로그인銀河聖帝国ノヴァは、皇帝崩御により内乱の時代へ突入した。幼帝を擁する摂政ノクターン公爵。正統皇位を掲げ反旗を翻すアーヴィング大公国。辺境の若き貴族ユリウス・アストレアは、小領ヴァルカンを守るため、艦隊戦、補給、外交の渦中へ投げ込まれていく。一方、女海賊ツーシームは、荒鷲の金印を持つ謎の少女を拾ったことで、帝国千年の正統性を揺るがす秘密へ近づいていく。星間ギルドの陰謀、謎の超戦艦、外宇宙より忍び寄る真実。これは、少年貴族と女海賊が星々の覇権を動かす、銀河戦乱の物語である。 〇カルダシェフ・スケール:タイプⅡ相当
더 보기アストレア帝ユリウス一世が旧帝都ネオ・ベルゼブブを制圧してから、初めての新年を迎えた。 戦乱の終結を祝う式典が各地で催される一方、新帝国政府では大規模な制度改革と人事刷新が発表された。 中でも大きな改革は、各総管区の統治制度である。 旧帝国では、総管区の長は事実上、有力貴族による世襲職となっていた。 その結果。 何百年もの歳月の中で地方統治機構は私物化され、各総管区は半独立国家のような様相を呈していた。 ユリウスは、この制度へ大きく手を入れた。 総管区代表は世襲ではなく任期制。 一期四年、最大二期、八年まで。 さらに地方官僚についても、在地領主の推薦だけで採用する旧来の制度を改め、中央政府による試験制度を導入した。 家柄ではなく、能力によって官僚を選ぶ。 そして。 軍制についても、旧帝国とは決定的に異なる制度が採用された。 各総管区が独自に宇宙艦隊を保有することを禁止。 大型戦闘艦艇は、原則として中央政府のみが保有する。 地方貴族が持つ私兵についても、治安維持を鑑みつつも、領地規模に応じて厳しい上限が定められた。 その結果。 帝国全体で動員可能な宇宙艦隊は、常設軍を中心にしたため、旧帝国時代の四分の一近くまで減少した。 だがユリウスは、それで構わないと判断した。 強大な軍隊を持ちながら、その半分以上が中央の命令を聞かない。 そんな軍事力に意味などない。◇◇◇◇◇「……ふう」 新年の人事案へ最後の承認を与えたユリウスは、椅子へ深くもたれた。「ようやく、ひと段落だね」 冷めかけた珈琲を口へ運ぶ。 向かいにいた副宰相クヌート=ザイフリートは、書類を読みながら静かに答えた。「陛下」「ん?」「この制度とて、永遠に機能するとは限りませぬ」「まあね」「旧帝国も、建国当初から腐敗していたわけではございません」 ザイフリートは書類を閉じた。「任期制も試験制度も、年月が経てば抜け道が作られるでしょう。やがて有力者同士が婚姻を結び、派閥を作り、再び事実上の世襲へ戻る可能性もございます」「うん、そうかもね……」 ユリウスはあっさり頷いた。「四百年も経てば、そうなるかもね」「……ご理解の上で?」「仕方ないよ」 ユリウスは窓の外へ目を向けた。「四百年も後の人間が、僕たちが何を考えてこの制度を作ったかなんて、本気
大戦艦ハンニバル艦橋。 巨大な指令室は、中央の通路を挟み、階段状のひな壇となっていた。 最上部。 司令席の前にユリウスが立つ。 そして最下部からは、トラヴァース国家元帥率いる旧帝国兵が銃撃戦の中、一段、また一段と這い上がっていた。「押し返せ!」「陛下のところまで行かせるな!」 銃声。 爆発。 高周波ブレードが装甲服を切り裂く甲高い音。 艦橋は、もはや指揮所ではない。 血と特殊火薬の臭いが立ち込める白兵戦場となっていた。 旧帝国軍は強かった。 有能な指揮官であるトラヴァース自身が、専門の突入部隊を指揮している。 ハンニバル側は人数こそ多いものの、多くは通信士官や航法士、機関要員である。 戦闘の専門家ばかりではない。「前へ!」 旧帝国兵が、さらに一段押し上げる。 その時だった。「右舷に衝撃!」「また敵か!?」 誰かが叫ぶ。 だが、接舷してきた船は旧帝国艦ではなかった。 黒い船体。 幾度もの超文明改造を重ね、原型すら判然としない海賊船。 モリガンである。「接舷完了!」「穴開けろ!」「野郎ども、行くぞ!」 ハンニバルの側壁が強引に切り開かれた。 そこから飛び込んできたのは、正規軍とは程遠い格好をした一団だった。 だが。 近接戦闘となれば、その辺の正規兵より遥かに場数を踏んでいる宇宙海賊たちである。「船長の坊ちゃんを守れ!」 先頭でビッグベアが吠えた。「侵入者を皆殺しにしてしまえ! 褒美は弾むぞ!」「おおおっ!」 海賊たちが、旧帝国軍の背後へ襲いかかった。「後方にも敵!」「奴ら宇宙海賊だ!」「なぜここに!?」 戦況が一変した。 長時間戦闘を続け、ビームライフルの弾倉エーテルすら不足していた旧帝国側に対し、モリガンから乗り込んできた海賊たちは十分なエネルギーを残している。 ビーム銃。 簡易電磁防壁。 高周波武器。 そのすべてを、海賊たちは惜しみなく使った。 旧帝国兵は前後から挟まれ、次々に倒れていく。 だが。 戦いそのものは新帝国側へ傾きながらも。 王手をかけていたのは、なお旧帝国側だった。◇◇◇◇◇「見つけたぞ!」 トラヴァースが最上段へ駆け上がった。 その目の先には、ユリウスが高周波サーベルを構えている。「偽帝め、見参!」 トラヴァースはエネルギーの切れた
「攻撃を敵中央に叩きつけろ!」「了解!」 旧帝国軍総旗艦ヴィシュヌを先頭に、トラヴァース国家元帥率いる艦艇群が一斉に加速した。 狙うは、右翼救出のため兵力を割き、薄くなった新帝国軍中央部。 パウルス元帥率いる第二艦隊が、その正面に立ちはだかる。「敵、中央へ集中!」「戦列を詰めろ! 通すな!」 パウルスも必死に防戦した。 だが、救出戦で艦艇を抜かれた後である。 旧帝国軍の猛烈な突撃を支えきれず、ついに二か所で戦列を突破された。「中央戦線、突破されました!」「敵総旗艦、こちらへ向かっています!」 ヴィシュヌとその直衛艦隊は、開いた穴へ殺到した。 その先にいるのは、アストレア聖帝国皇帝ユリウス一世。 そして総旗艦ハンニバル。 ◇◇◇◇◇「退くな!」 巡洋艦アストレアの艦橋で、グレゴールが叫ぶ。「ここを抜かれれば、陛下がおるのじゃぞ!」 ユリウス直卒部隊を守るのは、わずか百隻ほど。 グレゴールはその小艦隊を率い、真正面からヴィシュヌの突撃を受け止めた。「全艦、総旗艦の前へ出よ!」「了解!」 巡洋艦アストレア自身も、巨大戦艦ヴィシュヌの進路へ割り込む。「撃て!」 両艦からビームが交錯する。 だが。 艦格が違いすぎた。「敵艦首砲、発射!」「防壁最大!」 ヴィシュヌの大口径ビーム砲が直撃。 アストレアを覆っていた電磁防壁が、一瞬で飽和した。「防壁消失!」「第二射、来ます!」 閃光。 艦首装甲が吹き飛び、艦橋全体が激しく揺れた。「機関区画被弾!」「火災発生!」「右舷砲塔、全滅!」 アストレアは炎を噴きながら戦列から弾き出された。 だが。 ヴィシュヌは、とどめを刺さない。 目標はグレゴールではないのだ。「前進!」 トラヴァースが叫ぶ。「偽帝の旗艦だけを狙え!」 ヴィシュヌが、ついにハンニバルを正面に捉えた。「主砲、発射!」 大口径ビームがハンニバルへ叩き込まれる。 しかし。「敵防壁、健在!」「もう一度だ!」「エーテル圧、低下しています!」 長時間にわたる戦闘。 恒星風を利用した強行軍。 そして先ほどまでの包囲戦。 ヴィシュヌを含めた旧帝国艦艇には、すでに十分な量子エーテルが残っていなかった。 砲撃はハンニバルの強力な電磁防壁を揺らすだけで、貫通には至ら
「いかん!」 総旗艦ハンニバルの艦橋で、ユリウスは戦術モニターを睨んだ。 右翼を担当するラプーチク中将の第四艦隊は、完全に旧帝国軍の包囲下にある。「中央戦域を担当するパウルス元帥へ伝達!」「はっ!」「第二艦隊から救出部隊を出し、第四艦隊の包囲を破らせろ。それと後方予備から四百隻を増援として回す!」「了解!」 ユリウスは、いかなる戦いでも全兵力を一度に投入することを嫌った。 戦場では何が起きるか分からない。 優れた参謀がどれほど計算しようとも、敵の奇策、機関故障、偶発的な天体現象。 予測不能な事態は必ず起こる。 その時、手元に何も残っていなければ、指揮官には打つ手がなくなる。 だからこそ、今回もかなりの艦艇を予備として後方に残していた。 そして今。 その備えが必要となった。「第四艦隊、損傷艦百七十を突破!」「さらに増加中!」「宇宙母艦三隻喪失!」「……くそっ」 ユリウスが拳を握る。「また罠にはまったか……」 戦場へ出てから、トラヴァースには何度も裏をかかれている。 それでも今までは、決定的な損失を避けてきた。 だが今回ばかりは、第四艦隊そのものが消えかねない。「陛下」 傍らにいたグレゴールが声をかけた。「何?」「わしも出ましょうか?」 ユリウスが振り返る。「……まだいい」 少し考える。「でも、予備艦艇から百隻を率いて待機していてくれ。必要ならすぐ出てもらう」「承知いたしました」 グレゴールが頭を下げ、艦橋後方の扉へ向かう。 その背中が扉の前まで来た時だった。「爺!」 グレゴールが振り返った。「何でしょうか?」 ユリウスは一瞬、子供のような顔で言葉を詰まらせた。「……死なないでね」 老臣は微笑んだ。「もちろんですとも」 扉が閉じる。 ユリウスにとって、グレゴールはただの宰相でも幕僚総長でもない。 父を失い。 家を失い。 惑星ヴァルカンから追われた時。 最後まで自分の傍に残った、ほとんど唯一の家臣だった。 その男まで危険にさらさねばならぬ。 戦況は、そこまで悪化していたのである。◇◇◇◇◇「敵包囲網まで距離、三十万!」「第二艦隊、砲撃開始!」 パウルス元帥率いる救出部隊が、旧帝国軍へ激突した。 片や。 失えば新帝国軍全体の戦線が崩れかねない第四艦隊。 片や。
二時間後――。 夜空を焦がす砲火の光が、アストレア子爵家館の外壁を断続的に照らしていた。 空から放たれる収束光線が次々と命中し、シールド発生器が火花を散らす。 ビッグベア率いる地上部隊の強襲に、クロイツ準男爵が命じた防衛線は、もはや形を保っていなかった。「西ゲート突破! 敵部隊、南側通路に侵入!」「なに!? まだ内壁の防御区画が――」「――沈黙しました!」 報告の声が飛び交い、館内の照明が赤く明滅する。 焦げた金属の匂い、崩落する天井の音。 戦況の趨勢は明らかだった。 中庭では、ツーシーム率いる小部隊が到着していた。 飛竜の紋章を肩章に掲げた海賊兵たちが、煙の中から姿
――それから数時間後。 惑星ヴァルカンの灰色の雲を突き破り、黒き海賊船モリガンが稲妻とともに姿を現した。 空気との摩擦で船体が赤く焼け、尾を引くプラズマ光が空を裂く。 制動装置が壊れた様、まるで獲物に飛びかかる飛竜のように――急降下。「減速制御、限界値ぎりぎり!」「いいから続けな、ビッグベア!」 操舵席で副長の低い声が響く中、ツーシームは冷笑を浮かべた。 モリガンは宇宙港の上空数百メートルでようやく制動。 防御重力場を展開し、港全体を覆うように上空を支配する。 その威圧的な重低音が空気を震わせ、空港施設の窓ガラスを爆散させた。「宇宙港管制塔、応答なし!」「そりゃあそうさ
「おいおい、領主坊ちゃんを脅して、姐さんも落ちぶれたもんだな」 誰かが酔いに任せて口走った瞬間――。 隣の席から立ち上がった巨影が、音もなくそいつの襟首を掴み上げた。 身長は2m50cmを超える筋肉だるま。その赤毛の巨漢が低く唸る。「……姐さんの言葉に文句あるか?」 顔を真っ青にした酔っ払いが首を振ると、巨漢は無造作に床へ放り捨てた。 酒場中が静まり返る。「副長のビッグベアだ……!」「やべぇ……」 誰かの震える声が広がり、空気が一変した。 ツーシームは煙草をくゆらせながら肩をすくめた。「まったく、トムは物騒だねぇ」 赤毛の巨漢――「ビッグベア」は答えず、ただ鼻を鳴らす
気密扉を押し開けた瞬間、ヘルメットのバイザー越しに強烈な光と喧騒が飛び込んできた。 廃墟の外見からは想像もできないほど、中はざわめきに満ちていた。 狭い酒場に詰め込まれているのは、粗野な宇宙服姿の男たち。 テーブルには合成酒のボトルが乱雑に置かれ、グラスが打ち鳴らされるたびに乾いた笑い声が響く。 壁面の古びたネオンはチカチカと点滅し、濃い煙と油の匂いが充満していた。 老家臣グレゴールは、背筋に冷たい汗を感じた。 ――見間違えるはずがない。ここは、ならず者たちの巣窟だ。 宙域管区から指名手配されて久しい無頼の連中……宇宙海賊どもが屯している。「若君、ここは……危険すぎます……