Share

謝罪と困惑

Author: 一一
last update Last Updated: 2025-08-11 21:00:00

「言い訳にしか〜聞こえないと思うけど〜あの日〜全員の意思で〜滅ぼそうとした訳では無いの〜それを〜知っておいてもらいたくて〜」

そう締め括り、スコルフィオは過去を語り終えた。

彼女にとっても嫌な思い出だったのだろう、そう言い終わった彼女の顔には疲労が見え、苦悶の表情を浮かべている。

だがこの中で一番苦痛を感じているのは間違いなくレイだろう。

そんな彼女は話を聞き終わった後も俯き、その表情は薄紫色の髪に隠れて伺い知れない。

「だから私は〜貴女に敵対しないと誓ってるの〜私も自分の国を守ってるから〜貴女の気持ちは少しは分かってあげられるし〜」

気遣う様な表情を浮かべスコルフィオはレイへと話し掛ける。

その間もレイは無反応だがスコルフィオは構わず続けた。

「だからこそ、あの時貴女達を救えなくて本当にごめんなさい。私の力が足りないばかりに、貴女にはとても辛い過去を背負わせてしまった。謝っても許される事では無いけど、それでもこれが私の本心よ」

口調をものに戻し、椅子から立ち上がり頭を下げるスコルフィオ。

その後に続いて控えていたヴァイスも頭を下げた。

「償いに、貴女の要望を可能な限り叶える事を誓うわ。それだけじゃ許してはもらえないでしょうけど、誠意だけは示しておかないと」

頭を下げ続けるスコルフィオ達だが、レイは一向に反応を見せない。


Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • バケモノが愛したこの世界   謝罪と困惑

    「言い訳にしか〜聞こえないと思うけど〜あの日〜全員の意思で〜滅ぼそうとした訳では無いの〜それを〜知っておいてもらいたくて〜」そう締め括り、スコルフィオは過去を語り終えた。彼女にとっても嫌な思い出だったのだろう、そう言い終わった彼女の顔には疲労が見え、苦悶の表情を浮かべている。だがこの中で一番苦痛を感じているのは間違いなくレイだろう。そんな彼女は話を聞き終わった後も俯き、その表情は薄紫色の髪に隠れて伺い知れない。「だから私は〜貴女に敵対しないと誓ってるの〜私も自分の国を守ってるから〜貴女の気持ちは少しは分かってあげられるし〜」気遣う様な表情を浮かべスコルフィオはレイへと話し掛ける。その間もレイは無反応だがスコルフィオは構わず続けた。「だからこそ、あの時貴女達を救えなくて本当にごめんなさい。私の力が足りないばかりに、貴女にはとても辛い過去を背負わせてしまった。謝っても許される事では無いけど、それでもこれが私の本心よ」口調を本・来・の・ものに戻し、椅子から立ち上がり頭を下げるスコルフィオ。その後に続いて控えていたヴァイスも頭を下げた。「償いに、貴女の要望を可能な限り叶える事を誓うわ。それだけじゃ許してはもらえないでしょうけど、誠意だけは示しておかないと」頭を下げ続けるスコルフィオ達だが、レイは一向に反応を見せない。

  • バケモノが愛したこの世界   あの日の真実

    ここはとある大陸のとある場所。普通の人間なら近寄りすらしない辺鄙な場所である。そして本来そこを使用する者達も、常ならば一年に一度の定例会にしか集まらないのだが、今日に限ってはとある人物の招集により臨時で集まっていた。巨大なテーブルに席が7つ。特に指定は無いのだが、いつもの様にまるで自分の席が決まっているかの如く座る6人。その各席の後ろに控える様に6人が立ち、合計12人がこの場に集っていた。「さて、本日は急な呼び掛けにも関わらずお集まりいただき、誠にありがとうございます」そう言って話し出したのは『傲慢』と呼ばれる男。ここに集う者達は、お互いの本名も素性も知らない者達ばかり。更にそれを探るのも暗黙の了解として禁じられている。故にお互いの事を、自分に冠せられた罪の名で呼び合う事が通例となっていた。「急な招集という事もあり、生憎『憤怒』殿は来られませんでした。なので本来なら次の定例会でお話するべきなのでしょうが、緊急の案件につきこの様に緊急招集という形で…」「『憤怒ヤツ』が来ないなんざいつもの事だろうが。能書きは良いからさっさと用件を話せ」『傲慢』の話を遮り『暴食』と呼ばれる男が口を開く。恐らくこの中で、唯一全員に素性がバレているであろう人物。それ程迄に彼は世界的に有名で、他の素性を隠しているメンバーと比べても異質だった。

  • バケモノが愛したこの世界   登城

    全てが終わりレイ達4人がいつもの宿に戻った時には、太陽が昇り始める時間になっていた。朝日に目を細めると緊張が解れたのか、途端に空腹と眠気がレイを襲う。(そういえばご飯もまだだったわね)仕事終わりの食事をするつもりがここまでの騒動になってしまった事に、つい苦笑してしまうレイ。今すぐにでもベッドに飛び込みたい欲求を堪えて、まずはニイルの部屋でレイとニイルの治療を行う事となった。治療と言っても例の如く、ニイルの用意した魔法薬を飲むだけなのだが。しかしそこで一悶着起きた。ニイルから差し出された魔法薬を見た瞬間、今迄の鬱憤が爆発したのだろう、レイが以前苦言を呈した時以上の怒りでもってニイルに詰め寄ったのだ。「魔力は治癒魔法では回復しないからこれを飲むのは分かるわ。でもいい加減この地獄を何とかしないと耐えられない」と、今迄ニイルに向けた事の無い剣幕でそう告げたのだ。「以前貴方は言ったわね?飲んだ事が無いから分からない、と。なら今すぐ貴方も飲むべきだわ。そうすればいかに貴方が悪逆非道な行いをしてきたのか分かる筈よ」その迫力は、フィオやランシュでさえもレイを止めるのを躊躇わせる程。流石のニイルもその雰囲気に呑まれつつ、抵抗を試みる。「い、いえ…私も飲みたくないから飲まない訳では無く、飲・ん・で・

  • バケモノが愛したこの世界   惑わす者

    「一体…何が起こってるの…?」震える声で囁くレイ。誰かに対して言った言葉では無い。ただひとりでに、無意識の内に出た言葉であった。レイは全てを目撃していた。スコルフィオの周囲に突然現れた騎士達も。その騎士達と戦うマーガも。スコルフィオが燃やされ、しかし何故か死なずにマーガ諸共斬られる所も。そして、意識を取り戻したマーガの首が刎ねられる所も…その全てが、ま・る・で・現・実・の・上・か・ら・重・な・っ・て・流・れ・る・映・像・の・様・に・、半・透・明・

  • バケモノが愛したこの世界   アスモデウス

    「『神性アルカヌム』?それに『惑わす淫魔アスモデウス』って…」聞き慣れない単語を耳にし、1人呟くレイ。だがその圧力プレッシャーはどこか身近で、しかしその何倍も大きくて…「『神性アルカヌム』とは、簡単に説明するならば神性付与ギフトの上位互換です。か・つ・て・存・在・し・た・神の権能、その半分程が人間と混ざり合い新たに名を得たのが『神性アルカヌム』、その保持者達を『神性保持者ファルサ』と呼びます」ニイルの説明に愕然とするレイ。かつてレイが勝てなかったベルリや、序列大会で会ったルヴィーネ、レイが出会い戦った相手はどちらも尋常では無い強さを有していた。しかしその『神性付与保持者セルヴィ』達でさえも、『神性保持者ファルサ』の前では劣るのだという。にわかには信じがたいが、そもそもレイはこの力の事をよく知らない。

  • バケモノが愛したこの世界   夜の女王、その真の力

    土煙の中から姿を現すマーガ。今にも倒れそうな様相で意識も朦朧としているが、その瞳には確たる意志を宿していた。横で倒れているブレイズに目を向けるマーガ。意識は無いが呼吸は辛うじてしている状態だった。しかしその状態も長くは続かないだろう、最早一刻を争う状態であろう事は傍から見ても理解出来た。(魔法障壁のお陰で、何とかお互い一命は取り留めた。敵の増援が来た以上本来なら部下を呼んで撤退するべきなんだろうけど…)周囲に意識を向けるが戦闘の音が全く聞こえない。最後に見たのは部下全員がたった1人を相手に向かって行った時。それから一向に助けに来ないところを見るに、想像したくは無いが全員やられたのだろう。(敵の増援が来た以上、早々にこの場を切り抜けなければならない。僕の魔力ももう空だけど、何とか君だけは逃がしてみせるよ)内心でブレイズに語り掛けるマーガ。彼を喪う事はセストリアの、いや世界にとっての損失だ。それ程この『剣聖』は人類にとっての希望なのである。

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status