Share

第22話 ハリウッドからの依頼

last update publish date: 2026-08-26 18:11:00

「どうしたの、奏多?」

「……いや」

塔矢奏多は、沙織から目を逸らした。

夕食だけだったのが、朝食も共にするようになって数日。

沙織からは、何か隠している雰囲気がありつつも、空気が柔らかい。

「つけてくれてるんだな」

「社の制服を着たら、隠れるから」

いたずらっぽく笑う沙織は、以前よりも美しく見える。

――誰にも渡したくない。

朝霧司にも、瀬名大地にも。

調香で自信を取り戻していく沙織は、ますます綺麗になるだろう。

しかし、うかつに踏み込めば高山隼人とに離婚で傷ついた沙織と距離が出来てしまう。

奏多は、何年経とうと沙織を待つと決めた。

しかし、待つだけでは過去に隼人にさらわれて終わった。今度は、タイミングを間違えない。

「あと二週間か、パーティーまでは」

「憂鬱そうだね? お父さんが張り切っているんでしょう?」

「もう28だぞ? 誕生日にパーティーって年じゃないし、オヤジはなにか企んでるからな……」

二人でエレベーターで駐車場に下りつつ、奏多はた
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Comments (3)
goodnovel comment avatar
ブラックコーヒー
ハリウッドスターからのご指名とは、どんだけ彼女は階段を上っていくのだろうか
goodnovel comment avatar
相木ふゆ彦
では、秘密裏に……!!ひゅばっ!!
goodnovel comment avatar
雨音休
1億五千万の香水作り!私も欲しいですわ!
VIEW ALL COMMENTS

Latest chapter

  • ダメだし夫からさよならして冷酷社長に溺愛される人生を選びます   第28話 大地の打算

    「司くんに、また二人で出かけたいって言われて、私、すぐに意味がわからなくて――」沙織の話は、朝霧司とは大学の先輩後輩だという話から、塔矢奏多と幼馴染で、前の夫から放り出されたときに助けられた話まで、ごったになって流れてきた。若者が多く、にぎわっている店で良かった――大地は内心、自分のチョイスを褒めた。沙織から電話で話を聞いたとき、沙織はやっと大地の下心に気が付いたのだと思った。だから、今日はフラれる覚悟で来たのだ。しかし、沙織の話を聞く限り、沙織の気持ちが定まったようには聞こえない。おそらく、高山隼人との離婚が、かなり沙織の重圧になっているのだろう。そうでなければ、もう少し早く気が付いたはずだ。沙織の自己肯定感は、時に低い。沙織の作った調香からはみじんもそうした気配がないのだが。本来の芯の強さを、隼人が離婚の際にへし折ったのかもしれない。今更ながら、隼人が憎い。「まだ、離婚したてだし……前の夫のことだって、結婚記念日までずっとわかってなかったのに……選ばないといけないことなのか、って。でも好意を持たれていたら、無視するのは酷いことだし……もう自分のことがわからなくて」「まあ、今無自覚に俺もフラれてるんですが、沙織さんのためにならいくらでも都合のいい男になりますよぉ」沙織の戸惑ったような顔から、はっと表情が変わる。「もしかして、瀬名さん……!?」「まあ、もしかしないんですけど。いいんです。お話からして、塔矢さんにも朝霧さんにもこの話と気持ちを打ち明けていないってことですよね? だったら、最初に聞けたのが俺で嬉しいんです」「それでも、私……!」「都合のいい男ってのは、言葉が悪いですね。そーですねぇ、確かに俺は沙織さんのことが好きなんですけど、親友にもなりたいんです。だから、塔矢さんたちに話しにくいけど、男の意見が聞きたい! みたいなときはこうして話してください」きっと、塔矢奏多や朝霧司は、そう割り切って話せるタイプではない。大地の強みは、この軽みだ。沙織と出会って一番、日数が浅い自分。それでも、こうして困りごとを相談されるほどに

  • ダメだし夫からさよならして冷酷社長に溺愛される人生を選びます   第27話 男の心

    「司くんに、また二人で出かけたいって言われて、私、すぐに意味がわからなくて――」沙織の話は、朝霧司とは大学の先輩後輩だという話から、塔矢奏多と幼馴染で、前の夫から放り出されたときに助けられた話まで、ごったになって流れてきた。若者が多く、にぎわっている店で良かった――大地は内心、自分のチョイスを褒めた。沙織から電話で話を聞いたとき、沙織はやっと大地の下心に気が付いたのだと思った。だから、今日はフラれる覚悟で来たのだ。しかし、沙織の話を聞く限り、沙織の気持ちが定まったようには聞こえない。おそらく、高山隼人との離婚が、かなり沙織の重圧になっているのだろう。そうでなければ、もう少し早く気が付いたはずだ。沙織の自己肯定感は、時に低い。沙織の作った調香からはみじんもそうした気配がないのだが。本来の芯の強さを、隼人が離婚の際にへし折ったのかもしれない。今更ながら、隼人が憎い。「まだ、離婚したてだし……前の夫のことだって、結婚記念日までずっとわかってなかったのに……選ばないといけないことなのか、って。でも好意を持たれていたら、無視するのは酷いことだし……もう自分のことがわからなくて」「まあ、今無自覚に俺もフラれてるんですが、沙織さんのためにならいくらでも都合のいい男になりますよぉ」沙織の戸惑ったような顔から、はっと表情が変わる。「もしかして、瀬名さん……!?」「まあ、もしかしないんですけど。いいんです。お話からして、塔矢さんにも朝霧さんにもこの話と気持ちを打ち明けていないってことですよね? だったら、最初に聞けたのが俺で嬉しいんです」「それでも、私……!」「都合のいい男ってのは、言葉が悪いですね。そーですねぇ、確かに俺は沙織さんのことが好きなんですけど、親友にもなりたいんです。だから、塔矢さんたちに話しにくいけど、男の意見が聞きたい! みたいなときはこうして話してください」きっと、塔矢奏多や朝霧司は、そう割り切って話せるタイプではない。大地の強みは、この軽みだ。沙織と出会って一番、日数が浅い自分。それでも、こうして困りごとを相談されるほどに

  • ダメだし夫からさよならして冷酷社長に溺愛される人生を選びます   第26話 奏多へのプレゼント

    園村エリカにコーヒーをかけられて以来、沙織が調香室を出るときは人がつくことになった。沙織は、必死に辞退したのだが、がんとして奏多が譲らない。しばらくの間だけ、となんとか説得したが、沙織にアイスコーヒーをかけるのは園村エリカくらいだ。沙織を見張るより、エリカを見張ったほうがいいと思う。しかし、沙織以上に奏多が怒っているので、沙織は怒る気が失せてしまった。「手が滑った」を信じるほど愚かではない。しかし、同列でやりあうのもどうかと思っていた。傷ついた様子や、気に病む雰囲気を出せば、エリカの勝ちだ。「こんな感じかな?」残業をしながら、沙織は奏多用の香水の研究をしていた。仕事中の奏多と、沙織といるオフのときの奏多と、雰囲気はかなり違う。沙織の理想では、どちらの奏多でも違和感がないイメージの香水だ。強さをレザーで、柔らかさをラベンダーで、紳士的なところをモスで。香水業界で、ラベンダーの香水は、実際少ない。ムスク、ローズ、バニラ、などの主軸は山のようにあるが、ラベンダーはひとつ間違えると消臭剤になりかねないので、バランスが難しいのだ。男らしく、それでいてツンツンしすぎない香りを作っていく。一つの香水をとっても、着用者の肌タイプで香りは自在に変化する。奏多は、沙織の作品を愛用しているので、沙織は奏多の肌タイプを完全に把握していた。「あとは、寝かせるだけか……」作りたての香りは、調和するまで落ち着かない。スマホにはロックしてあるが、調香ノートにもロックしてある。普段なら、パソコンにもデータを同期させているが、これは商業用ではない。パソコンには入れずに、完成させた香りを冷暗所に寝かせた。 「でも、これは誕生日パーティーに渡す、誕生日プレゼントだし……ネックレスのお礼は別の方がいいのかも?」朝霧司と、瀬名大地には、副調香師になった沙織へのプレゼントの返礼をしてある。「あっ……二個作ればいいか! ラベンダー香水と合わせると、更に完成する寝香水にして……!」香水好きには、風呂香水や寝香水と呼ばれるものがある。風

  • ダメだし夫からさよならして冷酷社長に溺愛される人生を選びます   第25話 混乱する心

    ――なぜか、ドキドキしてしまった。沙織は、結局タクシーに乗らずにトボトボと帰り道を歩く。朝霧司との水族館は、とても楽しかった。まるで、大学時代に戻ったような気がした。それでも、あの時に感じた司からの熱。――向き合って答えを出しなさい。母からの言葉が、響く。それでも、高山隼人から受けた傷が遠く響く。4年一緒にいて、簡単に物のように捨てられた。まだ、男という生き物について信じることが怖い。***「プレゼントありがとうございます、香水のサンプル入れと万年筆、めっちゃ使いますよ」「喜んでくれてありがとう……その、瀬名さん。ちょっとお話が」疲れて、風呂あがりにぼうっとしていた沙織の元に瀬名大地から電話が入る。奏多の態度、司からのアプローチを相談しかけると、慌てたように大地に遮られた。「ちょ、ちょっと待ってください! こういうことは、会って話しませんか?」聞き上手な大地に甘えそうになったが、日程をのばすとノーマン・ギゼル氏の仕事と被ってしまう。「じゃあ、この日の夜か、こっちの日に……」大地はすぐに予定を合わせてくれた。こんなに突然の話でも、嫌な顔ひとつしない。――彼女とかは、いないのかな。考えたが、今聞くことはしなかった。***翌朝、塔矢奏多のところにおもむくと、キッチンから甘い香りがした。今日は、奏多がフレンチトーストを焼いてくれたらしい。今までは沙織が作っていたが、奏多の腕前は上がっている。少し焦げていたが、フレンチトーストはしっかり乳液に浸っていて甘かった。お腹いっぱいになった沙織の顔を覗き込む奏多の顔に、昨日の不機嫌さはない。――もしかして、気にしすぎたのかな。「気に入ったのなら、明日も焼こうか?」「毎日はさすがに……ね? そういえば奏多のキッチンにホットサンドメーカーがあったよね。明日はそれで何か焼こうか」「そんなもの、あったか? やり方を覚えたら、また俺のレパートリーが増えるな」笑った顔が、子供時

  • ダメだし夫からさよならして冷酷社長に溺愛される人生を選びます   第24話 水族館デート

    「……出かけるのか?」沙織が玄関を開けたのと、チャイムが鳴るのは同時だった。ちょうど、塔矢奏多が沙織の部屋を訪れた時にドアを開けてしまったようだ。「うん、ちょっと水族館に」「――ひとりで?」「司くんに誘われて……」奏多の切れ長の目が、一瞬大きく広がった。舌打ちこそしなかったものの、整った眉が下がる。幼馴染でなくとも、奏多の機嫌が悪くなったのは明らかだ。奏多のほうは、沙織を映画に誘おうと沙織好みの映画を予約してしまったところだ。チケット代は惜しくないが、おしゃれした沙織が朝霧司と出かけると思うと不快だ。 ***「気を付けろよ」複数の意味で、よくよく念押しした奏多は沙織を見送った。何か包みを持っているのも、正直気になった。食事のときに、副調香師になって司と瀬野大地からもプレゼントを貰ったと言っていた。――まさか、朝霧が本命か?嫉妬する権利はないと分かっていて、奏多の心は焼き焦げた。沙織の心が欲しい。沙織の笑顔が欲しい。毎日食事をしていて、出社と退社も一緒。充分、沙織の近くにいることは分かっている。それでも、心の底から沙織が欲しかった。他の誰にもやりたくない。この望みが叶うのなら、喜んで会社を捨ててもいい。ステータスも、なにもいらない。どうしたら、この望みは叶うのだろう。****「ごめんね、お待たせ」水族館の前で、沙織は司と合流した。羨望の視線が、ちくちくと沙織を刺す。スタイルがよく、知性的な面差しの司はそれなりに目立つ。女性から品定めのような目線を浴びて、沙織は苦笑する。奏多といるときは、もっと激しい視線がくる。そういえば、瀬名大地も系統が違うイケメンだ。見栄えのいい相手といると、それに慣れてしまう。「待っていませんよ、時間通りです。僕が少し早すぎたようです」にこり、と司が笑む。「荷物、持ちましょうか?」「あ、これは……その、大丈夫

  • ダメだし夫からさよならして冷酷社長に溺愛される人生を選びます   第23話 出してしまった100万円

    「だからさ、姉さんはお金があるんだろ? うちに投資してくれれば倍になってかえってくるんだから、なんで躊躇うんだよ。借りるんじゃない。増やしてあげるっていってんの。わかる? いや、全然わかってない。今すぐ送金してくれればいいのに、何の説明が欲しいの? だから、絶対に儲かるんだって――」 沙織は、思わず弟からの通話を切った。 これで何度目だろう。 家族をブロックすることはためらわれた。 そんなことをすれば、弟は母に泣きつくだろう。 あの口ぶりでは、弟の順一郎は証券会社の仕事がうまくいってないに違いない。 沙織が拒否すれば、母に多額のお金を借りそうで怖い。 「なんで切るんだよ。そんなに常識がなくて仕事できてるの? 嘆かわしいよ、電話の一つでマナーもない姉をもつとさ。ほんとに、よくそんなんでお金が手に入ったね。いい? いくら大金があっても、マナーも守れない人間には持つ資格がないんだよ。そういうところがわかってないから、こうやって自分が説明してあげてるのに――」 「一回だけにして。順一郎の言う通りなら、一回だけ渡すから」 沙織が声を絞り出すと、スマホからは偉そうなため息が聞こえた。 「分かったみたいだね。まあ、任せてよ。すぐに10倍にするからさ。やっと姉さんも世間が分かってきたようだね。こっちがこれだけ説明しても、まだ理解できなかったらどうしようかと思ったよ。そうそう、ある会社がいま美味しくてね――」 沙織は、再度電話を切りたい欲にかられながら、耐えた。 気持ちよく話している順一郎は、そのうち勝手に通話を切る。 過去の経験値で学習している沙織は、順一郎がようやく切った電話に、ほっとした。 順一郎の態度は、沙織の前だけに限らない。 両親のまえでも、このように持論を語り、上から目線でまくしたてる。 沙織は手を出さないと誓った貯金から、言われた口座に100万円を振り込んだ。 奏多が、沙織が離婚した日に渡してくれた大事なお金――100

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status