Home / 文芸 / ソラと庭ごはん / 第七話 夏の定番カレーライス(その二)

Share

第七話 夏の定番カレーライス(その二)

last update Last Updated: 2025-06-26 10:31:02

 ——扉を開け、外へ出てみる……。

(うっ! 眩しい……!)

青空の天上から、太陽が燦々と眩しく照らしている。

梅雨の期間、あまり外へ出ていなかったから尚更だ。

目や肌へ日差しの刺激がより感じる。

(今日はそんなにジメジメした湿気が少ないけど、これから先はもっと湿っぽくて暑くなるだろうなぁ)

しかし、ここでへたれていたらダメと気合いを入れ直す。

もちろん念の為、水分補給用のスポーツドリンクも用意している。

この時期でも、やはり熱中症には気をつけたいことだ。

(よし、行きますかぁ!)

家の外の右端にある収納庫へ向かう。

メッシュタープやローチェア、焚き火台などを出していつものように作業を開始する。

メッシュタープを立て風に飛ばされないように、紐を引っ掛けられるフック付きレンガ調の重しもつけて固定していく。

これからの夏は、日差しが強い。

側面のうちの二面分だけメッシュの上から日光避けのシートも一緒に取り付けてある。

(今日は出入りする面の遮光シート一枚を、屋根にして立てよう)

その後、テーブルとローチェアを設置し、テーブルの近くにはトレー付きの焚き火台を置いた。

今回も切炭をメインに使用するけど、そのためには着火の素が必要だ。

下に乾かして傘が開いた松ぼっくりと細かい枝木、ナタで捌いた細めの木を山の形になる様に組む。

(土台は出来たから、先にカレーの材料を持ってきた方が良さそう)

キッチンからカレーのルーやカット済みの野菜やお肉、食器などをひとまとめておく。

暑さ対策として、食材は保冷剤の入った小さいクーラーボックスに入れて運んで行った。

(これで全部かな?)

今回は新しく、調味料ボックスをネットショッピングで購入した。

油類やスパイス、液体系の調味料も揃ってまとめて手軽に運べる。

(じゃあ、そろそろ火を付けよう)

ようやく、焚き火の火入れに取り掛かる。

毎度お馴染み一つの松ぼっくりにバーナーで焦点を当て、着火が確認出来たら火吹き棒で火力を高める。

(ある程度、火が回ったかな?)

火力も整ったところで網を敷く。

耐火手袋をはめて、先に吸水させたお米が入ったメスティンを置いた。

(さぁ、今から美味しいカレーを作るぞ!)

主役のダッチオーブンを真ん中よりに乗せて、カレー作りにスタートを切った。

プッシュ式の容器に入ったオリーブオイルを入れ、温まったら牛肉を入れる。

薄切り肉だから、鍋の底にひっつかないよう素早く炒めていく。

火の通りにくい順番に人参、玉葱、ジャガイモを入れて軽く塩胡椒かける。

スピードアップでかき混ぜていかないといけないし、家のコンロより火力が少し強いからやることが忙しい。

(とりあえず、油は具材ごと全体に行き届いたかな)

大体炒まったら具材が浸かるぐらいの水とコンソメスープの素、少し大きめの乾燥ローレルを二枚加える。

ローレルのパッケージ袋を見てふと思った。

(余談だけど、ローリエとローレルって言語の違いだけであってモノは同じなんだね)

ひと煮立ってきたら、鍋の周りについている余分なアクを取り出す。

蓋をして十分間コトコトとじっくり、煮込みタイムが始まる。

スマートフォンで十分のタイマーをセットした。

(その間、カレーに入れる調味料の準備とご飯の様子も時々見ておこう)

待っている間、今回使用する調味料についておさらいしよう。

カレーのルーはともかくとして少しピリッとするガラムマサラにウスターソース。

隠し味として、我が家ではチョコレートを入れる。

ソースとチョコレートで味にコクが生まれやすいからである。

(他にもコーヒーだったり、味噌を隠し味として入れる人もいるよねぇ)

つまり、作り手によってそれぞれ違うから似て異なる。

カレーに入れるスパイスや隠し味は、いく通りもあるくらい奥深いものだ。

——ゴボッ、ゴボッ……。

(あ、蒸発してメスティンの蓋が浮いてきた!)

網に乗せてから経って気づけば、メスティンの中の水分を抜け出そうと沸騰していた。

それが収まってきたら、もう少しでご飯が炊ける合図。

カレーの方は、順調にグツグツと煮込んでいる。

かといって煮込みすぎると、ジャガイモが溶けてしまうので要注意だ。

(人参が一番火が通りにくいけど、どうだろう?)

人参を一つ、お玉ですくい出し、硬さを確認するために爪楊枝で刺してみる。

すると、最初の突き刺しは柔らかいが、真ん中辺りでちょっと硬めだった。

タイマーを確認すると、あと三分ぐらい残っている。

(とりあえず、今のタイマーが切れたらまた確かめてみるか)

それと同時に水分も煮込みの蒸発で少なくなってきたから、水も少しだけ追加した。

——ピピピッ……ピピピッ……。

スマホのタイマーが鳴り響いた。

(もう一度、人参の中を確認……)

先程刺した人参とは違う、別の少し大きそうな人参をお玉で取り出した。

再度、同じように爪楊枝でゆっくり刺してみた。

今度はさっきの感触と違って、爪楊枝の先からスッとスムーズに中まで通せていた。

(ちゃんと真ん中も煮えている。よし、良い頃合いだ!)

そう思っていたら、メスティンの蓋がいつの間にかスッと落ちているではないか。

(あ、いつの間にご飯も……。そろそろ蒸らしタイムしないといけない! やはり一人だと忙しいなぁ……)

耐火手袋をはめ、メスティンの蓋を少し開けて確認する。

(うん、ちゃんと炊けているね)

蓋を戻し閉めた状態で火から離してテーブルのメッシュ状側へ置き、カレーが出来るまで蒸らしておく。

中に入っているローレルをダッチオーブンから取り出す。

(ローレルの葉は取り除けたし、いよいよカレーを仕上げの段階に入るとしよう)

二種類のルーを一欠片ずつ入れていく。

ちなみにルーの一つは、四等分に割れるのもの。

もう一つは別のメーカーの六等分に割れるもので、共に中辛レベルの辛さだ。

一応、私の場合、カレールーの分量は水分量との相談し合いっこ。

その都度、入れる量も変わっていく。

(今回は一つずつの割合で充分そうだな)

そして、少量のガラムマサラにウスターソースと、隠し味のチョコレートを入れる。

チョコレートは、特にこだわりは無い。

けれど、一番贅沢に入れているものはブランデー入りのチョコだ。

冬にしか売っていない期間限定ものだけど、そのチョコを入れると一味違うような気がする。

とりあえずルーとチョコが溶けて、とろみが出てきたら完成する。

(もうすぐ完成間近……。美味しくなぁれ)

お玉でじっくりかき混ぜながらとろみを確認するため、一杯分のカレーをすくって落としてみる。

——トローッ……。

(あ、ちょうどいいかも。これ以上煮えてしまうとジャガイモが溶けて無くなっちゃう。味わえないのはもったいない)

出来上がったカレーをステンレス製の鍋敷の上に乗せた。

カレーのスパイシーな香りが、私の元へ漂っている。

(スパイシーな香りが……。あぁ、空腹の私に食欲の匂いと湯気が襲ってくるよぉ)

もう待ち切れないので、いそいそとメスティンで炊いたご飯をお皿の半分に移した。

そして、カレーをお皿の残り半分に注ぎ入れる。

まるでお店のメニューのように、よく見る写真の盛り付け方を真似てみた。

(よし、出来た!)

我が家のカレーライスが完成した。

もちろんご飯のそばにはカレーを食べる時のお供の一つ、福神漬けも添えている。

(完成したから、恭弥さんにもご飯の写真を送りつけようっと!)

完成したカレーライスの写真で空腹の中の飯テロを味わってほしい。

ちょっとした悪戯心だけど、共感できたらと思った。

——私の耐えられなかった空腹感からの解放へ……。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • ソラと庭ごはん   第十一話 縁側に囁く夜風のような素麺

     (今日も真夏日かぁ……)私は、リビングにあるテレビで、夕方のワイドショーを見ていた。最初の特集が、現在の天気にまつわるもので各地の猛暑日などを取材している。(都会の猛暑は、いつ見てもバテそうだ……)という私も、結婚する前は都会に住んでいた。コンクリートから出る熱気に、体力が消耗して負けてしまう。そう思うと、この暑さでよく通勤や通学していたものだと感心してしまった。今日はオフの日……というよりも、お盆期間に入った。私の夏休みは、今年の場合だと五連休。旅行に行く分には良いのだが、何かをしたい訳でもない。ちなみに恭弥さんは、明日から家に帰ってくる予定だけど三連休しかないらしい。(早ければ今日の夜に着くと、彼は言っていたけど、どうかしら?)理想としては安全運転でありつつ……だけど、なるべく早く帰ってきて欲しい。ソファーにあった丸いクッションを抱え、彼の帰りをドキドキしながら待っている。(あ、そうだ! 今日の晩御飯……まだ何も用意してない)ボーッとテレビを見ている内に、気がつけば夕方の六時をとうに回っている。まだ、メニューを決めていなかったことに気づいた。ソファーから立ち上がり、キッチンの冷蔵庫やパントリーの棚を開ける。今、何があるのかと食材を確認する。(今日のお昼間もかなり暑かったし、何かさっぱりしたものが食べたくなるなぁ……)パントリーの棚を見ていたときに、ある食材を発見した。未開封で、中に白いものが束として入っていた透明

  • ソラと庭ごはん   第十話 ボロネーゼと夏の大三角(その三)

     食事後、焚き火の中にやや太さがある薪を二本追加する。ご飯だけではなく、星空を見るための庭キャンプ。特に夏の大三角といわれるものや季節の風物詩である、七夕といえばお馴染みの天の川が見えやすい時期だ。夕方六時半とはいえ、そろそろ夕日が落ちてしまう時間になる。(よし、そろそろ明かりをつけよう)私は、小さめのLEDランタンを先につける。先日恭弥さんから誕生日プレゼントでもらった、テーブルランタンをつけることにした。テーブルランタンは、OD缶という上側に丸みがあるガス缶を取り付けて使用する。ちなみにODの意味はOUT DOORの略のこと。ホームセンターやアウトドアショップ専門店で売られている。(ランプ取り付けたら、まずはガス栓ダイヤルの確認から……)ガス栓がマイナスになっているか、チェックしておく。そして、ダイヤルの反対側にある火力調整レバーを左に寄せていよいよ着火だ。ランタンの着火する場所の隙間でも、着火しやすい先端が伸縮出来るライターでカチカチと火をつける。ライターに火がついた瞬間、着火場所の隙間を狙う。ガス栓のダイヤルを回しながら、ランプの火をポッと灯していく。あとは、私好みの灯火の形や大きさを調整して完成!(あぁ、良い眺め……)ランタンを見つめてはウットリしている。他にこれも初登場であろう、オイルランタンも導入することに。オイルランタンは別の日にでも使うから、機会があれば説明できたらと思う。火をつけ終わると、メッシュタープの柱にランタン用太めのハンガーを引っ掛け吊るした。夜の七時を過ぎると、夕焼けの出番も終わって暗くなり始めている。これからが夜の始まり

  • ソラと庭ごはん   第十話 ボロネーゼと夏の大三角(その二)

     急いで着替え終わった私は、外の収納庫へ向かった。メッシュタープや焚き火台、黒のアイアンテーブルやチェアを出していく。あとは玄関内の収納室からキャンプギアを必要な分だけ取り出し、外へ運びこむだけ。(料理は、シンブルバーナーの方が早いから出しておこう)今回は焚き火台で調理しないことに決めた。別で用意した調理器具は折り畳み式のガスバーナーにして、お湯を沸かす方法で取り組もうと思う。メッシュタープを立て終えた後は、いつもの配置でテーブルなど順番に置いていった。(もう暗くなる前に、焚き火をやり始めなきゃ!)日が落ちる前にやっておかないと、暗闇の中でやるのは大変だからだ。焚き火台の中に前回の炭や乾燥した松ぼっくりと細い木の薪を山型にして組んでいった。先日作ったフェザースティックにライターで火をつけ、下の方に火をスティックごと放り込んだ。火吹き棒で吹き込みつつ火が燃え回って来たところで、太めの薪を二本追加で積んで燃やしていく。(色々と作業してたらお腹も空いてきちゃったなぁ……)その間、私はまず腹ごしらえとして晩御飯を作ることにした。(乾麺とソースを出して……)インスタントで済ませちゃうけれど作ってみようと思ったのが、パスタだ。数種類ある中から選んだソースは、王道のボロネーゼ。私は、パスタの中ではミートソースが大好きである。ガスバーナーの先に五徳を取り付け、深めの片手鍋クッカーで水と塩を入れて沸かす。沸騰さえできたら入れても良いように、一人分の麺を分けてあるし準備万端だ。(お湯が沸くまで、しばらく休憩しよう)今回選

  • ソラと庭ごはん   第十話 ボロネーゼと夏の大三角(その一)

     ——七月下旬へとうに入っていた頃。ここ山奥でも、お昼間になると蒸されるような夏の暑さが本格的に入ろうとしている。現在時刻はお昼を過ぎ、午後二時くらい。私は今日も原稿を眺めながら、校正の仕事をこなしている最中だ。今回の原稿は、来月にウェブ版で掲載する夏の風物詩をテーマにした作品を発表を設ける。その中の一つに、七夕が入っていた。七夕といえばお馴染みであろう、天の川をはじめ彦星と織姫の星が見える。(そういや、今日の天気ってどうだったかな?)スマートフォンに入っている天気予報のアプリで確かめることにした。テレビで流れる週間予報のように、色んな場所を一覧で並べている。一番上の欄は我が家の住んでいる地域に登録している。(今日の予報では曇り一つも無さそうだけど、念のために外を見て確認しよう)ひとまず、作業部屋の窓から確かめることにした。レースカーテンをチラッと捲り、窓の外を覗いてみる。雲一つもなく、清々しく爽やかな水色の青空。(これなら、今日の夜でも星空が充分観れそうだ!)しかし、一つ問題があった。机の上をチラッと見る。(どうしよう、原稿がまだもう少し残っている……)今日の朝からリモートで打ち合わせなどと他の仕事が色々ありすぎて、山積みに抱えている。そんな状態で、ご飯を作れる時間が余裕にあるのか悩む。夏を迎えているから、お日様の滞在する時間が長くなった。夜の焚き火もするなら、暗くならない時間帯に準備もしないといけない。山奥の夜は都会よりもかなり涼しい。寒くなる時もあるから、無いよりかはいい。

  • ソラと庭ごはん   第九話 フィールドパーク・デート(その二)

     緩やかな坂道を登りきった後、ショッピング施設の入口の反対側にある裏手へ行く。そのまま真っ直ぐ行くと、カフェレストランの入口へ着いた。営業時間帯はまだカフェタイム……と言っても、あと一時間ぐらいで終わってしまう。メニューを確認してると、私たちを見かけた店員さんが扉を開け声をかけてくれた。「本日のカフェタイムで提供できるデザートメニューは、残りのドライフルーツのパウンドケーキのみになりますが……いかがでしょうか?」「あぁ、まぁ……とりあえず入ろうか」私はコクっと深く頷いた。恭弥さんは入りますとゴーサインを出し、カフェレストランコーナーへ入ることにした。「お席は空いてる所へどうぞ」(どこにしようかな……あ、ここにしよう)店員さんがそういうと良さそうな席を選ぶように、私は周りを見回す。景色も眺められそうな窓側の席へ指定した。「おっ、外の景色も見えるんだな」「うん、だからここにした」「いいじゃない?」そして店員さんが水を持ってきて早速、注文を取ろうとする。「ご注文はお決まりですか?」「デザートはパウンドケーキのみでしたっけ?」恭弥さんは、その店員さんに質問をかける。「そうですね、他の二つは生憎既に完売してしまいまして……」そう言って、店員さんは申し訳ございませんと頭を下げた。ちなみに完売した他の二つのデザートは、ガトーショコラとベイクドチーズケーキだった。

  • ソラと庭ごはん   第九話 フィールドパーク・デート(その一)

     今日は恭弥さんとドライブも兼ねてのお出かけ。だけど……。「え~……今この辺だけどさぁ~……コレ、どこへ行こうとしてるんだ?」彼と、行きたい目的地の専用駐車場へ向かおうとしているはずだった。しかし、今はそこと別の駐車場付近に居る。コレはつまり、完全に迷ってしまった。車に搭載しているカーナビとスマホのマップアプリで検索したものを照らし合わせている最中だ。(曲がる場所が複雑すぎる……ナビでも難しいなんて)どうやら高速道路のジャンクションらしい所を通ると、すぐ目の前が目的地の駐車場。だが、そこへ辿り着くまで少々ややこしい……。というのも、曲がる場所を間違えてしまうと高速道路に向かう方向へ入ってしまうそうだ。「とりあえず、私も地図見ながら案内のサポートするからゆっくり前へ進んでみよう?」「ん……わかった」そんな訳で、少々不機嫌で難しそうな顔の恭弥さんは運転を再開。私も慎重にフォローをしないといけない。(とりあえず、道の曲がる場所を正しく誘導出来るのを頑張ろう)「恭弥さん、ここを左に……」「ん? ここ?」「そう、ここ」私は曲がるタイミングを伝えながらサポートをしていく。今日は前から行ってみたかった、隣の市にある大きな公園内のフィールドパーク。昨年九月頃にオープンしたものの、予定がなかなか合わなくて行けずじまいだった。(あぁ、やっと恭弥さんと予定の合う日が出来

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status