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第1063話

Author: リンフェイ
唯月は少し考えて言った。「それもそうね。姫華ちゃん、あなたのほうが私よりよく考えているみたい。唯花、今後は姫華ちゃんと協力してしっかりやるのよ」

彼女たち姉妹は、どちらも向上心と野心を持っている。しかし、どこに投資をして稼ぐかということに関しては、姫華のほうがよく理解できているのだろう。なんといっても姫華は商売人家庭である。たとえ豚肉を食べたことがなかったとしても、その豚肉がどこから来てどのように売られるのかなど、その豚肉の販売の流れはよく知っている、といったところだろう。

姫華はその可愛らしい顔をほんのりと赤くして笑って言った。「唯月さん、私もあの日あなた達と一緒に田舎のほうへ行ってみて、使われていない畑があったものだから、それを借りて緑化用の植物や作物を育てたらいいんじゃないかなって、なんとなく思いついただけなんです。

それで先に兄にこのことを話してみました。兄はなかなかいいんじゃないかって言ってくれたんです。私が何に対して投資するかは別に何でもいいって、ただ、私がそれで稼ぐことができるような投資だったら、試してみたらいいよって言ってくれたんです」

姫華は余裕ある様子でこう言った。「まずはやってみましょうよ。やってみてお金が稼げたらそれでいいし、稼げなかったとしても、それは経験として蓄積されるわけだもの。どのみち、土地を借りるくらいのお金なら私も出せることだし。

唯花、夜お宅の結城さんにちょっと話してみて。彼がいけると思ったら、やってみていいと思う。怖がらず積極的にやってみましょ。結城さんはこういった投資に関してはかなりの経験と目利きがあるはずよ」

理仁が結城グループを引き継いでからというもの、グループが行ってきた投資は、すれば当たりで、常にお金が入ってくる状態なのだ。

姫華はよく家で兄から結城理仁の偉業をよく聞いていたのだ。しかし、彼女が理仁のことを好きになってからは、二度と理仁の話題を口にすることはなくなった。

「わかったわ」

唯花は気持ちいい返事をした。

実はそこにいる数人の男たちも聞き耳を立てて、彼女たちが唯花の故郷にある荒れ地に投資し、作物を植えて販売するという計画をこっそりと聞いていたのだった。彼らは口を挟むことはなかったが、理仁しろ悟にしろ、姫華の目の付け所はなかなか良いと思っていた。

姫華自身も言っていたが、現在、どの業界も
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