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18. 深域

Auteur: Mr.Z
last update Dernière mise à jour: 2025-04-08 21:19:43

 全く関係ないと思っていたアイツ。訳の分からない所で繋がっていた存在だった。アイツの中に、俺を形成した一部があるという。

「俺と無関係ではないってことですか?」

「えぇ。だからこそ、唯一親和性の高いあなたの力が必要なの」

 ユエさんはそう言うと、突然何かを出現させた。テーブルにそっと置かれたモノは"白いリボルバー式マグナム"だった。

「そのL.S.ってことは、UnRuleはもう始めてるわね」

「はい」

 俺は"七色蝶の銃"を取り出した。

「⋯⋯やっぱりあなたなのね」

 ユエさんとアオさんが俺をまじまじと見る。

「実はこのUnRule、売る前にロアが未来予測した中にあったものなの。きっとこうなる事も考えていたんでしょう。だから、政府開発と予告しながらも、大勢でかつバレないように水面下でUnRuleを開発した。でも、予想外な事態になったわ」

 ユエさんは"白いマグナム"に軽く手を置くと、

「こんなゲームの物に質量を持たせるなんて事、私たちの知識、いや、AIの知識でも出来ないはずよ。こんなのが出来るのは"他の何か"しか考えられないのよ。その"何か"は、未だに全く分からない」

「んだよそれッ!? 全部総理のしわざじゃないのかよッ!!」

 突然シンヤが声を荒げた。俺も荒げたいくらいだったが、シンヤを落ち着かせて自分も落ち着く。

 "他の何か"とはなんなのか、疑問だけが底を尽きずに増えていく。

「まぁ、この話は一旦この辺にしとこうユエ」

 次はアオさんがL.S.から"真っ黒く細長い剣"を取り出し、テーブルに置いた。

「元々UnRuleというゲームは、人それぞれの武器を使い、敵対するAIのソースコードを書き換えていくゲームなんだ」

「書き換える⋯⋯ですか?」

 首をかしげながら言うユキ。

「ロアの予測にあったこのゲーム。その仕様に従って進めていった結果、ゲーム感覚で非日常を楽しみつつ、自然と人間がAIに対抗できる手段を得られるようになっていたんだよ」

「おぉ~!?」

「シンヤ、ちゃんと分かったのかよ?」

「お、おぉそりゃもちろんよ! つまりは、攻撃しまくりゃ"あのめんどくせえAI共"を倒せるようになるっつう事だろ!?」

「へぇ」

「へぇって、ルイは分からなかったのかよ!? いや~、俺はとうとうお前を超えちまったかぁ!?」

 人がちょっと乗ってやったらこれだ。キレたり陽気になった
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