで初めて知ったのだが、エスパルでは人命が空気より軽い。 帝国のように監獄に入れて、セカンドチャンスをもらえるのは軽犯罪のみだ。それ以上の罪を犯す者は即日死刑だ。
穢れた魂が罪を犯させていて、生まれ持った魂の汚れは払うことができないという考えがあるからだ。 本当は人口が多く、罪人のケアまで手が回らないだけだ。「うわー!」
乳母は絶叫すると部屋を出ていった。 ふと窓の外を見ると、落下する彼女の姿が見えた。 2階の窓から飛び降りたのだろう。真相を究明されるとまずいということだ。
おそらく、彼女は自分の家族なりを人質に取られているのかもしれない。 自分の命をここで捨てて、真相を闇に葬ってしまう選択に出たのだ。一切の同情の感情は起きなかった。
むしろ、彼女の死だけでは納得できない怒りが込み上げてきた。 もう子爵邸の空気を吸うのも吐き気がして、レオを抱えて外に出て街を彷徨った。「リーザ、こんなところで何年ぶりだ?」
ミゲルとの3年ぶりの再会だった。「3年ぶりね。ミゲル。あなたこんなところで何をしているの?」
エスパルの平民は生まれてから、死ぬまで自分の村で過ごすのが基本だ。貴族であれば、首都に住んだりエスパル国内を旅行したりする。
私が結婚直前に両親を連れてジルベールと出会ったリゾートに旅行できたのは、結婚支度金があったからだ。馬車などの移動手段が高額すぎて、平民は移動するのが難しい。
エスパル政府の民に自由を与えないことで支配するという作戦なのだろう。「リーザのいない村を出たら、急に村の生活が窮屈に感じてきてよ。今、この近くに住んでいるんだ。貴族様の靴磨きや小間使いをフリーで受けて生計を立ててる」
私がいなかったから、村を出たという言葉に呆れてしまった。「私、結婚ダメになったんだ。私も今ベビーシッターをして生計を立ててるの」
初めてミゲルの気を引くようなことを言ってしまったことより、 レオの前で彼が私の子だというのを否定するような発言をした罪悪感があった。脅威の成長速度を見せるレオも流石にまだ話せない。
でも、私の言葉を理解していたらどうしよう。「リーザ、何回もしつこくてごめん。やっぱりお前が好きなんだ。俺と結婚してくれ」
ミゲルが私を見つめながら恋する瞳で見つめてくる。 全く、唆られない、私は何か感情が欠落しているのだろうか。「嬉しい。運命だね。結婚がダメになったことは村の人には内緒にしてくれる?両親に心配かけたくないの」
ミゲルの瞳に歓喜の光が宿った、彼は私の言いなりになり私の自尊心を満たしてくれるだろう。 「実は、首都に行きたいと言ったら勘当されてさ。村にはもう戻れないよ」 私は、彼の言葉に思わずほくそ笑んだ。彼の家で婚姻届を書いた。
「残りの欄は埋めとくよ、証人は私の両親に頼めば良い?」 ミゲルがまるで夢の中にいるようなうっとりした瞳で私を見つめてくる。子爵に大切にされない、自尊心は一瞬満たされるた。
しかし、彼の愛は重すぎて私には胃もたれしそうで早く立ち去りたかった。「本当に夢みたいだ。リーザと結婚できるなんて」
まだ夢見心地の彼を尻目に、私はレオを抱えその場を立ち去った。 この婚姻届が提出されることもない。住み込みでベビーシッターをしていると言えばミゲルの家にくる回数を減らせるだろう。
子爵も跡取りだと大騒ぎする割にはレオのことを守ってくれない。私の第3夫人としての予算は少なく、親への仕送りでほぼ消えている。
ミゲルは私と結婚したとなれば生活費をくれるだろう。 その、生活費でダンテとレオを守らなければ。生後5ヶ月のレオは私の行動を理解しているだろうか。
私の行動をどう思っているだろう。ダンテとレオを守るため、自分の心を守るためなら私はなんだってやる。
本当は愛のない結婚で心を害する前に、薬草を学んで母を助けたりすればよかったかもしれない。
でも、結婚を決めた時、私は両親のためという大義名分の他に村の外の生活への憧れがあった。 それにマラス子爵と結婚し出産しなければダンテとレオに出会えなかった。2人は私にとって命より大事な存在だ。
だから、私は自分がやっていることを間違いだとも思わないし、後悔もしない。「コットン男爵令嬢と妊娠判定ができるものを開発したんです。それによるとお姉様は妊娠しています。お腹の子が陛下に似た男の子というのはお姉様の勘です。」勘というか願望だろう。相変わらず面白い女だ。コットン男爵令嬢とレオは気が合うようだ。彼女はレオのことが気になっているようだけれど、彼は距離を持って付き合っている気がする。しかし、仕事に懸命な姿が2人は似ていて将来良いパートナーになりそう「将来の皇后にもなる可能性もあるのか、すごいじゃない。2人の息子だと金髪に紫色の瞳とかかな、帝国の子は色鮮やかで面白いね。」エスパルの人間はみんな髪も瞳も水色だった。だから私はエレーナがオレンジ色の髪に水色の瞳というファンキーな色合いで登場し衝撃を受けた。「銀髪に赤い瞳でもミステリアスで素敵ですよね。」思えばレオが音のことばかりを言わなくなった気がする。ダンテが彼が音に敏感なのはエスパル時代の監視の足音を聞くため超能力を身につけたからだと言っていた。それは私が追い詰められた環境下殺気を感じられるようになったのと同じ過程のようで複雑な気持ちだった。「リーザ、俺は君と暮らしたいよ。」また、可愛い年下モードになってしまったエドワードにゲンナリする。「あのね、今はエレーナ最優先なの。エドワードも来期は首都で経験を積んだら?領地運営にも役に立つだろうし、必要な人脈も作れるわよ。」「将来的には首都に住むこともあるかもしれないけれど、エレーナだって小さい時は自然の中で過ごした方がよいよ。レオ様はどう思います?」私が折れないことが分かって、彼はレオに助けを求め出した。「エレーナは幼い頃を子爵領で過ごせば領地が大好きな子になると思いますし、首都で過ごせば幼い子から自分の色々な可能性を見つけれると思います。僕が気にしているのは母上と子爵の今後の関係性です。」突然、レオが私たちの関係性について言いずらそうに口を開いた。「え、もしかして本音を言い合ってるから、いつも喧嘩しているように見える?仲良しだから、大丈夫だよ。」この1ヶ月
「母上、エレーナ会いに来たよ。」ダンテとレオが会いに来てくれた。「エレーナ、こんにちは。お兄さまですよ。」レオがエレーナに駆け寄って声をかけたので、彼女を渡した。「レオは抱っこが上手だね。エドワードは怖がって抱っこしようとしないのに。」私が冷ややかな目をエドワードに向ける。「いや、だって前に抱っこしたら泣かれたから、なんか怖いよ。」エドワードが焦ったように言っている。「明日、領地に帰るんですよね。エレナ様が次の要職試験は受ける気があるのかと聞いてましたよ?」ダンテがエドワードに尋ねているがエドワードは要職試験などこの先も受ける気は本当はない。でも、エレナ・アーデンにはさも首都で働きたいよう嘘を言っているのでこれからもこの質問に悩まされるだろう。「いや、領地の暮らしも良くなってきて、もっと発展させたいと思っているんだ。首都で働くよりもやりがいがあって。」エドワードは得意の好青年スマイルで切り抜けようとしていた。「首都で働いたこともないのに、領地の仕事の方がやりがいがあるって考えているのはなぜですか?本当は元から首都で働く気などないのではないですか?」ダンテがすかさず指摘してきた、もっと言ってやれとひっそりとほくそ笑む。流石に、毎日のように会っているとダンテも彼の嘘に気付いたようだ。「兄上、エドワード様は領地で生涯過ごしたいがために、お姉様の性格を利用し騙しただけです。これ以上、責めてしまうと嘘に嘘を重ねてエドワード様は苦しくなってしまうのでやめてあげてください。」レオがすかさずフォローに入った。さすが、エスパーレオ。全てを察して、沈黙を保っていたようだ。「母上はエドワード様とは本音で向き合うと言っているんだから、これからは嘘なく本音で向き合ってくださいね。」ダンテがエドワードにキツく言っている。「もちろんだよ。今、リーザと今後について本音でぶつかってたところなんだ。俺はリーザとエレーナと領地で暮らしたいし、子供ももっと欲しい。」「母上はもう子供はエレーナで
「エレーナは領地で育てよう。自然もたくさんあるし、情緒豊かな子供に育つよ。エレーナが1歳までは休職してゆっくり過ごすといいよ。1歳になった頃、また妊娠してればそのまま休職できるし。」エドワードは私の出産からスモア伯爵邸で過ごしている。明日、領地に帰る予定だが今後の方針で私たちはしょっちゅうぶつかっていた。彼は私とエレーナを領地に連れて行く予定のようだった。今私は、彼の計画を聞いてはっ倒したい気持ちになっている。彼はこのタイミングで私を領地に連れて行き、そのままズルズル領地で彼の奥さんをやらせるつもりだ。彼のことは好きだけれど、私は奥さん業は13年やってきて自分が向いてないことが分かっている。気が強すぎるのか、夫の機嫌をとること1つできなかった。日々険悪になった前の結婚の失敗が忘れられない。私は行政部の仕事をしたいのだ。任期はあと2年しかなく、また試験を受けなければならない。しっかりと成果を出して、来季は宰相になってまた権限が欲しい。自分の考えたものを形にできる楽しさが忘れられない。「休職なんてする気ないから。明日から復帰するから。幸いうちには子育てに慣れたベテランメイドもいるし、職場の理解もあるの。」最初はお金のために要職試験を受けたが、今は仕事にやりがいを感じているのだ。「休まないの?休んでも給与が出るのに?休んだ方が得だよ。エレーナも母親とずっと一緒にいたいはずだよ。」今、休んで領地に行けば、次の試験で私は首都で働けないかも知れない。首都で働く帝国貴族は陛下に鍛えられているだけあって非常に優秀だ。その上、私はダンテやレオのような天才でもない。「レオとダンテがエレーナは多分天才だから、すぐ手が掛からなくなると言ってたわ。ただでさえ貴族は乳母に預けて子供の世話をほぼしないじゃない。そうしたら私は領地で何をやるっていうの?」貴族は子供を乳母に預けて、可愛がるだけだ。レオとダンテがエレーナの様子を見て彼女はもう言葉を理解していると言っていた。彼らが言うのだからエレーナも天才である可
松井えれなが無事にお姉様に体を返すと、国婚が盛大に行われ皇后エレナ・レオハードが誕生した。結婚から5ヶ月後に彼女が妊娠したことが告げられた。彼女から呼び出されて皇后宮に来ると、少し不安げな顔で彼女が初めて僕に兄役をやって欲しいと希望を伝えてきた。「エレナ、妊娠おめでとう。エレナはきっと良い親になるよ。」彼女はもう皇宮に住んでいるので、以前のように簡単には会えない。僕もアーデン侯爵になった。レオ・アーデンという名前も6年目だ。彼女がエレナ・レオハードになって少し寂しい。本来なら侯爵である僕は皇后である彼女に敬語を使うべきだが、2人の時は身分を忘れ家族として接して欲しいらしいのでそうしている。「私は良い親がどんな親か分かりません。私、みたいな子になっても嫌だなと思います。」彼女は不安な表情をしている。彼女は陛下の前では揺るぎのない心配をかけない無敵な女でいたいのだ。「お父様が最初僕をアカデミーに迎えにきた時に、自分の可愛いお姫様が僕を兄弟にしたいと言っているからついてきて欲しいと言ったんだ。僕はその言葉を聞いた時、これ程愛されている彼の娘エレナに会いたいと思ったんだよ。」この話は本当は秘密にしようと思っていた。彼女は兄上には親を洗脳したから僕を寄越すように言ったらしい。そしてお父様には僕に誰よりも僕を大切にするから未来の侯爵になるように説得するよう言ったという。でも、実際お父様は僕に自分の本当の気持ちを言った。「え、何それ、それでお兄様はよくついてきましたね。もう、お父様はどうしてそんな事いうのよ。」彼女がアーデン元侯爵のことをお父様と呼んでいて嬉しくなった。彼女はいつもどこかカッコつけていて、彼を侯爵と呼んでいたりする。「将来、僕も彼のような親になりたいと思ったし、エレナに出会ってこんな娘が欲しいと思ったよ。」僕は自分が親になって子がいる未来が全く想像できない。でも、今は僕が感じたことを彼女に話して彼女の不安が少しでもとり除ければと思った。「アランが私のこと女神様
「もしかして、俺の妻ですか?」俺は観念して彼女の望む答えを言った。クレアは俺を愛していない、改めて考えると俺のした結婚はなんと滑稽なのだ。お互い愛し合っていないのに、お互いの目的を達成するために結婚した。クレアは注目される貴族夫人になりたくて、俺は母上がこだわった結婚というものを芋以外の女としたかった。「ご名答。だから奥さんを大事にしなさい。まず、見返りなど求めず、無償の愛を与えられる人間にならないと。」彼女が諭すように言ってくる、先程の刺々しさがない。母親のような先生のような言い方をしていて彼女は俺のことを考えて言ってくれているのだとわかった。「わかりました。俺は俺のえれなに無償の愛を捧げます。見返りを決して求めないことを誓います。」俺は彼女に触れたくて手を伸ばしたが、おもいっきり手を振り払われてしまった。彼女の態度から察するに既婚の俺が彼女を慕うのが許せないのだろう。結婚したからには、妻に愛を捧げなければならないというのが彼女のルールなのだ。なんで、結婚なんてしてしまったのだろう。どうして人の性格を変えられるなんて驕ってしまったのだろう。「3日後にお前が心底愛せる相手に会えるから。」過去に戻って結婚前の俺に伝えれば、思いとどまって俺は独身のまま彼女と会えてたのに。せめて10分前に戻って自分の失言を取り返したかった。陛下を羨んでいってしまった言葉ではなく、俺の本当の気持ちを話せばよかった。母上がリース子爵とは100パーセント本音で向き合うと言った時、それだと上手くいかなくなるのではないかと心配した。でも、本音を話しておかないで上手くいかないと非常に後悔するということがわかった。本音をしっかり話していれば、賢い松井えれななら俺の気持ちを読み取ってくれたかもしれない。「気安く触らないで。ダンテ様が私に触れる度、あなたに対する私の好感度が下がっているのがわからないの?結局、初恋のエレナ・アーデンにできなかったセクハラをしまくってるだけじゃない。」彼女がキツく話してきた。エレ
「別の世界に生まれてきた人間でも、出会った時点で世界の境は関係ないと思いませんか?」俺は彼女の頬を包み込みながら訴えた。同じ世界に住んでいても愛する人と出会える確率は低い。俺と彼女は違う世界に住んでいるのに、俺は彼女が好きだ。この確率はとてつもなく低い、もはや世界の境界線など気にするに値しない。彼女は俺の手を外して、顔を背けて抵抗した。「それにしても、能力主義はエレナ様と同じですね。やはり魂が同じなのかな。俺のえれなが知性や能力にときめくとしたらエレナ様はやはり洗脳されてたということか。」俺はエレナ様発信の能力主義を思い出していた。現在の帝国は陛下が治めているけれど、能力主義になっているのはエレナ様の意向だ。エレナ様は他の令嬢とは比べ物にならない天才だが、能力にときめくなら相手は俺でも良い気がした。陛下の能力は判定不能なほどすごいが、彼女が求めているのは話が通じるの能力を持った人間だと思ったからだ。陛下が人間離れしていて、誰もが彼を慕っていてエレナ様も盲目的に彼を愛している。やはり彼は無自覚にしても洗脳できる人間なのかもしれない。「魂の病。」松井えれながそう呟くとよろめいたので慌てて支えた。彼女は自信満々なエレナ様と違い、常に自分の思想に疑問を思っている。彼女の自信のなさがそうさせるのかもしれないが、そんなところが愛おしい。「エレナ・アーデンが洗脳されていたってどういうことですか?」彼女が俺を見上げるように尋ねてきた。「彼女、皇帝陛下、一筋で尽くしてばかりなんです。皇帝陛下には汚いことは一切させないで、自分の手は汚すんです。優秀な人間なら俺だって良いじゃないですか、でも俺のことは利用するだけで愛人にもしてくれない。」陛下が洗脳できる可能性を考えるとエレナ様が悪事が大好きなのも洗脳されているのかもしれない。彼は良い子ちゃんぶりっ子なところがあるので、自分の手を汚したくないだろう。俺はエレナ様と非常に気が合うと思っていたし、能力的にも申し分ない自信があった。そんな俺が選ばれなか







