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第715話

Author: アキラ
そう言って、章衡は身を翻して外へと向かった。

章衡の後ろ姿を見て、章何は思わずため息をついた。少し考えて、やはり追いかけた。

「そなたは重傷だ。無理をするな!」

今度は、章衡は章何の手を振り払わなかったが、彼を睨みつけた。「彼女は他に何か言ったか?」

章何はそこで自分の両手が冷たいことを思い出した。だが、気に留めず、ただ「何でもない」と言った。

「まことか?」

「よく行け」

「......見れば分かる、まだたくさん話したな」

だが、章衡がどんなに尋ねても、章何はもう口を開かなかった。

翌日。

喬念は侯爵邸の大門の外に立ち、その大きな扁額を見て、胸に様々な思いが交錯した。

出て行った時、彼女はあの扁額に向かって密かに誓っていた。この生涯二度と戻らないと。

だが今、どれくらい時間が経っただろうか?

深く息を吸い込んだが、胸に広がる言い知れぬ感覚を抑えることはできなかった。

ただ、喬念は思った。彼女が今回戻ってきたのは何殿のためであり、侍医を守るためでもある。きっと祖母上が知ったら、今回だけは許してくれるだろう。

凝霜は喬念の後ろに立っていたが、喬念の緊張を感じ取っていた。思わず小さな声で口を開いた。「お嬢様、恐れることはございませぬ。もし侯爵様がお嬢様を困らせるようなことがあれば、わたくしが真っ先にお止めいたします!」

その言葉を聞き、喬念は振り返って凝霜に優しく微笑んだ。

その時、侯爵邸の大門が開かれ、先ほど取り次ぎに入った門番も出てきて、喬念に恭しく一礼し、笑って言った。「お嬢様、どうぞ」

喬念はそこで凝霜を連れて屋敷の中へ入った。

門番について、広間まで行った。

すると林侯爵が広間を行ったり来たりしているのが見えた。

喬念が来たのを見て、下男が取り次ぐ前に、彼は慌てて迎えに出てきた。

喬念の目の前まで来て、ようやく自分が少し唐突だったことに気づいたかのように、両手を後ろに組み、いくらか気まずそうな笑みを浮かべ、「来たか!」と言った。

喬念は恭しく一礼し、それから林侯爵を見た。「林夫人をお見舞いに参りました」

そう言って、凝霜に前に出るよう合図した。

凝霜は手の中に贈り物の箱を提げ、前に進んで林侯爵に礼をし、言った。「これは御上様が下賜された貴重な薬材でございます。わがお嬢様がわざわざ奥方様のご養生のためにお持ちいた
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