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第20話

Author: 北野 艾
海雲が言い終わるや否や、松本さんが母屋から出てきた。その手には、古風で趣のある小箱が大切そうに抱えられている。

表情は喜びに満ちていた。

詩織はその小箱を見つめ、胸の奥がきゅっと酸っぱく、そして苦くなるのを感じた。

松本さんはその小箱を、詩織の前の石卓にことりと置いた。

海雲が口を開く。「柊也の母親から受け継いだものだ。未来の嫁への結納の品だそうだが……そろそろ、お前に渡す頃合いだろう」

傍らで、松本さんが自分のことのように喜んでいる。「まあ、ぼうっとしてないで。開けてごらんなさい!」

詩織はそっと手を伸ばし、上質な木箱の滑らかな表面を撫でた。途端に、喉の奥が詰まるような感覚に襲われる。

これが以前の自分であったなら、きっと心の底から喜んだだろう。

海雲に、ようやく認められた証なのだから。

けれど、今の彼女の胸を満たすのは、喜びではなく、ただどうしようもないほどの無念さだけだった。

詩織は一度、深く息を吸い込むと、その箱を静かに海雲の方へ押し返した。

これまでビジネスの荒波で培ってきたすべてを総動員して、平静を装い、彼女は口を開く。「申し訳ありません。おじさまのお
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