第699話

華恋は眉をひそめた。

「大丈夫？」

彼女はただ資料を準備していただけなのに、哲郎がまるで大きなショックを受けたかのような反応をしているのが不思議だった。

それに、まだ申請段階にすぎず、彼女には哲郎の叔父の支援があるとはいえ、小清水グループを手に入れられるかは誰にも分からないだ。

哲郎が、そんなに急いで敗北確定と思い込む必要はないはず。

哲郎はやっとの思いで頭を上げた。

「誰を保証人になってもらったんだ？」

華恋は驚いた。

「まさか知らないの？」

こんな大事なことを、哲郎の叔父が彼に教えていなかったとは。

どうやら、彼と叔父の関係はあまり良くないようだ。

「あ、ああ。知らないんだ......」

彼は、知るべきなのか？

華恋は肩をすくめた。

哲郎の叔父が自ら話していないのなら、彼女も余計なことは言わないでおこう。

「答えになってない。誰が保証人なんだ？」

華恋は淡々と答える。

「公開されたら分かるわ」

哲郎はじっと華恋を見つめた。

華恋は自然に腰を下ろした。

「そんな目で見ないで。あなたも知ってる人よ。でも、あなたが知らないってことは、彼が伝える気がないってこと。だから私から言えることはないわ」

彼女ははっきりと哲郎に線を引いた。

もうこれ以上、彼がしょっちゅう訪ねてくるのはやめてほしいから。

哲郎の表情が一変した。

「まさか......」彼の胸に、ある名前が浮かんでいた。

でも、それを信じたくなかった。

「他に用がないなら、帰ってくれる？」

哲郎はゆっくりと身体を回し、扉の方へと歩いた。

だが、扉の前で急に振り返り、強い意志を込めて華恋を見つめながら言った。

「華恋。君の夫が誰だろうと関係ない。俺は絶対に、祖父の遺志を果たす。誰にも邪魔はさせない」

その言葉が、華恋の胸に重く響いた。

彼が去った後もしばらく、その「誰にも邪魔はさせない」という言葉が耳から離れなかった。

......

「華恋姉さん、大丈夫ですか？」

栄子がドアを開けて入ってきた。

華恋が呆然と座っていて、顔色も悪かったため、心配して声をかけた。

華恋ははっとして我に返った。

「え、ええ！大丈夫よ」

「華恋姉さん......」

「何か用事だったの？」

それで栄子はようやく本題を思い出した。

「あ、はい、さっきハイマンさんから