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34話. 帯の裏の焼印

Author: 6jay
last update Petsa ng paglalathala: 2026-11-05 18:08:01

医乃は答えられなかった。

その名は、波嶺郷(はみねごう)の冬、焼け落ちた仮の住まいの前に埋めて来たものであった。

死んだ女医の名を借りて着て以来、誰ひとりその墓を掘り起こさなかった。

塀の際で中宮と呼んでいたこの御方さえも。

袖口を握る手から力が抜け、瞼がふたたび落ち、浅かった息が少しずつ長く伸びていった。

その手を敷布の上に置ききれぬまま、医乃は灯明の芯が尽きるまで座っていた。

寅の刻になる前、伏見がどこで調えたのか、覆いをかけた輿をひとつ、柴の戸の前に寄せた。

宮の西の小さな脇門は、その顔ひとつで音もなく開いた。

***

「昨夜のことは、覚えておらぬ」

煌仁は寝所の褥(しとね)に斜めに凭(もた)れていた。

顔の色は紙のように白く、こちらへ眼差しを向けはしなかった。

返事もせずに押し開いた前襟のなかで、一晩じゅう滲み出た血に無名の布が強張っていた。

水に浸して戻してから、ようやく剥がせた。

「熱(ねつ)がお高うございました。お記憶のおぼろなのも、無理のうございます」

「であろうな」

七針はひとつも破れておらず、赤く腫れた傷の縁にも膿は寄せていなかった。

その上に新しい膏を広げて塗り
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