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第一話 豚肉の塩レモン香草焼き(その一)

last update publish date: 2025-03-10 10:47:36

 ——四月上旬、ある日のお昼を過ぎようする頃。

(ふぅ、やっと一つ目の原稿が終わったぁ……)

 私、夜鷹空は仕事部屋の中にいる。

今日は預かった原稿を校正したり、雑誌内の特集をゲラへ組み込む編集作業の日。

デスクトップの編集画面や、いくつも書かれている記事の原稿用紙と睨めっこをしていた。

その内、一件分の作業がようやく終えたところだった。

(それにしても、今回の仕事……かなり時間が掛かるなぁ……)

午前の早い時間から、いくつものの記事が書いてある原稿をチェックする。

そうでもしないと、最終締め切りに間に合わない。

赤ペンで修正と加筆しては文字数の調整したりと繰り返し行っていたからだ。

ここ最近、特に校正作業でスケジュールを詰めてたけどようやく落ち着いた。

(そういえば……)

 私は、ふと思った。

四月といえば……という話のこと。

(この時期、新人社員は研修や入社式も終わって配属も決まったり、本格的に部署でお仕事を始めてる頃だなぁ)

私も新人社員の頃は真剣に取り組んでいた。

けれど、色々と覚えることが多いし時に先輩からお叱りも飛んで大変だった。

今となっては大変なこともあったけど、懐かしい思い出としみじみ思う。

「空さん、あんまり根を詰めすぎたらダメよ。私も手伝うし一緒にやろう!」

雪絵さんは昔勤めていた出版会社の同僚、桐島雪絵のことである。

雪絵さんと私は入社時の同期。

現在は、昇進して編集エグゼクティブディレクターという肩書を持っている。

云わば編集長に近い役職についているキャリアウーマンだ。

雑誌の特集企画などを立てて受け持っている。

(入社してから同じ部署について一緒に行動して……。あの時、初めて話しかけてくれた雪絵さんのお陰で、特に人付き合いのことで助けてもらってたなぁ)

私が出版社を退職しても、彼女からの校正の手伝いやアドバイスなどお互いに受けたりする。

距離が離れても仕事など苦楽を共にしてできるくらい信頼できる人だ。

もちろん、今受けている仕事も彼女からの依頼として数件入っている。

今後もどこかで彼女の話がちょこちょこ出てくるから、今回はこの辺にするとしよう。

(さて、外はどんな感じかな……?)

家の外の様子を見にデスクチェアから立ち上がる。

レースカーテンを捲り大きな窓から覗いてみた。

暖かい日差しが柔らかくてポカポカしてて気持ちいい。

寒暖差がまだ少し残るも、お昼間の気温はほぼ安定しているだろう。

(今日は良い天気だし、外に出たい!)

外にはほとんど出ず、ずっと家に篭りっぱなしだった。

そんな欲にものすごく駆られている。

(よし! こういう時こそ庭でキャンプをするのが一番!)

けれど、まずは決めないといけないことがある。

キャンプを楽しむために何をするのかということ。

肝心なことはここからの話だ。

庭キャンプでの順序として、食事のメニューを決めることから始まる。

(今日の庭キャンプのご飯は何にしようかなぁ? あっ……そうだった!)

悩み考えている時、最初に浮かぶのは冷蔵庫の中身。

つまり、何の食材が入っているのかを思い出している。

そして真っ先にピンっと来たのが……。

(記憶が正しかったらだけど、昨日お出かけの帰りに寄ったスーパーで、安売りしていた焼肉用の豚肉があったはず)

調理されていた豚肉についている味付けは、塩レモン味で香草の入ったタレの味だ。

これなら、そのまま手軽に焼けるからちょうどいい。

(よし、今日は一人バーベキューに決まり!)

手のひらをグッと力を握り込め、心のやる気が出てきた。

思い立った私はその場からすぐに行動へ移し、仕事部屋から出てキッチンにある冷蔵庫へ向かった。

(えーと、確か……あっ、あった! これだ!)

冷蔵庫の中から今日のメインになる食材・豚肉が入ったトレーを取り出す。

豚肉には、既にタレで混ぜ合わさった状態で味付けされている。

野菜は、私一人分の量で食べるからそんなにいらないと思いたい。

でも、健康面を考えるとお肉と一緒にバランスよく食べたいのもある。

いや、一人なんだから好きなものを選べばそれで充分だ。

今は自分の食べたいものを選ぶことへ優先することにした。

(焼肉と言ったらキャベツに玉ねぎ……とりあえず、この二つあれば食べる分には越したことないかな?)

冷蔵庫の野菜室から、ひとまず二種類の野菜を取り出した。

キャベツは買ったばかりだから、まだ切っていない丸々一玉の状態。

玉ねぎは大きすぎず小さすぎず。

一人で食べる分にはちょうどいいくらい大きさをしている。

(他に何かあったかなぁ……。まぁ、ひとまずこれだけでいっか。思い出したらまた取り出したらいい)

とはいえ、いつまでも悩んでいたらキリがない。

この食材の下ごしらえを今からしないといけないからだ。

(さて、今から野菜を切らないと!)

今はグレー色のルームウェア姿で、仕事終わってからもそのままの状態だ。

服装もこのまま外に出るわけにはいかないから、下ごしらえしてから着替える。

それは、毎度のお決まりである。

この後は、タープを立てたりキャンプ用品を出す作業が待っているのだから……。

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