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第331話

Auteur: 北野 艾
あの時、譲の膝の上に座り、首に腕を絡ませて熱いキスを交わしていたのが彼女――神崎美咲だった。

おそらく譲の数あるガールフレンドの一人だと思っていたが、こうしてこの格のパーティーに参加しているところを見ると、ただの遊び相手というわけでもなさそうだ。

志帆もそのあたりを察したのか、柊也の腕を軽く引いた。

「もういいわ、柊也くん。少し疲れちゃった。帰りましょう」

あくまでも寛容で分別のある態度を装って。

柊也はすぐさま険悪な気配を消し、志帆をエスコートして去っていった。

二人がいなくなったのを見計らって、詩織は響太朗に挨拶をするため歩み寄った。美咲の側を通り過ぎる際、つい視線を向けてしまうと、彼女は茶目っ気たっぷりにウインクを返してきた。

詩織が少し呆気にとられていると、そこへ恰幅の良い五十代の男性が現れた。

美咲はすぐさまその男性にすり寄り、猫なで声を出す。

「ダーリン、遅いじゃない。このパーティー退屈すぎて死んじゃいそうだったのよ。もう帰りましょう、疲れちゃった」

「よしよし、悪かったな。お前の言う通りにしよう」男性は目じりを下げ、彼女のご機嫌取りに余念がない様子だ。
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