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第764話

Aвтор: 北野 艾
子供たちのセレモニーも終わり、会場は再び立食パーティーの喧騒に戻った。

詩織は、グラスを片手に近づいてきたある男の顔を見て、一瞬足を止めた。

記憶の奥底で、かすかな錆の味がする。

男は露骨に気まずそうな顔をして、乾杯を促してきた。「江崎社長、お久しぶりですな」

「ええ、本当にお久しぶりです、数馬社長」詩織は完璧なまでの営業スマイルで応じた。

忘れるはずがない。数馬武(かずま たけし)――かつて江ノ本市へ大規模投資を行った本港市の企業のトップだ。

そして、詩織がまだ柊也の秘書だった頃、手酷い屈辱を味わわされた男でもある。

当時、行政主導のプロジェクトで莫大な資金を握っていた数馬に対し、詩織はエイジア社のために何度も頭を下げ、投資の取り付けに奔走した。

だが数馬は、若く美しい詩織を見るなり、下劣な性欲をたぎらせたのだ。

最初は言葉で、目つきで、ねっとりと付き纏った。

詩織がそれをあえて気づかないふりで受け流し続けると、数馬は痺れを切らした。

ある夜の接待で、彼は強引に詩織を個室に連れ込み、力ずくでわがものにしようとしたのだ。

どうせ一介の秘書だ、泣き寝入りするしかな
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