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last update Dernière mise à jour: 2025-11-18 18:33:20

 これまで自分の居場所の証だったプラスチックのカードが、今はただの無価値なものに見える。業務用スマートフォンと共に、それを机の上に置くと、コトリと乾いた音が会議室に響いた。

(私と会社を繋いでいたものが、一つずつ取り上げられていく……)

「こちらへ」

 担当者に促されて、美桜は自分のハンドバッグだけを手に席を立つ。

 会議室の扉が開くと、オフィスの喧騒が一瞬だけ耳に届き、すぐに静まり返った。キーボードを叩く音も話し声も、全てが止まる。フロア中の視線が、犯罪者のようにセキュリティ担当者に付き添われて歩く彼女に、突き刺さっていた。

 同情、侮蔑、そして下世話な好奇心。彼らの視線は、既にこの話が知れ渡っていると示している。

(いくら何でも早すぎる。翔と河合さんが手を回した?)

 親しかったはずの同僚は、気まずそうに目を逸らす。すれ違った後輩は、憐れむような目をしていた。その全てが、無数の針となって美桜の心を刺す。

(陽斗君がいなくて、よかった……。こんな惨めな姿、彼にだけは見られたくなかった)

 美桜は唇を固く引き結び、背筋だけは必死に伸ばした。うつむけば負けを認めることになる。

 ガラス張りのプロジェクトルームの向こう、自分のデスクが見える。ついさっきまで、そこで未来を描いていたはずなのに、もう二度と戻れない場所になった。

 エレベーターホールへと続く長い廊下の先、ガラス張りの壁の向こうにある営業部のエリアに、翔と玲奈の姿が見えた。彼らはこの光景を見物するために、わざとそこに立っているようだった。

 玲奈は、翔のデスクに気怠そうに腰掛けて、勝ち誇った笑みを隠そうともせずに浮かべている。美桜が通り過ぎるのを待っていたように、彼女は自分の爪を眺めてふっと息を吹きかけた。その仕草の一つひとつが、「あなたの負けよ」と告げている。

 その隣で翔は椅子に深く座り、電話で話しているふりをしていた。彼の視線は一瞬だけ美桜を捉えたが、すぐに興味を失くしたように逸らされる。まるで彼女が存在しないように、手元の資料へと戻された。

 無関心と無視を

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