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第1143話

北野 艾
彼女の心の奥底に、五年間ずっとぽっかりと空いていたあの空洞が、今、痛みを伴うほどの凄まじいスピードで満たされていくのを感じていた。

焦燥と、もう何も失いたくないという痛切な想いが入り混じり、彼女はすべてを投げ出すように、自ら彼に身をすり寄せた。

車窓の外では、初春の夜風がまだ冬の寒さを引きずって吹き荒れている。

しかし、車内という密閉された狭い空間には、二人の熱く交わる吐息だけが充満していた。

それはまるで、暗闇の中を長すぎる時間、別々に彷徨い続けてきた二つの水流が、ようやく同じ湖へと流れ込み、一つに溶け合っていくかのようだった。

彼の口づけには、言葉にできない複雑で重い感情が渦巻いており、次第に激しく、凶暴さを増していった。

詩織が息も絶え絶えになるまで唇を奪い尽くすと、彼はようやくその唇を解放した。

だが今度は、熟れた果実のように真っ赤に染まった彼女の耳たぶへ、そして、細く白く透き通るような肩のラインへと、熱いキスの雨を降らせていく。

詩織はそれに呼応するように顔を仰け反らせ、指先を彼のコートの襟元へと滑り込ませた。彼の首筋の温かい肌に触れる。

夜の闇が視界を奪う
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