FAZER LOGIN「わた、しは……セフレじゃ、なかったの……?」「深月は、最初から、俺の彼女」「だから、あんなに、優しかったの……?」「俺は深月だったら、どこまでも、優しくなれる。なあ、深月。返事、くれよ」「へんじ……?」へんじ。ヘンジ。……返事?何の?「深月。俺と、付き合ってください。俺の彼女に、なってください」ツキアッテクダサイ。カノジョニナッテクダサイ。セフレジャナイ。カノジョ。ツキアッテ。 大きく2回頷いた。涙が止まらなくて、声が出ない。「う、うゔ……」もう一度抱きしめられた。私も腕を慎一郎さんの背中に回した。「俺、離さないから。覚悟して、深月」「うん……」顎に指を添えて、顔を上げられた。きっとひどい顔だ。泣いててメイクは崩れてるし、鼻も涙で詰まって真っ赤だろう。末摘花ってこんな感じだったのだろうか。優しく、唇が重なった。今まで慎一郎さんとしたどのキスよりも、このキスは優しかった。慈しむようなキス。これに近いキスを、慎一郎さんは何度かくれていたのかもしれない。 「すき、です」今度は慎一郎さんが固まった。さっきまで、あんなに私に、好きって言ってくれてたのに。目、逸らされちゃった。「やばいな、これ……」「慎一郎さん?」「深月、もう一回、言って?」──夏の夕方はまだ明るい。こんな明るい時間から、慎一郎さんに何もかも見られるなんて。羞恥で全身が敏感になった私は、何度もはしたない声を出した。何度も意識を失いかけた。何度目かの快楽が全身を走り抜けたとき、私は腰を痙攣させて意識を失った。……今何時だろう。慎一郎さんを起こさないように、抜けなきゃ。いつものようにそっと腕をどけようとした、そのときだった。「深月」「ん……慎一郎さん?起こしちゃった?」「行くな」「え」
「……セフレ?深月?」久世さんが問い返した声を最後に、瞼が重くなった。環と久世さんの声が、遠くで聞こえる。「……久世さん?こんなことを伺っていいかわかりませんけど。深月の長年の親友としては、私、黙っていられません」「俺は付き合ってるつもりだった。今の今まで。大事にしてるつもりだったのに、セフレって思われてたなんてな」「ちゃんと言葉にしないと、女は信用しませんよ?」「深月が素面のときにちゃんと言うよ。……頼むから、バックミラー越しに、そんなに睨まないでくれよ」「長年の親友なので」コーポ黒瀬の前で、私は久世さんに起こされた。「ほら、鍵出して」「ふあい。眠いれす、久世さあん」「頑張れ。高瀬さん困ってるから。小川さん寝かすんだろ」渋々バッグの中から鍵を出した。あれ?環、さっきよりも複雑な表情をしてるのは何故?「たらいまあ」電気は久世さんが点けた。なんでさっきからこんなにテキパキしてるんだろ。「高瀬さん、寝室はそっち。小川さん寝かせて。深月、まずは水を飲むんだ。ソファ座って」「慎一郎さん……?今日も泊まるの……?」ふわふわしたまま、久世さんにくっついて眠りたい。腕引っ張れば、座ってくれるはず。「今日は高瀬さんも小川さんもいるだろ。俺は家に帰る」「ええ……」腕を引っ張って、大原理紗ばりの上目遣いをしてみせる。「……っ。高瀬さん、じゃあ俺、帰るから。きみも泊まるんだろ。鍵頼むね」「久世さんこそ。深月とちゃんと、話してくださいね」どしたの環。何でそんなに慎一郎さんに冷たい声出しちゃうの?かわいそう……。──やらかした。昨日の夜、山王駅で久世さんのランクルに3人とも乗せてもらったのは覚えてる。助手席に座って、何か喋って……。何を喋ったんだ私。日菜ちゃんはひどい顔をしていた。私も大概だった。ふたりして慌てて朝
「深月さんも環さんも、こんな悔しいことされてたんですね。知ってましたけど、自分がされるとこんなに悔しいなんて……!」生ビールのジョッキを日菜ちゃんはテーブルにガン!と音を立てて置いた。「日菜ちゃん」「私の!私の企画なんですよ!」「そうだよ、日菜ちゃんの企画だよ。大原さんは私や深月だけでなく、ついに日菜ちゃんの企画まで」お酒が強くない環はノンアルコールのカクテルを飲んでいた。私や日菜ちゃんみたいにお酒で紛らわすのと、環みたいにお酒に頼らず耐えるのと、どっちがいいんだろう。唯さんに至っては、お子さんふたりの育児もある。せめて旦那さんが、唯さんの愚痴を受け止めてくれる人だといいんだけど。「最近は唯さんの企画にまで触手が伸びてたけどさ。日菜ちゃん初の企画まで……。もう鬼畜の所業だよ」お店の中だからか、日菜ちゃんは静かにぽろぽろ泣き続けている。本当は声を上げて泣きたいだろうに。久我課長……次長になっちゃったから、もう戻ってこれないか。久我次長がいてくれたらって、何度思ったことか。私が新人のときの課長は久我課長だった。当たり前のことを当たり前にやってくれる人だった。上司とはこういうもの……そう思っていたのに、三宅課長が全て覆した。上司にも当たり外れがある。私たちは、上司ガチャでハズレを引いたんだ。初めての上司があんな腐った人だなんて。日菜ちゃんが会社を嫌いになってしまう。「せんぱあいいいい。何であんな職場で仕事が続けられるんですかああああ」「日菜ちゃん、ちょっと自力で歩いて?深月、ここから右?左?」「えっとお……そこ出て左」たぶん今、正気なのは環だけ。飲んでないもん。私、いつもだったらこんなに酔わない。日菜ちゃんが受けた仕打ちが酷すぎて、日菜ちゃんにつられて私も一緒に酔っちゃった。私だけでも自力で歩かないと、環が本気で困る。それはわかる。日菜ちゃんはひとり暮らし。この状態で解散なんてしたら
──解せない。久世さんは、あれから連日うちに来ている。ケーキやお酒を手土産に毎回持ってくる。仕事の都合なのか、あの日と同じぐらいの時間にやってくる。そう、遅い夕食を終えてお風呂にも入って寝る前。ちょうど、まどろむ時間を狙って嬉しそうにやって来る。手土産を持ってきてくれるから、無下に追い払えない。ごはんが美味しいと言われたら、追い返せない。セフレだってわかっているのに。この人が求めているのは私の身体とごはんだってわかっているのに。触れられて絆されて、連日私は久世さんに抱かれていた。今朝は危うく遅刻しそうになった。そういうの、して欲しくないのに。会社の近くまでランクルで送ってくれた。……助かったけど。あんまり親密になると、お別れするとき辛くなるのに。久世さんは、ベッド以外の私が冷たいと拗ねるようになった。じゃあ他に行けばいいのに、数秒後にはまとわりついてくる。仕事中に久世さんの姿を見ることが増えた。久世さんは、会社の仕組みを改善する手伝いをしていると話していた。第一営業課の私が社内で久世さんを目撃する回数が増えたということは、もしかしたら例の調査に久世さんも関わっているのかもしれない。私に近づいたのも……その一環?考え過ぎかな。「疑り深いわね。久世さんが調査に関わってたとしても、調査は調査、深月は深月でしょ」そんなふうには割り切れないのよ、ダイヤさん……。「では、大原さんのこの案でみんな、頼むよ」三宅課長が当然のように言い放った。日菜ちゃんの顔から血の気が引いている。唯さんと私は顔を見合わせた。そう、その大原理紗と名前が記してあったその企画書。日菜ちゃんが先日唯さんを経て私に見せてくれたものだった。内容は……うわ、全く一緒。でも今回はフォントが明朝体からゴシック体に変えられている。ああ。ついに大原理紗と三宅課長は、新人の日菜ちゃんの企画でさえも奪ったのか。──閑静な住宅街の、とある家。ある一室。「……お前さ、ばあちゃんの指輪、持ってたよな?」
まだ薄暗い。今、何時だろう。枕元のスマホに手を伸ばす。あれ?無い。いつも充電差して寝るのに。 起きあがろうとして、身体が動かないことに気付いた。……腕?私、抱かれてる?腕の主は同じベッドで気持ち良さそうに眠っていた。そうか、私、昨日久世さんとしちゃったんだ。司と別れてもうすぐ2ヶ月。もう「別れたばかりなのに」なんて言われないか。誰も言わないけど。いいじゃない、ワンナイトする夜があったって。……ワンナイトなんて、初めてしたけど。朝になったら、全部元通りにしよう。久世さん、うちの会社出入りしてるし。社員と身体の関係なんて、まずいよね。あともう少しだけ。この人の体温に甘えてもいいかな。もうすぐ夜が明けそう。久世さんが、私を無条件に抱きしめてくれるのは、きっと今だけ。朝になったら、さようなら。彼の腕の中に戻る。すぐに包まれて、少し力が入った。朝なんて、来なければいいのにね。身体の相性は良かった。ただそれだけ。「好き」も「付き合おう」も無い。私にも無い。おあいこ。お互いさま。それで良し。「……深月?」額を久世さんの胸に擦り付けてた。起こしちゃったかな。「久世さん、まだ夜です。寝てください」「慎一郎」「え?」「名前で呼んでって……言った……」そのまま久世さんは眠りについた。頑張れ私。起きたら何ごとも無かったかのように仕事に行くんだ。アラームが鳴る、少し前。久世さんを起こさないように、そっとベッドを抜け出した。今日も仕事。身支度と朝ごはんを、できるだけ音を立てないように進める。アラームが鳴った。私の朝はいつもこの時間で問題無いけど、久世さんは仕事、間に合うんだろうか。「久世さん、朝です。起きてください」「んん……」まだ眠そうな彼の腕が伸びてきた。その腕に甘えたい衝動に駆られる。でもだめ。線を引けなくなる。「深月、おいで」「だめです。久世さん、朝です。起きてください」それだけ言って、キッチンに戻った。ご飯は早炊きで。私の分だけなら冷凍ご飯があったけど、パックご飯ばかり食べている久世さんには炊き立てのご飯を食べて欲しかった。お味噌汁は冷凍のカット油揚げと冷凍ほうれん草。冷凍ばんざい。玉子焼きは一本を半分ずつ、ひとり3切れでいいかな。甘いのかしょっぱいのか、どっちがいいのかわかんないからめんつゆと砂糖、両方入れようか。ま
「んんっ……はあっ……」反射的に久世さんのTシャツを掴んだ。また一瞬離れた久世さんの目が、熱っぽい。「くせ、さん……。日本酒、お好きですか……?」「好きだよ?1本で返すんじゃなかったの?」また唇が重なる。今度は吸いながら。激しい、このひとのキス。「んはあっ……日本酒は、まだ、飲んでないでしょ?」「じゃあ、持ってきて?」耳元にかかる息で、どうにかなりそう。冷蔵庫で冷えてた日本酒をガラスのとっくりとお猪口をふたつ、盆に載せてローテーブルに置いた。久世さんが注いでくれる。「じゃ、乾杯」小さく乾杯をする。くいっと喉に流し込む。これは甘口でのみやすいの。「深月ちゃん、結構いける人だね」いいながら、久世さんは自分の口に冷酒を流し込むとそのまま唇を重ねた。口の間から、冷酒が流れ込んだ。こくん、と飲み干した時には、頭がもうぼうっとしていた。目が合った。「深月ちゃん。……俺、もう、我慢できそうにないんだけど」久世さんの首に腕を絡ませた。自然と唇を何度も重ねて、そのままソファに倒れ込んだ。唇が、指先が、手のひらが、私の身体を滑る。タオル地のタンクの上から、彼は先端を甘噛みした。「はあんっ……や、焦らしちゃ、や……」なかなか脱がせてもらえなくて、下腹部の奥がじれったい。「くせ、さん……ぬがして……」「慎一郎」「……え?」「名前。慎一郎って呼んだら、脱がしてあげる」「しん、いちろう、さん……」タオル地の中に、慎一郎さんの大きなごつごつした手のひらが侵入した。わずかに膨らみを掴んで、先端を擦られる。「ふああ……っ!」「さん付けか。いいや、さん付けは、そのうち取ろうな」タオル地のタンクも、ショートパンツも両方剥がされた。電気はいつの間にか消されていたけど、月明かりは私の身体を隠してくれない。「深月……綺麗だな」「久世さんも、脱いでください。私だけ裸で、恥ずかしいです」「ずっと裸でいてもらってもいいけどな」言いながら、着ていたTシャツもジャージも下着も、彼は一気に脱いだ。先端を口に含んで吸われながら、久世さんの手は茂みの蜜をゆっくりと核に擦り付けた。「え……んあっ、はあ……あああん!」「指……すぐ入ったな。深月、こんなにエロい子だったんだ」不意に、身体が浮いた。「ベッド。ソファじゃしにくいから」抱き上げながら、何度もキス







