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第17話 流言と陰の矢

last update publish date: 2026-08-14 18:04:00

「――なんだこれ」

瀬名大地が呟いた。

香水を売り買いする業界の、専門掲示板が荒れている。

午前中、どっぷり調香して鼻を休める間だけパソコンを開いたのだが、中は中傷の荒らしだった。

匿名の誰かが、沙織の名を伏せてはいるが、ゴールデンノーズという沙織の称号でほぼ名指し状態だ。

ゴールデンノーズの調香リストは盗作だとか、誰それの猿真似だとか、あちこちに書きなぐっている。

それに対して、何人かが――おそらく塔矢フレグラスの内部の者――が、そんなはずはない。と主張しているが、荒らしの主はそんなことでは止まらないようだった。

「悪質だな……沙織さんの目に入るかもしれない」

大地は、釣りをすることにした。

わざと、匿名主に同意して見せて、そういえばそうかもしれない……などと書き込むと、しばらくして匿名主から仲間認定されたような発言が来た。

大地は個人情報は明かしていないが、アイコンは会社のミライのマークを使っている。

やや待っていると、匿名主からフレンドコードが届いた。

ミライになら、沙織の調香レ
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相木ふゆ彦
敵も味方もふえます!
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ブラックコーヒー
またあらたな救い主が登場。いいな沙織さん
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  • ダメだし夫からさよならして冷酷社長に溺愛される人生を選びます   第17話 流言と陰の矢

    「――なんだこれ」瀬名大地が呟いた。香水を売り買いする業界の、専門掲示板が荒れている。午前中、どっぷり調香して鼻を休める間だけパソコンを開いたのだが、中は中傷の荒らしだった。匿名の誰かが、沙織の名を伏せてはいるが、ゴールデンノーズという沙織の称号でほぼ名指し状態だ。ゴールデンノーズの調香リストは盗作だとか、誰それの猿真似だとか、あちこちに書きなぐっている。それに対して、何人かが――おそらく塔矢フレグラスの内部の者――が、そんなはずはない。と主張しているが、荒らしの主はそんなことでは止まらないようだった。「悪質だな……沙織さんの目に入るかもしれない」大地は、釣りをすることにした。わざと、匿名主に同意して見せて、そういえばそうかもしれない……などと書き込むと、しばらくして匿名主から仲間認定されたような発言が来た。大地は個人情報は明かしていないが、アイコンは会社のミライのマークを使っている。やや待っていると、匿名主からフレンドコードが届いた。ミライになら、沙織の調香レシピを横流ししていい、と言う。「はっはぁ、私怨かな?」塔矢フレグラス全体に恨みがあるなら、他の言い方をするだろう。なにがなんでも、沙織の責任にしたいようだ。大地としては、他に流出する前にここでせき止めたい。”それは是非、教えて欲しいです……”できれば、この匿名主の本名を知りたい。激情型なので、うまくおだてれば喋るだろう。大地は、しばらくは試香室に戻らずに、パソコンを叩き続けた。うまいこと情報を握ったら、全部沙織に話して塔矢フレグラスの中で解決をさせたい。大地は、やりとりをさかのぼってスクショを始めた。*** 園村エリカは、ご機嫌で塔矢フレグラスの社内を歩いていた。エリカが東京にいることを反対する奏多が先代に敗れ、エリカは一年だけ東京本社にいることを許可された。エリカの計算によれば、一年あれば奏多にくっついている忌々しい鮎川沙織を引きはがせる。そして、エリカは見事社長夫人の座を射止めて、結ばれる。過去にエリカが

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  • ダメだし夫からさよならして冷酷社長に溺愛される人生を選びます   第12話 フランスの香り

    休日の沙織は、ふらっと都内の香水店舗を探索していた。鼻を休めながら、ミライの本店を覗く。どこの香水の店でもそうだが、一見でふらっと入っても丁寧に接客してくれる。ニッチフレグランスは、それなりの値段をする。一目ぼれ――ならぬ一嗅惚れをしても、買うのをためらう客は多い。沙織も、今は給料前で、奏多から受け取った財産以外にお金はなかった。目星をつけて、嗅ぐだけ嗅いだら帰ろう。「いらっしゃいませ~」店内に入ると、軽やかな声で接客の挨拶をされた。人気商品は、きちんとテイスティングの準備がされている。ムエットに出さなくても、沙織にはそれぞれの容器から匂いをかぎ分けた。――こっちは紅茶香水で、ベルガモットとシダーウッド、ムスク、アンバー、ブラックティー。――こっちはフローラルムスクで、サクロサントール、サンダルウッド、アンバーグリス、ホワイトムスクか……。「おや~? 熱心なお客さんですね。よろしければ、私から一本気に入ったものをプレゼントして差し上げたいですねえ」ふいに耳元で声がして、沙織は飛び上がった。「だ、誰っ……!?」「もうお忘れですか、寂しいなぁ」匂いを当てることに集中していたせいで、背後の気配に気が付かなかった。振り返ると、至近距離からミライの調香チーフである瀬名大地がニヤッと笑ってたたずんでいた。「瀬名さん……!」「名前を憶えていただいて幸いです。どうです、どれも俺の調香レシピですよ」「そうですか、繊細でいて大胆な調香ですね」何故ここにいるのか。調香レシピの制作のメインを握る大地が、自ら店頭にいるとは。「不思議そうなお顔ですねぇ。俺は現場の声を聞くのも好きなんですよ。ただでさえ香水は、肌に乗せると個人によって香りが変化するでしょう? ウッディスキンの人はウッディになりやすいし、スイートスキンの人は甘くなりがちですから」「確かに、そうですけど……」「ちなみに沙織さんは?」あまりにもすんなり下の名前で呼ばれて、沙織は否定するタイミングを失った。「ニュートラルスキンです」「肌

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