author-banner
相木ふゆ彦
相木ふゆ彦
Author

Novels by 相木ふゆ彦

ダメだし夫からさよならして冷酷社長に溺愛される人生を選びます

ダメだし夫からさよならして冷酷社長に溺愛される人生を選びます

結婚四周年の沙織は、残業する夫の元にいくと不倫され、離婚を突きつけられた。財産も奪われて追い出された沙織はある幼なじみを当てにする……しかし、沙織を巡って弁護士になった後輩、ライバル会社のエースなどが動き出した――。
Read
Chapter: 第50話 20万のワンピース
「はぁ……疲れた」「お疲れ様です、少し休憩しませんか?」「でも、もうすぐ店が閉まるから……」沙織(さおり)と、朝霧(あさぎり)司(つかさ)は、ジャネルの店からくたくたになって出てきた。ルイ・ボトンのあと、ジャネルとはしごして、未だこれだという服に巡り合えていない。沙織は、見ているだけの司が飽きないかどうか、心配だった。休憩なしで、ブラダの店に入るとどことなく閉店の準備をしているように感じる。「すみません、時間ぎりぎりに入ってきて……! 今日以外に時間がとれなくて」「お客様がいらっしゃる限り、営業時間ですよ。なにをお探しですか?」平身低頭する沙織に、店員が明るく笑う。にぎやかしだと思われなくて良かった。バッグだけは奏多にプレゼントされたブランドだが、沙織の今日の服はブランドものではない。それでも、横できっちり高級品を纏っている司がいることで、しっかり接客されている気がする。希望の金額のものを店員が探し始めたが、沙織は時計をちらちらと確認する。ここでダメだったら、香水巡りをする時間を削らないとダメだ。香水めぐりは、なかなかハードなのだ。貰ったムエットを入れるビニールふくろ。中身がわかるように油性ペン。肌に置いた香水を拭きとるアルコール除菌シート。ムエットを束ねる入れ物。鼻休めのコーヒー豆。あれこれと、バッグがかさばるし、腕を出しやすい服でなるべく香りが映らない服装になる。「では、こちらでご試着を」沙織は、クリームベージュのものを避けた。コンテストと誕生日パーティーなら問題ないかもしれないが、万が一誰かに結婚式に呼ばれたときに使いにくい。残ったのは、黒のワンピースだ。天下のブラダでは20万でドレスは買えない。しかし、この先に使うにもドレッシーなワンピースのほうが使いやすいだろう。シンプルだと思った服は、袖を通すとやはり華やかだった。10億の財産はあま
Last Updated: 2026-10-30
Chapter: 第49話 ドレスの悩み②
塔矢(とうや)奏多(かなた)は、鳴った電話に素早く出た。転送されてきた番号は、沙織(さおり)の弟の鮎川順一郎のものだ。沙織との夕食は済み、沙織は自室に戻っている。奏多は、飲みかけのブランデーを置くと電話を聞く。「姉さんだろ! お父さんたちに言ったことを撤回してよ! 母さんが預けた300万もかえせって言われて困ってるんだ。不足分はいったん姉さんに補填してもらって、次の資金をくれればうまいこと当てるからさ。物分かりがわるい姉さんでも、そのくらいはわかるだろ」奏多は、顔をしかめた。順一郎の物言いは、いつも上から目線で沙織を悪くいう。自分はあくまで善意の理解者のごとく振るまい、自分がしでかした損失については棚上げだ。鮎川(あゆかわ)家の両親はしっかりしているのに、どこで踏み間違ってこうなったのだろう。あえて返事をしない奏多は、サブのスマートフォンで順一郎の罵声を録音した。いつ、何に役にたつかわからないが、なにかに使えるかもしれない。沙織の身の安全をとるためには、何事も慎重なほうがいい。「こちらは、塔矢奏多だ。君の電話を沙織につなげる気はない。二度と電話をかけてこないで欲しい」「――また塔矢さんですか。これはきょうだいの電話ですよ、赤の他人のあなたがでしゃばってくる意味がわかりません。姉さんをだしてください」順一郎の声は、一転してさぐるようなものになった。やはり、奏多が想像した通り、強い言葉は女性に向けられても男には弱い気がする。ましてや、世間的には奏多が成功者で、順一郎は実家と姉にたかっている状態だ。「訴えますよ」「ほう? やりたいならどうぞ。こちらも反撃はする」果たして弁護士代は払えるのか、と問うと電話はいきなり切れた。「やれやれ……」沙織の周囲は、なかなか平穏にならない。しかし、こうして電話を転送したことで、守れるものがある。優しい沙織の心に、いらない傷を負わせなくて本当に良かった。奏多は、このうざったい電話がきたことを、沙織にばか正直に伝え
Last Updated: 2026-10-28
Chapter: 第48話 ドレスの悩み
日本フレグランス・グランプリの前には、塔矢(とうや)奏多(かなた)の誕生日パーティーがある。沙織(さおり)は、そろそろ自分の衣装をどうにかしようと思い始めていた。パーティーはそのへんのお店でやるのではなく、豪華客船で海にクルーズしながらの立食パーティーだという。招かれているのは、いずれも大企業の社長やCEO、その妻子。あとは、付き合いのある企業と奏多の友人であって、沙織の場違い感が凄い。沙織も、奏多の”友人”枠だろうから、派手すぎず地味過ぎない恰好にしなくては。短い休憩時間、パソコンでブランド店のホームページを覗く。沙織が探す、しっかりしていて派手すぎないが地味すぎないというのはなかなか難しい。知加子(ちかこ)の結婚式に着て出たカクテルドレスにしようか……。帰ったら袖を通してみよう、と決めたところで、ドレスは高山隼人(はやと)の家に置き去りなことを思い出した。身一つで出ていけ、と言われてなにもかもを置いて来た。部屋着や私服は、しっかり高級なものを奏多がプレゼントしてくれたが、奏多の誕生日に助けてもらうわけにはいかない。あまり日がないが、知加子を誘って服を身にいこうか。なんだかんだ言って、奏多は家賃を受け取ってくれないため、昇級した沙織の今の給料ではそれなりのものが買えるはずだ。知加子に連絡を入れながら、沙織はパソコンを閉じた。これから、また気合をいれて調香だ。絶対に、成功してみせる。****「ねえ、今日は情報ないの?」園村(そのむら)エリカは、シャワーを浴びてバスローブを着ると、男に寄りかかる。「ないね、今は社長が一人で仕事してるから、会議以来新しい情報は入ってこないな」男――塔矢フレグランスの重役は、するりとエリカの胸元の手をさしこむ。「それより、もう一回――」「帰らなくていいの? 奥さんが気にしてるって言ってたくせに」「そういや、そうだったな」残念そうに手を引っ込めた男は、財布から数
Last Updated: 2026-10-26
Chapter: 第47話 癒し
「ちょっと、頭を撫でてもらっていいか?」 塔矢(とうや)奏多(かなた)が帰宅する前に、沙織(さおり)は夕飯を作り終えていた。 傷ついた本音を隠し、なんでもないように装う。 それは、高山(たかやま)隼人(はやと)と結婚していたときには、よくあることだった。 そうやってなんでもない顔していた沙織に、帰宅するなり塔矢奏多がいきなり切り出した言葉。 沙織は、きょとんとして奏多の長身を見上げた。180センチ越えの奏多の頭は、普通にしていれば手が届かない。 奏多は高級スーツを脱ぎもせずに、ソファーにごろりと転がる。 そうして、子供のように手招きした。 先ほど順一郎から傷つけられたささくれが、初めてみる奏多の甘えモードに癒された。 ソファーに沙織が座ると、奏多の頭が膝にのる。 「……疲れた。園村エリカの件は長引きそうだ」 「お疲れ様」 そっと奏多の髪に触れると、黒髪を撫でる。 奏多は心地よさそうに、目を閉じた。 「沙織のお陰だな。知らないままだったら、今後のデータも危ういところだ」 しゃくだが、瀬名にも感謝だ――と奏多の低くて甘い声がこぼす。 相当に疲れているらしい。「沙織も疲れてるんだろう?」 「え?」 「表情が固い。なにか隠している顔だ」 沙織に膝枕されながら、奏多が沙織の髪に触れる。 奏多は、弟の順一郎のことを知っている。なにしろ実家までついてきてくれたのだ。 「順一郎が新しい番号でかけてきてね……」 「なに?」 「私の考えが浅いから、あることないこと両親に吹き込んだんだとか、離婚しただけで親に迷惑かけてるのに、また実家に迷惑をかけるのか……って」 「あいつは、真生のバカみたいだな。どっちが親に迷惑をかけてるんだ? 姉と母親から何百万も持って行って、自分は迷惑をかけてないと?」 奏多のため息が、沙織の手に触れた。 「新しい番号はブロックしたか?」 「うん……」 「何億持ってるかも、話してないな?」 「うん、それはお母さんたちにも話してないし」 「じゃあ、転送機能をつけて、俺のほうにかかるようにしよう」 奏多の言葉に、沙織は撫でる手を止めた。 ただでさえ、奏多は今疲れている。 そこに、沙織の個人的な重しまで乗せられない。 「ダメだよ、奏多はただでさえ疲れてるのに、会社のことでもないことで迷惑かけられないよ
Last Updated: 2026-10-23
Chapter: 第46話 情報の流出
心配していたオリジナル香水は、ノーマン・ギゼルから「大変気に入った」という返事が返ってきた。これで、心置きなく日本フレグランス・グランプリに集中できる。沙織(さおり)は、一本で朝につけるほのかな香水、ミドルが強い中央香水、振ることで夜用に変わる香水の試作に明け暮れていた。デザイン部とも相談して、上下に真ん中と混ざるボトルも頼んだ。「チュベローズは甘すぎるよね……うーん、やっぱり系統としてはユニセックスかな……」メイン香水と、朝夜香水のそれぞれで完成する香りを楽しく考えていると、他の調香師たちもおのおの自分の調香を始めている。ゴールデンノーズとして世界的に有名な沙織に負けないよう、自分の名前が入った香水作りの熱気が漂っていた。****「参ったな……」奏多(かなた)が太いため息をついた。沙織以外の全員のスマートフォンを、調べた。しかし、園村(そのむら)エリカと連絡を取っている人物はわからなかった。情報漏れということでスマホをチェックしたが、その場でデータがなかったらどうにもできない。奏多が行ったのは、次の事柄だ。会議資料の閲覧履歴を確認。社内共有フォルダのアクセスログを確認。社内メール・業務チャットの送受信記録を、会社の規程に基づいて確認。機密資料を誰がダウンロード・コピー・印刷したか確認。USBメモリや外部ストレージへのコピー履歴を確認。会議資料を誰が誰に渡したか聞き取り。園村エリカの直属上司・同僚・関係部署への事情聴取。ライバル会社側に流出した情報と、社内でアクセスできた人物を照合。以下の作業を秘書と一緒に行ったが、何の情報も得られなかった。園村エリカは、以前のやらかしは社内に知られており、事務がたの人間も要件以外で話しかけない。ぽつんと一人行動をしていて、誰かと接触する気配はなかった。会社で出来ることは、もうない。不正なアクセスなどは何もなかった。
Last Updated: 2026-10-21
Chapter: 第45話 花火大会
「いやぁ、素敵ですね。似合ってます」瀬名(せな)大地は、沙織(さおり)を見るなりベタ褒めした。今日は休日で、花火を見る約束をしている。二日前に、大地から浴衣一式が届き、良かったらときつけの予約までされていたのだ。明るい色の椿の柄は、色の白い沙織の顔を引き立てていた。「椿の花言葉がよく似合います」にこりと、そんなことを言う。椿の柄の意味は、発展、永遠の美を現すと沙織が知るのは、その後のことになる。「なんか、浴衣や着付けまで色々ありがとう……」「いえいえ、見たいのは俺だったんで、勝手に手配までしちゃって」着付けの際に、髪の毛も綺麗にまとめてもらっている。和風の可愛いかんざしが、椿の色とリンクしていた。それを、一歩引いた位置から大地はしみじみと眺めている。どこか恥ずかしくて、沙織はそっとうなじに手を触れた。「俺はこれで和の香水のイメージがむくむくと沸いてきましたよ」「瀬名さんなら、絶対イノベーション賞のほうだと思ってたんですけど」花火開始まで、あと2時間ほどある。沙織は、大地に誘われるままオープンテラスのビアガーデンに入った。夏の終わりの夜風が吹くテラスで、二人は揃ってクラフトビールを頼んだ。珍しく、おとうしが二種あって、里芋の煮っ転がしときんぴらが出される。フルーティーなビールを口に運ぶと、ラガーとは違う味が口の中に広がった。「イノベーション賞、正直俺も絶対そっちだと思ってたんですよ」里芋をほうばって、大地はクラフトビールのグラスを空にした。「でも、上から日本的香水のほうに指示されちゃいまして。イノベーション賞のほうは、新人たちに任せろってね。俺は沙織さんがイノベーション賞に選ばれたのを直接聞きましたけど、社長も別ルートでそれ知ってね。だったら、確実に日本的香水に俺を任せるって」「え……誰からもれたんでしょう……」ラガーより飲みやすい飲み口のクラフトビールを、沙織は半分開けた。
Last Updated: 2026-10-19
運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす

運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす

西暦2000年に地球外生命体が地球を襲った。宇宙人たちは様々な形態をしているが、狙いは地球人の感情、文化、歴史だった。銃火器は役に立たず、地球人は宇宙人から超常の力を手に入れて、異能で地球外生命体と戦うこととなった。この作品は、チートと呼ばれる主人公の復讐と成長の物語である。
Read
Chapter: エピローグ 58話
西暦2028年、春。 霊園の中を、三つの影が歩いていた。 遅咲きの桜が花を散らす中、軍服姿の三人は立ち止まる。 スカイツリー作戦から、二年の時が経っていた。 「来たよ、母さん。今年もまだ桜が残ってるんだな」 カガリが花で埋め尽くされている墓に向かって呟いた。 掃除は隅々までされているのだが、気持ちとして揚羽が細かいところを片付け始める。 生島司令は、持参した花束の剪定を始めた。 「親父もこっちに移れて、満足してるだろ?」 不知火知世は名誉中将として、軍葬にされていた。 夫のホムラは別の墓だったのだが、去年カガリが二人の墓に変えたのだ。 もっと早く、夫婦として弔ってあげればよかった。 そうしたことが気づけなかったのは、自分の未熟さもあったと思う。 「今年は嫁を連れてきたからな。何度も話してただろ、久遠揚羽――今は不知火揚羽だ」 「お義父さん、お義母さん、カガリはわたしが幸せにしますからね!」 「いつも思うが、それはセリフが逆じゃないのか」 カガリが、父と母のそれぞれの好物を供えた。 生島は、二つの花束を供える。 「結婚式のカガリくんの保護者は私が勤めたからね。――私で良かったかな、知世くん、ホムラくん」 「いいんですよ。司令だけでよかったのに、啓心まで居たし」 三人はそれぞれ、長く墓石の前で祈った。 一番最後まで頭を下げていたのは、カガリだった。 「――またくるよ、二人と
Last Updated: 2026-09-27
Chapter: 57話 これからの未来は
 カガリは、また敬礼されて苦笑した。  極秘作戦は、極秘ではなくなった。 一般市民が多数、東京スカイツリー決戦を携帯で撮影したものがマスコミに流れたのだ。  テレビ局は、独断でその映像を流し、お茶の間は同じニュースに張り付いている。 作戦に参加した隊員たちは、周囲から尊敬の念で見られていた。  Sランク|地球外生命体《ヴォイドフォーク》に囲まれて、生き延びたのだ。 カガリも妬みから多少解放されてきている。  そんなカガリは、本部に呼ばれてきているが表玄関はマスコミでいっぱいだった。 カガリに気が付いた記者たちが、大声でカガリを呼ぶのを無視する。 「相変わらず、本部はうるせえなあ」   作戦から一週間たった今日、本部はマスコミからの発表を控えていた。 戦いはスカイツリーの下だったとはいえ、補修道路や一部の民家なども壊れている。  その工事のめどがようやく立ったので、夜坂司令は報道を許可した。 とはいえ、まだ一時間以上後なのだが。  カガリは、軟禁されている姫川四葉と話をしてから一旦ロビーに下りてきたところだ。 四葉は、終始徹底して「カガリくんの為にやったの!」という意見から離れず反省を見せない。  反省しない限り、軟禁から解かれることはないだろう。 一方、御厨は訓練以外は自主的に軟禁され、あと一年は自粛すると語っていた。  司令に願い出て、お茶の水基地に戻るときにはもっと下の階級からやり直したいと、すっきりとした笑顔を見せていた。 「早く、戻ってもらいてえな……」 「誰にだね?」 「うわ、びっくりした!」  カガリのひとり言に答えたのは、榎木准将だった。 護衛もつけず、ソラを連れて歩いている。 「行こうか、カガリくん。インタビューの前に腹ごしらえでも」 
Last Updated: 2026-09-26
Chapter: 56話 最終決戦②
 五百雀《いおさき》月子は、大量のパフィオペディルム型に左右を挟まれながら雨の空を錐もみに回避した。 精鋭部隊は、ここにいる全部で終わりだ。  援軍の可能性は低い。 八メートルほどのパフィオペディルム型|地球外生命体《ヴォイドフォーク》は、倒れても倒れても減ったように見えない。  弱点は背中にあるが、圧倒的な数で月子にはなかなか手が届かない。 月子はカガリに迫ろうとした個体の口を、一撃で切り落とす。 「月子ちゃん、あんまり僕から離れないでほしいっすね」  雨宮准尉が、すぐさま隙ができた月子の背中をカバーに回った。 視界の端で、種田上等兵が攻めては引く攻撃を多彩に繰り出していて、月子は自分が飛び出していることに気が付いた。 「それでも、不知火隊長が――!」 「わかってます、カガリ少尉も目的見失ってて困るんすよね」  歯がゆそうに雨宮も、長いゼノブレイドで|地球外生命体《ヴォイドフォーク》を叩き切る。 軟体のパフィオペディルム型だが、切り口によってはゼノブレイドがひっかかって手から抜けそうになった。  ヒュン、と一体のコープスイングが集団から飛び出して、パフィオペディルム型が一斉にその一機を狙う。 「揚羽先輩……?」 「続きましょう、月子ちゃん! カガリ少尉のことはあの人に任せるっすよ!」  揚羽を狙うパフィオペディルム型を、急所を外してでも切りまくった。 月子と雨宮は背中を預けあって、返り血を避けながら揚羽の背後を守る。  揚羽はちらりと感謝するように振り返って笑むと、一人で乱闘するカガリの元へ到達した。 カガリは返り血を気にすることなく、縦横無尽にセイント・テスラで|地球外生命体《ヴォイドフォーク》を消滅させている。 「カガリ……!!」  揚羽が無防備なほど接近して、不知火カガリはようやくパフ
Last Updated: 2026-09-25
Chapter: 55話 最終決戦①
 関東本部基地には、ずらりと精鋭が並んでいた。 その先頭にたつのは、榎木准将だ。  鬼山啓心中佐、神原雪音中佐、そして不知火カガリもその列の中にいる。 オフィリア05部隊のように部隊全体で参加してるものは少なく、夜坂司令と榎木副司令からの声かけで臨時の部隊編成が多い。  その全員が、M1,022型異星人の一部を身に着けて隠密態勢を取っていた。 今回失敗してしまうと、アポカリプス星人が|地球外生命体《ヴォイドフォーク》に情報を流し続け、いつくるか分からない洗脳を警戒し続けることになる。  娯楽の少ない異界防衛軍としては、外出禁止の不満を抑え込むのも長くないと悟っていた。 そんな中、カガリだけはソラ本体を抱えている。  カガリとソラで、人間に紛れるアポカリプス星人をいぶりだしていく想定だ。 そのために、カガリだけ一人ペイント弾を持っている。  口頭で叫んだり、異髄力で縛り上げるより早いからだ。 夜坂司令が、軍服で部隊全体へと手を広げる。 「このところ、同じメンバーに極秘任務を任せていて心苦しいけれど、今回が最後よ。|地球外生命体《ヴォイドフォーク》に情報を流し、人を洗脳するアポカリプス星人を駆逐する! 今回が最大のチャンスよ! 不知火カガリを先頭に、総力戦で挑みます!」  榎木准将が、敬礼しつつ唱える。 「撤退する時は味方の死体を担いで逃げろ。絶対に置き去りにするな。テキの手に渡るくらいなら、必ず脳を打て!」  かつて不知火知世名誉中将が口にした言葉。 精鋭たちは、榎木に従って唱和したが、カガリは口を開かなかった。 『カガリ、どうしたカ?』 「――おごりでもいい、オレはそんな事態を防いでやる」 『ソラが捕まったラ、カガリはソラ殺してイイ。地球人のデータ、たくさんもってル』 「馬鹿なこと言うな! ソラは友達だ。いなくなるのは許さねえよ」  カガリの怒りに
Last Updated: 2026-09-25
Chapter: 54話  末路
 嶽村は、部屋の壁を叩くのをようやく諦めた。 食事が出される以外、聴取の人間しか顔を合わせない。  そしてその相手はみな夜坂司令の部下ばかりで、嶽村はこれはクーデターではないかと疑っていた。 トイレは部屋にあるが、廊下に面する壁は透明だ。 遠くに人の気配も感じて、嶽村は怒りを抑えきれなかった。 「お加減はどうです?」  冷ややかな声で入室したのは、鬼山中佐だった。 「鬼山、貴様ッ!」 「あなたに貴様呼ばわりされるのは合点がいきませんね。あなたは軍の極秘情報を|地球外生命体《ヴォイドフォーク》に、垂れ流していたんですよ?」 「それは御厨だと判明しただろうが!! 私は知らないぞ!」 「いえ、あなたがいつから情報を流していたのかは判別がきかない以上、御厨隊員の前か後かなんてもう関係がないんです。あなたは異界防衛軍の本部副司令として、してはならないことをしました」 「だから……証拠を出せ!」  鬼山が、ひどく疎ましい顔をする。 普段は快活な性格なだけ、嶽村は初めて見る表情に背筋が冷えた。  鬼山が、書類の中から取り出した機械を操るとそこから嶽村の声が流れ始める。 ごく最近の軍務会議の内容を、抑揚もなく話し始める自分の声に、とうとう冷や汗がはがれ始めた。      こんなことを、話した記憶はない。 「指向性マイクで聞き取ったものを、その場で録音したものです。納得しましたか?」 「それは……!!」  嶽村は言葉に詰まった。 そして、方向転換をすることにする。 「アレだ、洗脳されていたんだから、私の意思じゃない! 悪いのは|地球外生命体《ヴォイドフォーク》だ!」 「夜坂司令が御厨隊員にそう判断したとき、少佐から准尉なんてとんでもない、クビだと騒いだのはあなたですよね? 撤
Last Updated: 2026-09-24
Chapter: 53話 裏切られたココロ
 姫川四葉の携帯が振動した。 最近、よくあるお誘いだった。 「最近四葉の携帯よく鳴るね。もしかして彼氏?」 「そんなんじゃないですよ……」 「そっか。ていうか、不知火少尉ってガチで揚羽先輩と付き合ってる噂出てきたよね~。圧倒的に戦闘職が多いから、男女共同ルームは使いにくいし、見たわけじゃないけど」  同室のオペレーターの先輩の言葉に、四葉は唇を噛み締めた。 「違うと思います……カガリくんは優しいから」  つけこまれている、とはさすがに断言できない。 上下社会だ。階級はだいぶ離れているので誰に告げ口されてもおかしくはなかった。  メールを開けると、案の定雑誌ライターの藤川からだ。 先々週、四葉が外出していたところを「不知火カガリくんの同期だよね?」と声をかけられたのだ。  スター性はテレビが握っているので、他愛ない話や日常の話を是非聞きたいと言われて。四葉は断り切れなかった。 同期ならさぞエピソードをお持ちでしょうと、おだてられたのも気持ちよかったし、五百雀月子ではなく自分がカガリと親しそうと判断した藤川の期待にもこたえたかった。  ”明日の三時に、いつものお店で”  今は、上から外出禁止の命令が出ているが少し離れた場所ならまだ大丈夫だろう。 四葉は二段ベッドの枕の下に、カガリのグッズで出た写真を隠す。  悪いことをしているわけじゃない。 謝礼だって受け取っていない。  いつか、カガリも感謝してくれるだろう。 そう思いながら四葉は、眠りに入る。 心地よい眠気はすぐにやってきた。 *** 「慣れてきました?」 「多分、一生慣れないです」  カガリはコープスイングで富士山麓から本部に向かっていた。
Last Updated: 2026-09-24
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status