LOGIN未来は情報崩壊の危機に直面していた。そんな中、深海で発見されたのは二億年前の技術「謎のコア」。それは情報崩壊を止める唯一の鍵だったが、起動には太古の技術が必要だった。Dr.Jは特殊部隊を中生代へ送り込む。その時代には灼熱の過酷な世界を生き抜く父・ゲンと息子のソウ。二人は単なる先住者ではなく、進化の謎を解く“始まりの血脈”の継承者だった。コアの正体とは、そして人類の未来は。時を超えた接触が歴史を塗り替え、親子の運命が交差する。中生代と未来が激突する、時空を超えた壮大な物語がいま始まる。
View Moreこれは、遥か昔の話だという。気候は温暖で、大地には多種多様な生き物が生息していた。草木は高く伸び、ビルのような巨木が林立し、弱肉強食――自然摂理に忠実な世界が、そこにはあったらしい。その地域に寒冷な時期は訪れず、いや、私の見立てでは星そのものが熱帯だったのではないかとさえ思う。
そしてその世界には、今では到底考えられない生命体が存在していたという。それが真実かどうかは疑わしい。だが、情報を無限に記憶し続ける生命体がいた――そんな話が、まことしやかに語り継がれている。 私は、それを信じたい。たとえ科学で証明できなくとも、今とは異なる技術体系、いや、自然摂理そのものによって発展した世界があったのだとしても、私は信じたい。 それこそが、我々を救うーー咆哮。一撃で獲物を仕留められなかった怒り。獲物が沢山いるのに、一匹も食せない怒り。 |顎虫蛇《アギトスネーク》は、表皮に浮かび上がった血管がみるみる赤くなり、本格的な戦闘態勢に入った。 そして、その長くて大きい体躯をとぐろ状に巻き、まるでエネルギーを蓄えるかのように渦巻いた。次に全身の筋肉によって制御された体躯を、緊張した筋肉の強張りがピークに達したとき、解放―― 体躯は捻転し、先端の顎がまるで掘削機のように、いとも簡単に地面を削りながら掘り進んだ。「なんだ!?こいつの動きは!!」 予想外の動きに戸惑う一同。だが、ゲンによる指揮により、村人達は一瞬たりとも気を緩めてはいない。「お前ら、地中に潜ったやつに注意しろ!飛べるやつはすぐに退避するんだ!!」 そして、ゲンの指揮により飛べる者は遠くの木に逃げ、窺うようにしてゲン達を見つめた。「親父、俺はやれるぜ!」 フライバエの形態変化を、ソウは完全にものにしていた。そして、ソウはまた新たな試みをしようと企んでいたのだ。「ソウ、無理はすんなよ!」 ゲンの右腕は装甲のような見た目へと変化しており、その刀身は橙色を帯び、まるで琥珀のように年月を蓄積した異様さを漂わせている。「ゲンさんはガードして、俺がヤツに一発お見舞いする!その隙にみんな、胴体に切り付けるんだ!」(一同はうなづいた。) |顎虫蛇《アギトスネーク》は、金属音のような音と共に地表へと「ドガン」と音を立てて現れた。村人を完全に襲おうとしていた。 しかしゲンは音を頼りに、フライバエの形態変化を一瞬だけ発動して羽を出現させ加速。空気抵抗を減らすため即座に解除し、右腕の大剣で受け流すようにガードした。(ギャリリリリリィッッ) 鈍い金属音と共に回転速度が落ちていく。 回転が止まった、その瞬間――ラルクは顎虫蛇《アギトスネーク》のこめかみに照準を合わせた。黒い鋏に、ロケットのように貝が出現する。「ぶっ飛ばすぜ!」 ラルクが呟いた刹那、空気が波打つ。 体勢を変えようとした顎虫蛇《アギトスネーク》へ、鋏を閉じ、槍のように突き刺した。「キシャーッッ」 顎虫蛇《アギトスネーク》は頭をのたうち回す。 好機だった。サブは銛のような腕を尻尾に突き刺す。「やったッス、てっええうお゙お゙」 顎虫蛇《アギトスネーク》は暴れ回り、サブもつられて
――ゲンは高らかに笑っていた。「大丈夫なんじゃろうな、ゲンよ……。」 ヤンガは腕を組み、深い皺を刻んだ顔でそう言った。 これまでに失ったものが多すぎたヤンガは、村長であるその責任を自分が背負っていると感じていた。「爺さん、大丈夫だ。今回の狩は、なにも怪物を狩ろうってわけじゃあねえ。でかい魚さ。」「お主のう……。まあ、お主が出来ると言うなら信じておるが、一人でも欠けたら――。」 ヤンガはゲンを睨みつける。「――わしは、お前を許さんぞ。」「わかってる。」 ゲンは真っ直ぐに目を返した。「爺さん、それは俺の命を賭けて……いや、必ず全員守る。」 その言葉に、ヤンガは小さく鼻を鳴らしただけで、それ以上は何も言わなかった。 ◇ 集まった村人たちは、北東の水源地近くで野営をしていた――。 前回のバガール討伐に出た狩猟班とは違い、今回は経験値にばらつきのある構成だった。 だが、人数が少ない分、動きは軽い。 ゲンは先頭に立ち、地形を見極めながら進軍する。「大型の痕跡あり。右に回れ。」「足元、落ち葉の下は湿地だ。踏み込むな。」 その的確な指示に、村人たちは無駄な混乱もなく従っていた。「しっかし、ゲンの旦那は指揮が上手いっすね。」 サブが感心したように言う。「途中で装岩虫の群れが出た時は、もう終わったかと思ったっす。でも一瞬で陣形を組み直して……最後は旦那が形態変化で一刀両断。あんな硬いの、ゲンさんしか切れませんっす。」「褒めても何も出ねえぞ。」 ゲンは肩をすくめた。 その後、一行は水源地へと辿り着く。 幅広の川。流れは緩やかだが、ところどころ水面が不自然に揺れている。「……いるな。」 ゲンが低く言った。「シクティスだ。群れで来る。」 作戦の確認が行われる。 両岸に村人たちが伏せ、ツルで織り込んだ網や、形態変化で作った銛状の武器を構える。 そして――。「ソウ!!」「……わかってるよ。」 ソウは一歩前に出た。身体を変化させるよう、頭の中で強く思考する。(宿れ、フライバエ……。) 次の瞬間、体が軽くなり、背中から羽音が広がる。 フライバエへの形態変化。 ソウは低空を飛び、川の中央へ向かう。 あえて高度を落とし、片脚を水面へと浸した。(来い……。) 水中に影が走る。 次の瞬間、水面が爆
ゲンとソウは、広間へ向かう途中で走ったせいか、肩で息をしていた。 「親父ぃ、俺は負けねえ。俺が一番に広場に着くからな。」 「馬鹿野郎。この俺の俊足に敵うはずがねえだろ。」 二人は、先ほどまで揉めていたことなどすっかり忘れ、なぜか徒競走でどちらが先に着くかを競い合っている。 (なーにしてんだ、このバカ親子は) 「あんたら、広場に行くんだろ。そっちは外に出る方向じゃねえか。待ってる人がいるんだ、頼むから茶番はやめてくれよ。」 ラルクは呆れた顔で、違うと示すように進行方向を指差した。 「「あ? 誰が茶番だって?」」 (あ、ダメだ。こいつら) 「ほーれ、落ち着かんか、お主ら。広間まで行く必要はないぞ。ここに連れてきた。狩猟班志望の者たちじゃ。」 ((よろしくお願いします!)) 数名の村人が三人に向かって挨拶をする。その中に、ソウと同じくらいの年齢の子が一人いた。 茶色のストレートヘアを黒いゴムのようなもので後ろに束ね、ポニーテールにしている。紋様の入ったワンピース姿の少女だ。 少女は一歩踏み出して―― 「村の外れに住んでる親子がいるって噂で聞いたけど……私と背、同じくらいか、ちょっと小さいくらいじゃない?」 炉端の石を見るような目で、少女はソウを値踏みするように見て、馬鹿にした口調で言った。 「あ? 誰だよ、お前。てか、俺の方が背ぇ高ぇし――!」 言い返そうとした瞬間、ソウは無意識に爪先立ちになっていた。 「え、ダッサ。爪先立ちって、子供なんだね〜。」 少女は容赦なく追い打ちをかける。 「こ、こ、こいつ……クソムカつくんだが!!」 ソウは怒りでワナワナと震える。しかし、相手がか弱そうな少女だということもあり、理性でどうにか踏みとどまっていた。 「まあまあ、その辺にしとけって。オレッチはサブだ。で、お前に茶々入れたこの子はレイだ。よろしくな。」 レイは「フンっ。」と鼻を鳴らし、ぷいとその場から外れた。ソウはまだ怒りが収まらず、小刻みに震えている。 サブはやれやれといった様子で、ボロボロの衣服を揺らした。尖ったモヒカン頭が特徴的で、日差しがそれを照らしている。 「おう、サブ。久しぶりだな。相変わらず尖ってんな、その頭。調子はどうだ?」 「あ、ゲンの旦那。久しぶりっすね。もちろ
ーー魂鎮めの火台の炎は、朝日と共に消えていた。燃え終わった炭から、微かに煙が立ち上っている。 ソウとゲンは、空いている家に寝泊まりしていた。二人は、昨日の荘厳な景色に心を奪われ、村人たちと語らい疲れ果て、戻ってきた矢先に泥のように眠ってしまったのだ。 ゲンは椅子に座ったまま突っ伏して眠っており、なぜか右手には酒瓶のようなものを握っている。ソウは、ゲンの椅子の近くの床で仰向けに寝ており、トレードマークのターバンは首に引っ掛けたまま、よだれを垂らしていた。「ッッグガっ。」(ッチ、頭がいてぇ。どうやら飲み過ぎたみたいだな。昨晩は嫌なことを忘れるために、皆で飲んだからな。) ゲンは、昨晩飲み明かした記憶を思い出していた。そして、凝り固まった身体をほぐそうと伸びをした、その瞬間―― ーガタッ。(ゴンッッ!)「いっでっっええええ!」 ゲンが伸びをした拍子に動いた椅子が、ソウの鼻先にクリーンヒットしたのだった。ソウは鼻を押さえ、床の上で悶絶している。「あ? なんだ、お前、そんなとこにいたのか。ちゃんとベッドで寝ろ。まったく、誰が躾をしてるんだか。」 ゲンは、やれやれといった様子で呆れている。「くそ、毎回毎回痛えよ! 躾って……あんただよ! あと、親父に言われたかねえし! 自分だって、そんな突っ伏した体勢で寝てるくせによォ!」 子が子なら親も親である。二人は顔を突き合わせ、睨めっこを始めた。 ーーすると、こんこん、とドアをノックする音が響いた。「あー? 誰だ?」「ゲンさん、ラルクです。助けてください。今、食糧庫でちょっと……。」(ガチャッ。)「何だよ、ラルク。」 機嫌が悪そうに、ゲンは白銀の髪をぽりぽりと掻きながらラルクに問う。「それが、食糧庫がもう尽きかけているんです。このままでは、村の皆が餓死してしまいます。あの作戦のことも理解していますが、こちらもどうにかしてもらわないと……。」