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第23話 出してしまった100万円

last update publish date: 2026-08-29 15:50:00

「だからさ、姉さんはお金があるんだろ? うちに投資してくれれば倍になってかえってくるんだから、なんで躊躇うんだよ。借りるんじゃない。増やしてあげるっていってんの。わかる? いや、全然わかってない。今すぐ送金してくれればいいのに、何の説明が欲しいの? だから、絶対に儲かるんだって――」

沙織は、思わず弟からの通話を切った。

これで何度目だろう。

家族をブロックすることはためらわれた。

そんなことをすれば、弟は母に泣きつくだろう。

あの口ぶりでは、弟の順一郎は証券会社の仕事がうまくいってないに違いない。

沙織が拒否すれば、母に多額のお金を借りそうで怖い。

「なんで切るんだよ。そんなに常識がなくて仕事できてるの? 嘆かわしいよ、電話の一つでマナーもない姉をもつとさ。ほんとに、よくそんなんでお金が手に入ったね。いい? いくら大金があっても、マナーも守れない人間には持つ資格がないんだよ。そういうところがわかってないから、こうやって自分が説明してあげてる
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    「だからさ、姉さんはお金があるんだろ? うちに投資してくれれば倍になってかえってくるんだから、なんで躊躇うんだよ。借りるんじゃない。増やしてあげるっていってんの。わかる? いや、全然わかってない。今すぐ送金してくれればいいのに、何の説明が欲しいの? だから、絶対に儲かるんだって――」 沙織は、思わず弟からの通話を切った。 これで何度目だろう。 家族をブロックすることはためらわれた。 そんなことをすれば、弟は母に泣きつくだろう。 あの口ぶりでは、弟の順一郎は証券会社の仕事がうまくいってないに違いない。 沙織が拒否すれば、母に多額のお金を借りそうで怖い。 「なんで切るんだよ。そんなに常識がなくて仕事できてるの? 嘆かわしいよ、電話の一つでマナーもない姉をもつとさ。ほんとに、よくそんなんでお金が手に入ったね。いい? いくら大金があっても、マナーも守れない人間には持つ資格がないんだよ。そういうところがわかってないから、こうやって自分が説明してあげてるのに――」 「一回だけにして。順一郎の言う通りなら、一回だけ渡すから」 沙織が声を絞り出すと、スマホからは偉そうなため息が聞こえた。 「分かったみたいだね。まあ、任せてよ。すぐに10倍にするからさ。やっと姉さんも世間が分かってきたようだね。こっちがこれだけ説明しても、まだ理解できなかったらどうしようかと思ったよ。そうそう、ある会社がいま美味しくてね――」 沙織は、再度電話を切りたい欲にかられながら、耐えた。 気持ちよく話している順一郎は、そのうち勝手に通話を切る。 過去の経験値で学習している沙織は、順一郎がようやく切った電話に、ほっとした。 順一郎の態度は、沙織の前だけに限らない。 両親のまえでも、このように持論を語り、上から目線でまくしたてる。 沙織は手を出さないと誓った貯金から、言われた口座に100万円を振り込んだ。 奏多が、沙織が離婚した日に渡してくれた大事なお金――100

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