Se connecter——六月後半、ある日の午前中のこと。
(うーん……。今日も一日中、雨かぁ……)
私は、仕事部屋で窓の外を眺めながら鬱々としている。
なぜなら、先週から梅雨入りしたとニュースで流れていたからだ。
梅雨時期になると庭でキャンプをすることが出来なくて、悶々とした心が私を襲う。
(キャンプが出来ないって辛い……。早く梅雨明けしないかなぁ……)
全くできない訳ではないが、雨の降っている山奥の外では冷え込む。
オマケに恭弥さんから「風邪引くからダメ」とキャンプを行うことを止められている。
私はしょんぼりした顔で、仕方なく雪絵さんから依頼された特集の企画を立てる仕事に戻る。
(うーん……)
仕事しながら、ふと考えていたことがある。
梅雨時に、キャンプみたいことをどうやって体験出来そうなのかということだ。
(仕事の企画を早く考えて立てないとだけど……キャンプのことを浮かんでしまったからとそっちのけになっちゃう)
どうしても頭の中では、家で何かそれらしいことを出来るものがないか模索してしまう。
——数十分後……。
パソコンの画面で仕事に向き合いつつ、アイデアを練っているうちにあることを思い出す。
(あっ! そういえば、昨日偶然見つけた番組でこんなことしてたわ!)
それは、テレビでチャンネルを変えていた時に流れていたバラエティ番組のことだった。
梅雨時に部屋でキャンプ風の過ごし方という特集を目にした際、興味が湧いていた。
(おぉ、我が家でもやってみたい……。いや、今日こそがチャンスじゃないか。これはやっておかないと!)
同じようなことが出来ると想像するだけで、私のやる気が俄然と出てくる。
私はその目標に向けて、お昼ご飯までに猛スピードで仕事を取り組んで終わらせるよう決めた。
◇ ◆ ◇
——数時間経ち、お昼の時間になった。
仕事に集中してエネルギーを使った分、いつにも増してお腹の音が鳴り止まない。
私は早速、頭の中で想像しながら立てた計画に取り掛かろうとしている。
そう、テレビで放送していたものと同じ、梅雨時ならばのキャンプの楽しみ方だ。
(題して、部屋キャンプ作戦!)
我が家には、一部屋だけ全く使ってないところがある。
その部屋を利用して外で行っているキャンプと同じように雰囲気を味わうという作戦だ。
テーブルや椅子は玄関の収納室にもある。
それを活用できる時がようやく来た。
(今回は、どんなレイアウトにしようかな?)
ラグと木製の折り畳みラック、テーブルランプとかもあれば良い感じになりそう。
まずはラグを床に敷いて、次はラックとかテーブルなど家具系の配置だな。
真ん中にはテーブル、その傍にローチェア置いて……。
(ラックを二つ用意したけど、どの辺にしようかな?)
一つは自分の手に届く範囲で、取りやすい場所に設置する。
残りは、少し離れた場所が良さそうかなと試しながら模索している。
他にローチェアの斜め後ろ辺りへ設置したり、テーブルより少し離れた場所に置いたりしている。
(小物は本やランプ、シングルバーナーに……あっ、コーヒーも必要だからそれも用意しないと)
一度部屋から離れ、台所へ向かうことにした。
そこへ入ったらお昼ご飯は何にしようと考えつつ、まずは冷蔵庫の中を見る。
(何があるかなぁ……? おっ、まずは食パンがある。あとは……あっ、いいもの見つけた!)
冷蔵室の真ん中にある棚から、白い陶器のボウルが目に入る。
中身は、昨日のドライカレーが残っていた。
(食パンとの組み合わせたら……これは、簡単なホットサンドが出来る!)
しかし、ここで一つ問題がある。
キッチンに取り付けてあるコンロはIHヒーターのもの。
我が家の持っているホットサンドメーカーは直火やガスコンロしか料理が出来ない仕様だ。
(うむ、ガスコンロが必要だ。上の棚から出そう)
調理器具の棚から、シングルバーナーを取り出す。
あらかじめキッチンでサンドイッチにしてホットサンドメーカーへ入れて置くのがいいだろう。
キャンプ部屋のテーブルに五徳のついたシングルバーナーを置いたら焼くだけで済むからだ。
他に冷蔵室から余ってるポテトサラダも付け合わせとして持っていくことも決まった。
デザートは、この前作ってみたプリンがある。
それにザラメを乗せてバーナーで軽く炙れば、カラメルにも出来る。
(よし、メニューはこれで決まり!)
私は心の中で思いながら合点ポーズをとる。
決めたからには早速、実行に移してみることにした。
(まずは、ホットサンドの準備を……)
食パン8枚入りを2枚分取り出して、1枚目をオリーブオイルを敷いたサンドメーカーの片面の方に乗せる。
中身を入れるものは、順番にスライスチーズ、昨日の余りのドライカレー、サラダ用の千切りキャベツ
それらをサンドメーカーに乗せた食パンの上へ重ねていく。
最後パンを上に乗せたら、鉄板で押し合わせこむように蓋を閉める。
パンの耳がはみ出てないの確認し、止め金具で取手の溝へ留めた。
あとは部屋にある五徳付きのシングルバーナーで焼くのみだ。
(次はポテトサラダだけど、ちょっと量があるなぁ……。別のお皿に入れよう)
もう一つ同じく残り物であるポテトサラダは器に盛り付けるのみ。
実を言うと、私は二日目のポテトサラダが好きだ。
一晩ぐらい寝かすことで、味も馴染んできてる感じが堪らない。
プリンはとりあえずザラメだけ乗せて後で持っていくから、一旦冷蔵庫に入れておくことにした。
(これで準備は整った。コンテナに入れて部屋へ持っていこう)
器具などの荷物をまとめ、キッチンをあとにした。
——体験したことのない、部屋での非日常を楽しみにするのである。
クリスマスの日まで、もう間もない日のお昼頃……。——ピンポーン!(ん? インターホンのチャイムが鳴っているではないか?)「はい」(珍しい……。今日、来客する予定は確かいないはずだけど……?)私は画面越しから出てみることにした、ひとまず、来客が誰なのかを確かめるためだ。「大地運送です」「あ、はい。少々お待ちください」(あれ? 今日って、何か届く予定とかあったかな?)疑問はまだ残るけど、とりあえず宅配便だった。わかったからには、外でずっと待たせるわけにもいかない。急いで部屋から出て、玄関の扉を開ける。「こんにちは! 宅配の商品をお届けに参りました!」「は、はい! お疲れ様です」「ちょっと大きいものですが、すぐに荷物お持ちしますので待ってくださいね!」その方はいつも来てくれるエリア担当の男性。中年のおじさんぐらいの年齢層で顔見知りだ。我が家では、大きな荷物が届くことは少ない。だが、今回は少し大きめダンボールの荷物を二つ抱えているではないか。(おっと、これはちょっと大物だなぁ……その場凌ぎに玄関に置いてもらおう)一つだと、女性でもそこそこ抱えられる範囲かもしれない。しかし、二つもあると少し大掛かりという印象だ。「荷物……結構大きそうですね。どうぞ、こちらへ」「あぁ、すいません! 中の方へ失礼します」そう思い、玄関の扉を開けたままにして、配達員を荷物の置き場所へ誘導した。&n
——十二月中頃。いつも仕事場として使っている部屋で、ネットサーフィンをしながら篭っている。それもそのはず、十二月に入ると私の住む山奥では、気温が極端に下がり雪も降り始めている。まだ完全に積もっているというわけではない。しかし、日が経つにつれて積もっていく日も増えていく。(雪かきをしないといけなくなるけど、この寒さでは堪えちゃうなぁ)庭でキャンプをするにも、耐寒機能のないタープやテントでは凍ってしまう。ストーブなどの暖房があっても尚厳しい地帯だ。つまり、冬用のものじゃないと食事をして過ごすことは疎か、ずっと外に居ることすら大変なことである。山奥の朝は、最低気温が二桁に近いマイナスの温度から始まる。日が天辺にあるお昼間でもマイナスの一桁台、暖かくても零度から超えたら良い方だ。こんな状態の外じゃあ、流石に凍え死んじゃう。あと大声では言えないけど、私は極度の寒さは苦手だ。(ずっと外にいたら風邪を引いてしまいそう……)そんな理由もあって雪の降り積もっている間が、私の庭キャンプのお休み期間。しばらくは、家の暖房や炬燵で冬籠りをすることに……。外に出づらいしちょっと寂しいけど、クリスマスから年末年始に近づいたら、お休みに備えて仕事も忙しくなる。今年のクリスマスは、恭弥さんが当日に帰れそうにない。その代わり、先月末から今月初めに一度帰ってきた。早いけれど、ちょっとオシャレなレストランのフルコースやクリスマスケーキなどを食べて過ごしていた。それに年末年始は、彼と一緒にお正月を過ごすし初詣や旅行が楽しみだ。 ——さて、現在の話に戻そう。急ぎの仕事がないというのも相まって、前述の通り気晴らしに通販サイトを開いている。注文しているサイトは、いつもの大手通販サイトだ。何
——冬を迎える前のひとり鍋に、乾杯!(まずは、主役の豆腐をすくってと……)豆腐一つをお玉で鍋からすくい、箸で水菜とネギを取り出す。温まっているとはいえど、口の中へ入れるときの豆腐の中は熱い。それに私は猫舌だから、熱い状態ですぐに食べるのが少し苦手だ。ひと口で食べられるサイズを箸で割り、フーフーと少し冷ましながら口の中へ運ぶ。「ハフッ、ハフッ! 熱っ!」(やっぱり、まだ中はちょっと熱いのが……。けど、美味しい)絹豆腐は湯豆腐にすると、より柔らかな感じのイメージある。けれど、コシが残っていて尚且つ滑らかさも持っている。ポン酢に含まれる柚子の風味と酸味、昆布のホッとする優しい出汁が豆腐本来の味を横に添える感じだ。(この出汁が手助けをしてくれるから、豆腐がより感じられるのかなぁ)けれど時にポン酢のタレは豆腐の中へ染み込み、味変するかのような変化も起きる。不思議な作用だなぁと、感心してしまう。豆腐をひと口食べ終えたら、熱燗が入った徳利をおちょこに入れ移し、チビっと味わう。(う~ん、良い感じのまろやかさ!)口当たりがお酒の尖りっ気もクセもない。ほんのり甘みが広がっている。それなのに、後味はスッキリさせてくれるものだ。(湯煎して温めたのは正解だね)ストーブも大活躍してくれて、本当に一石二鳥だ。(豆腐も良いけど、野菜も煮えているから食べてみようっと!)私は先にポン酢に浸かっている水菜から取って
もう既に昼間も寒くなって、パーカーだけでは冷えが防ぎ切れない。風が吹くと耳まで凍えてしまいそうな気がした。こんなときこそ、イヤマフ付きのニット帽も被りたくなる。(この寒さじゃあ……それに合わせてウィンドブレーカーを羽織る出番の時期になったかぁ)薄い長袖の上に厚めのパーカー、その上に赤のウィンドブレーカー。作業用に履くズボンも、裏起毛が入ったヒートタイプの黒ズボンにした。今日は寒くないと良いなぁと思いつつ、いざ外へ出てみると……。(うっ! 寒っ! これは冷える……)強い風はまだ吹いてない。けれど、外の空気は想像通りひんやりと寒い。今日の天気予報では、雨が降らない薄暗い曇り空。これも冬の季節へ近づいた合図がしている気がする。周りに生い茂っている雑草の葉っぱも、ほぼベージュ色で纏う枯れ草だ。(玄関内に、カイロが置いてあったはずだけど……あ、あった!)玄関の靴箱の上にある箱からカイロを一つ取り出した。すぐにやって来る冬には欠かせないであろう。これさえあれば、多少の寒さがあっても我慢出来るし大丈夫だろうと思いたい。袋から中身を取り、シャカシャカと振ってウインドブレーカーのポケットにしまった。(さて、今からいつものテーブルやチェアを……)庭の収納庫から取り出し庭の真ん中へ設置する。その少し離れた場所に、焚き火用シートを敷いて焚き火台を置く。もちろん、今回も焚き火をするに決まっている。笠の開いた松ぼっくりや前回に残っている小さめの炭から新たに追加する大きめの炭を敷き詰めて……。それから、前に細かく割っておいた薪を山みたいに立てて並べていく。(一応、
——十一月の初旬頃。本格的に、冬が目の前になるという寒さの日。お昼はとっくに経って、もうまもなくおやつの時間まで過ぎようとしている。(あぁ、そろそろ暖房が欲しくなる時期がきたなぁ。ストーブを押入れから出したいものだ)日中の気温は今のところ、まだマイナスへ行くほどの温度になっていない。だが夜になれば、一気に下がって一桁台が多い。特に、来月後半になれば雪が降ってくるかもしれないと予報もちらほら出ている。寒さを凌ぐこたつのある温かい家に篭りたい気持ちが高まってくる頃だ。庭でこっそりに住んでいる虫や、山の中で暮らしている動物達もきっと同じ。これから訪れる寒さから凌ぐため、冬眠の準備をしているのだろう。(私も、そろそろ衣替えして冬用に着る厚い生地の服装を出さないといけないなぁ)そう思っているうちに、ふと気づいた。冬になれば、我が家の場所では雪が降ってしまう。雪の中でのキャンプを一度してみたい気持ちはある。だが今は、そこまで過ごすことができる装備や道具がない。ストーブと焚き火台だけあっても寒さが耐えられるのか?答えは当然「ノー」で、極寒の寒さには厳しいのである。(今日もきっと、寒いだろうなぁ……)だがこの時期こそ、どうしても食べたい物がある。それは……鍋料理である。鍋料理といえば寄せ鍋やキムチ鍋など定番の味。高級なものだと蟹やふぐ、あんこう鍋とか思い浮かぶかもしれない。そうは言っても、本当はそこまで予定していなかった。(食べたいものが急に浮かんできちゃったせいで、チャチャッと用意するのが難しい)その理由は、冷凍のお肉や魚を解凍してないからだ。今から解凍しても
(あ、そろそろ他の方へひっくり返そうかな)さつまいもを入れてから、二十分経った頃だった。焼き芋を均一に焼きたいため、火挟を持って焼いてる方面から転がすように返す。焼けるまでの時間まではまだまだといったところだ。炭が少なくなってきたので、薪や切炭を少し追加する。そうこうしていると、今度は雪絵さんからLIMEのメッセージが届いた。雪絵さん「い、芋……? どういうこと?」どうやら少し困惑気味だったので、ここは説明することにした。すると、すぐに返信が来た。雪絵さん「あぁ、そういうこと! 意味がわかったわ。 何を送ってきたのかと思ったら……今、焼き芋作ってるのね」私「うむ。焚き火台で作っているの」雪絵さん「へぇ~焚き火台で! それは面白そうだね。私も彼とやってみたいなぁ」(な、なぬ? 彼氏……だって⁉︎)雪絵さんがもう彼氏持ちになったということに、私は思わず驚いてしまった。この件は前回も説明したが、改めておさらいを……。同時に彼女から届いた今回の情報を共有しながら確認してみようと思う。(まさか、彼氏の話になるとは思わなかったけど)雪絵さんの彼は、私とも同い年で某アウトドアショップで働いている。彼女曰く、彼は販売リーダーという役職持ちの店員。オススメのキャンプ道具を取材した時が馴れ初めだという。その日をきっかけに数回訪れたり連絡先も交換したらしい。プライベートのことも話している内に意気投合し、ようやく交際に発展したのが昨年からだ。(告白はどっちだったかなぁ……あっ、これだ)探していると、先日送られてきたLI
「今日は超良い天気だし、こういう時の朝食なんて最高だな」恭弥さんはそう言いながら腕を上に伸ばした後、よいしょっとチェアから立ち上がった。「……?」「そろそろご飯を作ろう、お腹空いただろ?」(あ、そうだった……! まだ食べてなかった……)彼の淹れたコーヒーをじっくり堪能したくて、つい食べることを忘れるところだった。それくらい、彼とのコーヒータイムが落ち着く。
「あぁ、そうだった!」「なぁに?」彼からの抱擁の余韻があるものの、恭弥さんから話を切り出した。というよりも、きっとある音を聞かれたからかもしれない……。「空、まだ朝ごはん食べてないだろ?」(あっ……! バレちゃった……恥ずかしぃ……)時折、空腹の音が静かに鳴っている。
——ある休日のこと。寝室の窓には生成色をベースに薔薇と蝶の柄の入った遮光カーテンで閉めている。けれど朝の日差しが、完全に閉ざされていないカーテンの隙間から入ってきた。その温かみのある光から私の顔に当たる。何気なく目を覚ませようとしていた。(うぅん、今……何時だろう……?)布団の中でモゾモゾ動いてから、チラッと時計の針を見てみる。時刻は、もう朝の8時半をとうに過ぎていた。平日だと
――シュッ、シュッ!その側で、ケトルの口から吹き始めた。(あっ! そろそろ、お湯が沸く頃になるなぁ)ご飯の蒸らしもそろそろ良い感じだろう。メスティンを耐熱の手袋で網から引き上げた。(開けるのは、味噌汁用のお湯を入れてからにしよう)ケトルの口から湯気がどんどん吹き出ている。お湯が沸いた合図だ。その取っ手を手袋したまま掴む。