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ピロトーク:ピロトークを聴きながら

作者: 相沢蒼依
last update 最終更新日: 2025-08-03 19:02:42

***

「少し落ち着いたみたいだね、良かった――」

 周防が、診察室の隣にある点滴室に顔を出し、涼一の様子を見てくれた。

「混んでるときに、連れ込んで悪かったな」

「なに言ってんの。急患を先に治療するのは、当然の行為だからね」

 言いながら、俺の後頭部を遠慮なく殴りつける。

 ばこんっ!

「痛っ!!」

「ももちん、そんな顔してたら涼一くんが悲しむよ」

 ずばりと指摘されても、落ち込んだ気持ちが、簡単に浮上することは出来なかった。

 周防の病院に、担ぎ込む前に――

「辛そうだな、大丈夫か涼一」

 体温が高いのか、抱きしめた身体からホカホカした熱が、じわじわと伝わってくる。

「辛くないっていったら、ウソになるね。アレが痛いくらいに張り詰めていて」

「そっか……なら俺が抜いてやる」

 辛そうだからと買って出たのだが、途端に顔を赤らめて首をぶんぶん横に振った。

「いっ、いやいや。自分でするからいいよ。やっぱりちょっと、恥ずかしいし……」

「今更、恥ずかしがることないだろう?」

「――見られたくないよ。薬のせいでおかしくなってる、僕の姿なんて……」

 俺の視線を避けるように、そっと長い睫を伏せる。

「……涼一、ごめんな」

 こんなことになったのは、俺のせいだ。鳴海が俺の苦しむ顔を見たいがために、犠牲になったのだから。

「謝らないで。郁也さん、いつも言ってたじゃないか。お前は可愛いんだから、注意しないとなって」

「だけどな――」

「一緒にいると幸せすぎて、注意力が散漫になってたみたい。これからは気をつける……」

 言うなり大きな瞳から、涙を止めどなく溢れさせる。

「ごめ…っ…安心したら急に、涙が止まらなく…なって…」

 涙に濡れる顔を、胸に押しあててやった。

「辛そうなお前の顔、見ていられない…っ、涼一」

 普段、こんなふうに泣くヤツじゃないからこそ、胸の痛みが半端なかった。震えまくる身体を、ぎゅっと抱きしめる。

「やっぱ俺がする。まかせてくれないか? 辛い状態をなんとかして、解放させてやりたいんだ」

「……郁也さん」

「愛してる、涼一……」

 涙に濡れている頬に口づけしてから、いたわるようにそっと唇を重ねる。キスをしながら下着と一緒に、ジーパンを下ろしてやり、涼一自身を扱き始めた。

「んんっ…はぁあはぁ……も、イきそぅ……」

 いつもより早い――やっぱ、薬の影響だろうか
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  • ピロトークを聞きながら   ピロトーク:ピロトークを聴きながら⑥

    ***「小田桐さんにお大事にって、伝えてください」 2時間ほど勉強を見てやった後、太郎は一言そう呟き帰って行った。多分周防に、様子を見て来いと言われたに違いない。 涼一の今の状態――ひとりじゃ外にも出られなくて不安が募り、眠れないからと代わりに周防の病院へ行き、睡眠導入剤を貰ってきた。それを服用しても、やっぱり途中でうなされて起きてしまっていた。 そんな夢うつつの状態が、しばらく続いてるゆえに、身体の調子がいいワケがない。 気遣いながら様子を窺う俺に、ますます気落ちする涼一。「こんな生活、したくはないだろうに」 すべては、俺の采配ミスから起こったこと。元の状態に戻るまで、しっかりと面倒を見る、決心がついていた。 ノックしてから涼一の部屋を覗くと、窓ガラスにもたれかかったまま寝落ちしていた。少しでも良質の睡眠がとれたら……そっと近づいて抱き上げると、ベッドの上に横たえさせる。「う……?」「悪い、起こしちゃったか」 ベッドの脇に跪いて、涼一の頭を撫でてやった。「郁也さん――」「なんだ?」「僕明日、実家に帰るよ」 唐突な言葉に驚きしかなくて、ぽかんと口が開けっ放しになる。「これ以上、郁也さんに迷惑をかけたくない。いつ治るか分からない僕に、ずっと付っきりで、仕事復帰の目処もたたないでしょ」「そんな……俺はただ」「だったら、さよならしようよ。自由になって、郁也さん」 目を細めて、ふわりと笑ってるのにその瞳からは、一筋の涙が零れ落ちた。「……自由って、なんだ――」 声が掠れてしまう。涼一の心が、さっぱりわからない。「自由は自由だよ。僕みたいなのに構ってないで、いつも通りきびきびと、仕事してほしいんだ。仕事をしてる郁也さん、すっごくカッコいいんだから」 さよならなんて言葉を使っておいて、それはないだろ。「バカ野郎っ!! 自由なんてクソくらえだっ!」「っ……郁也さん?」 細い身体を、ぎゅっと抱きしめる。「自由なんていらねぇよ。お前がいないんじゃ、なんの意味もなさないんだ。涼一が隣にいて笑ってくれなきゃ、生きる意味なんてないんだぞ!」「だけど……」「今はこんな状態だけど、それでも俺は、ずっと傍にいることができて嬉しいんだ。仕事だって頑張れるのは涼一の作品を、一番に読むことができるからだし――」 そんな大事な作品を他人に任せ

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    *** 自宅に帰って涼一とふたり並んで、カレーの下ごしらえをし、仲良く料理を作った。そして食事中に今後のことについて話し合ったのだが、声色に元気がなく、沈んだままで心配になる。「涼一、仕事のことなんだけどさ。今回は急病ってことで、落とすことにしたから」「落とすなんて、そんな……僕は書けるよ、大丈夫だから」「そんな精神状態じゃ、いいのが書けないって。頼むから、俺の言うことを聞いてくれ」 涼一に向かって、丁寧に頭を下げた。 仕事に対してプライドのあるヤツだからこそ、締め切りギリギリでも意地で最後までやり遂げようとする。そんなガンコさが、今回は仇になってしまうな。「わかった。郁也さん、迷惑かけて本当にゴメンね……」「なに言ってんだ、今回は俺が人選ミスしたんだ。謝るのはこっちだろ?」「でも――」「連載続きで、正直なところ煮詰まってる感じもあったし、ちょうど良かったのかもしれないって。旅行に行ったらもっと、いいネタがあるかもしれないぞ?」 そんなふうに明るく誘ってみたが、涼一は首を縦には振ってくれなかった。 そしてその夜――一緒に寝ると疲れるだろうから、別々のベッドにて就寝。昼間のこともあり、なんとなく寝付けずにいたら。「ううっ…ひっ…ん……っ、くっ……」 苦しそうなうめき声が、涼一の部屋から聞こえてきた。慌てて駆け寄って傍に行き、顔を覗き込んで様子を見ると、夢を見て苦しそうにうなされてるみたいだった。「涼一っ、涼一……大丈夫か?」 抱き起こして身体をぎゅっと抱きしめてやると、ふっと目を覚ます。「……郁也さ……どうして?」「お前、夢を見てうなされていたぞ。怖いものを見たのか?」 落ち着かせるように背中を撫でてやると、俺に体重をかけて、ゆったりともたれかかってくれた。汗でくっついている額の前髪を、そっと撫でてやる。「……昼間の出来事がフラッシュバックして。鳴海さんのセリフが、いちいち頭にこびり付いているんだ。『小田桐センセの壊れて行く様も、ついでに見せてもらうよ。そのキレイな顔がどんなふうになるのか、じっくりと楽しませてもらうから』なぁんていうのも、あったっけ」「やめろよ、そんなの忘れろ……」「ねぇ僕って、フェロモンがだだ漏れしてる?」 自嘲的に笑って俺を見上げた涼一。そんな辛そうな笑み、見たくはない。「男を惑わすフェロモン、だ

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