Se connecter「あなたと咲の争いは、姉妹間での争いであって、柴尾家の問題でしょう。結城家のあの女がいくら他人のことに首を突っ込むのが好きでも、まさかあなた達姉妹間のことにまで口を出してくることはないはず」鈴はやはり奥歯を噛みしめて悔しそうにしていた。「じゃ、あの女がのうのうと好きに生きているのを見ていろって言うんですか?あいつの幸せは、私の苦痛の上に成り立ってるっていうのに!」「でも私たちに一体何ができる?今の私たちのこの状況で、彼女にどう対抗できるって言うの?あなただって自分の家にすら入れないのよ。それでどうやって結城家の若奥様とやり合うのか教えてよ」鈴は言葉を出せなかった。鈴は助けてくれる人がいると言いたかった。でも、河野夫人から二人が協力し合うことは他言無用だと言われたのを思い出した。だから鈴は言わずに耐えた。今、鈴は河野夫人からの信頼を得られていない。鈴が柴尾家を無事に取り返すことができれば、協力するかどうか決定すると言われている。「鈴ちゃん、私たちも本当に相手をやみくもに持ち上げてるわけじゃないよ。現実問題そうなの。まずは柴尾家を奪い返すことに専念すべきだわ。それから、私たちはあなたと一緒に会社の経営をして、柴尾家の勢力を拡大するの。柴尾家が強くなり、実力と権力を取り戻したら、復讐したって遅くはないんだから」「そうそう、急いては事を仕損じるって言うしね」鈴はつらそうな顔をして言った。「朱美おばさん、樹里おばさん、わかりました。私は以前みたいに後先考えずに衝動でつっ走るような人間ではないんです。刑務所ではこれでもかって苦しみましたから、もう昔の猪突猛進でわがままで、偉そうだった自分ではありません。ところで、従兄弟たちはいつ帰ってくるんですか?彼らにも会おうと思って今日は来たんですよ。彼らに頼んで、あのクソ犬どもを殺してもらおうと思って。そうしないと中に入れないから。私の携帯も、銀行カードも、諸々貴重な物は全部家にあります。家に入れれば、全部取り返せます。あのめくらに結城家の御曹司がついていたって、なんだっていうんです?この私があんな目の見えないクズ女に負けるわけないわ!」昔からいじめる側はずっと鈴のほうだった。目の見えない人間相手に勝てないというのなら、河野夫人はきっと協力してくれないだろう。外の勢力が手
おばの話を聞いて、鈴は少し驚いてから口を開いた。「家には帰ってみましたけど、中には入れませんでした。うちの使用人は全員あのめくらが新しい人に変えてしまってたんです。それだけじゃなく、家には四匹の凶暴そうな犬まで飼っているんです。門をよじ登ろうと思ったけど、その犬に噛みつかれそうになっちゃって、驚いて急いで逃げてきました。あの女はいつもどおりって感じでしたけど……家にいる時には自由に動き回れていたから、目が見えてるのか見えないのかは判断ができません。門を開けろって要求したら、目が見えないから開けられないとかなんとか言われちゃって。きっとまだ完全には目が治っていないんでしょうね」鈴は続けた。「裕子おばさんがあの女をあちこち医者に連れていって、十年の長い時間をかけても治らなかったんですよ。その桐生家のなんたらって医者は目を治せるんですかね?なにが名医の弟子ですか。それはその人を大袈裟に周りが言ってるだけですよ。本当に名医がいても、結局は私たちと同じ人間です。神様なんかじゃない。あんなに多くの医者でもあいつの目を治すことができなかったんだから、きっと一生見えるようになることはないはずです。それに、目が見えるようになったとして、どうなるっていうんです?あいつは結城辰巳と結婚しても子供は産めません。お母さんが、あの女は不妊なんだって教えてくれたんです。子供を期待している家にしてみれば、嫁が不妊だなんて知ったら、結局は離婚させられますよ」朱美と樹里は互いに目を合わせていた。そして、樹里が鈴に尋ねた。「お母さんはどうして咲が不妊だって知ってるんだい?」咲も今まで結婚したことはないし、子供ができるかどうかなんてわからないはずだろう?「私だってわかりません。一度あの女のせいですっごく腹が立って、お母さんに泣きついたことがあるんです。その時に、教えてくれただけで、どうしてお母さんがそんなことを知っているのか、理由を教えてくれてないからわからないんです。でも、お母さんが咲は子供は産めないって言ってたから、それは間違いないでしょう。母親だからこそわかることがあるんじゃないですか?」朱美が言った。「もし、咲の体に問題があって、将来嫁いでも子供が産めなかったら、絶対に結城家から追い出されるに決まってる。ほら、あの唯花とかいう結城社長と運
とある借りアパートの部屋で、咲の二人のおばが木製の古いソファに座っていた。そして鈴が椅子に座っている。彼女たちの前にはこれもまた古い木製のテーブルがあり、その上には、まずそうなりんごが置いてあった。朱美は申し訳なさそうに姪に言った。「鈴ちゃん、今私はこんなひどいところに住んでいるのよ。気にしないでね。私は今人から紹介してもらって、ホテルの清掃員をしているんだけど、お給料はまあまあ。だけど、一カ月に十万もあればいいほうなの。あなたが予定より早く出てこられて、おばさんも嬉しいわ。でもね、お金の援助をしてあげることはできないから、許してね」樹里もつらそうな表情をして言った。「鈴ちゃん、私は昔からあなたをとっても可愛がっていたでしょう?だけど、私たちはあなたのあのひどい姉にこんな目に遭わされちゃって持ち家すらも手放すことになった。家族で部屋を借りて暮らすしかなくなったのよ。私と姉さんはもうこの年だから掃除のおばさんになるくらいしか仕事がなくて、生活費をどうにか稼いでるくらいよ。あなたを助けたいと思っても、本当に力になれないのよ」そして話題を変えて、今度は憎たらしそうに咲を罵り始めた。「これも全部あの悪魔みたいなめくらのせいよ。結城家の力を借りて、一切容赦なく私たちを苦しめ、復讐をしてきたの。確かに彼女には申し訳ないことをしたけど、それでも怪我なんてさせてないでしょう?」尾崎家と黒川家は咲を誘拐しようと企んだが、結局咲に気づかれてしまい、偶然居合わせた唯花が余計な邪魔をしてきたことで、彼らの陰謀は失敗に終わってしまった。その後は辰巳からの報復を受けることになり、両家のビジネスは完全に終わり、借金まで抱えることになった。それで家も車も贅沢品も売り払ってやっと借金の返済ができたのだ。それから彼らは星城の最も端にある、辺鄙な田舎町に何十年も前に建てられた古アパートで暮らすしかなくなった。ここに部屋を借りて一カ月の家賃と水光熱費も六万近くかかっている。以前、二万円など彼女たちにとっては大した金額ではなかった。それが今、六万円ともなると、何日も必死に働いてやっと稼げる金額だ。それに今住んでいる最も安い部屋でさえも、そう長くは暮らしていけないだろう。数十年前の建物で、災害時には危険がつきものだから、大家もそろそろ壊そうと考えているら
「お母さん、その黛当主は私達に何かしてくるかな?お母さんとお父さんはできるだけ外出を避けたほうがいいと思う」姫華は心配して言った。母親が口を開いて何かを言うまえに、姫華がまた強気で言った。「でも、星城にいる限り彼女なんて怖がる必要ないわ。彼女が何かする勇気はないはずよ。あちらは勝手に星城に来たけど、もし何かする気なら簡単に帰らせはしないから」すると詩乃は言った。「安心して、表立って彼女が何かすることはないわ。でも、裏でこそこそと何もしないなんてことはありえない。昔の私はまだ小さかったから、彼女の性格なんてまったく理解できていなかった。今日彼女と会ってから、どんな人間なのかだいたい掴めたわ」「おばあちゃんの死?」姫華は母親を見つめた。詩乃は言った。「いつかは必ず真相は明らかになるって私は信じているの。姫華、この件はあなたは関わらなくていいから。あなたは自分の会社のことにだけ集中して、桐生さんと楽しくデートしているだけでいいから。ここの家の工事が終わったら、あなた達二人は結婚のことを進めればいいからね。二人とも、子供じゃないんだし、自分たちで決めなさい」初孫が生まれた詩乃は、孫が可愛くてたまらなかったのだろう、今は姫華と善の結婚を急かすようになっている。善は詩乃に温かいお茶を入れてもってきて、詩乃の話を聞くと、微笑んでその言葉に答えた。「おば様、僕と姫華さんは年内の結婚は予定していません。この家は中も外も全部リフォーム工事をしていて、敷地もかなり広いから、そんなに早く終われないでしょう。早くて、一月から二月といったところです。その頃に結婚するのは、唯花さんもまだ妊娠中で僕たちの結婚式に参加するのはあまり良くないと思います。姫華さんは彼女と仲が良いですから、絶対に参加してほしいらしいんですよ。仲が良い親友たちには全員参加してもらいたいんですよね。だから、姫華さんとも相談して、明凛さんと唯花さんが出産を終えてから、結婚式をしようと考えています」詩乃は善を見て、また自分の娘に視線を向けてから言った。「あなた達二人の結婚だから、自分たちで考えて決めたらいいのよ。お母さんもあなたがお嫁に行く前にしっかり準備しておくから」姫華は顔を赤くして言った。「お母さんったら、私も別に急いで結婚したいなんて言ってないん
「それもいいね」航は自ら和子が持ってきた物を持って外に出て、ゴミ捨て場に持って行った。詩乃は将来は娘の家にもなる隣の善の家に行った。内装業者から神崎夫人が来たと教えられ、善と姫華は急いで裏庭から出てきた。二人はさっき裏庭の工事の状況を確認していた。「お母さん」「おば様、いらしたんですね」姫華と善が前後で詩乃に挨拶をした。姫華は母親のもとに駆け寄ると、嬉しそうに腕に手を絡めた。そして笑顔で言った。「お母さん、やっとここを見にきてくれたのね」詩乃は娘の額を軽くつっついて言った。「そんなに嬉しいの?」桐生家の家族も熱心な態度を示し、弦とのあれこれもあったことで、詩乃は最終的に善と姫華の結婚を許した。だから、二人がいつ結婚しても構わない。詩乃はもう邪魔することはないのだ。善は星城に持ち家が二つある。そのうち一つがここ、神崎邸の隣だ。善は星城で長期的に働く予定だから、姫華が結婚してからも星城で暮らすことが多くなる。詩乃が娘に会いたいならいつでも会うことができる。それに、姫華はこの年齢になってやっと好きな人ができた。最初に好きになったのは理仁で、その後は善だ。理仁は姫華を嫌っていて、今は唯花の夫だ。あの夫婦はとて仲が良く、唯花も妊娠中だから、姫華が理仁への気持ちを引きずることはありえない。詩乃は娘がまともな考えを持っていることでホッとした。理仁が既婚者であると知るとすぐに姫華は身を引いた。理仁への気持ちはスッパリ切って、つきまとうことなどなかった。そして次に好きになった善との仲を認めなかったら、娘は一生結婚しないのではないかと詩乃は心配した。娘が一生独身でいるのと、桐生家に嫁に行かせるのとでは、詩乃は後者を選んだ。「もちろん、とっても嬉しいわ。お母さん、もう少ししたら理紗さんのところにまた行くでしょ、私にも声をかけてね、甥っ子に会いたいもの」詩乃は笑って言った。「玲凰が夜は来なくていいって言ってたわよ。理紗さんのお母様が来られるんだって。理紗さんも明後日には退院できるそうだから、それからは毎日甥っ子に会えるでしょ」詩乃も孫に会いたくてたまらかった。「理紗さんのお母様が来ても、私たちが赤ちゃんに会いに行ったっていいじゃないの。お兄ちゃんが帰れって私たちを急かしたじゃない?そうじゃなかっ
「黛当主、他に何もないのであれば、どうぞお帰りください。私は孫の様子を見に行くつもりですので」詩乃は和子と余計な話をするのが面倒で、直接帰れと言うと、立ち上がり見送る姿勢を見せた。そう言われてしまえば、いくら面の皮が厚くとも、和子はここに留まることができなかった。和子は神崎家に来たら、詩乃からきちんともてなしを受けるものだとばかり思っていた。しかし、過去自分がしたことに対して詩乃は証拠はないが、よくわかっていることだから、そのまま追い出されなかっただけでもマシだと言えるだろう。和子もまた毅然とした態度を貫いていた。しかし、和子と詩乃、それから唯月、唯花姉妹は普通の親戚としての付き合いなどできはしない。詩乃は心の中で、和子が両親を殺害した犯人だと確信していた。和子は立ち上がって言った。「私はあと数日したら柏浜に帰る予定です。詩乃ちゃん、お孫さんの一カ月祝いの時には、連絡してちょうだい。お祝いにまたこちらへ伺います」「どうぞお帰りください!」詩乃は和子が一カ月祝いに来ると言ったことには返事をしなかった。和子はじっと詩乃を見つめ、それから航に会釈した。この姪の夫の家庭内での地位は、きっと自分の夫と同様だろうと和子は思った。彼ら黛一族の女性は夫を尻に敷くほど強い女性ばかりだ。詩乃は和子が持ってきた贈り物を手にとった。彼女一人では持ちきれない量だったので、航がすぐに妻を手伝い、それらを全て和子に返そうとした。「詩乃ちゃん、これはお宅のお嫁さんとお孫さんに買って来たプレゼントですよ。私達は数十年ぶりで、同じ一族としての情は薄いかもしれないけれど、私たちには同じ血が流れているんです。親戚でもあり、私はあなたよりも年上なのだから、その贈り物を拒むだなんて」「どうも、でも、うちに足りないものなどありませんので、どうぞお持ち帰りください。持って帰ってもらえないのなら、ゴミとして処理させていただきます」こんなもの、嫁にも孫にもあげてたまるものか。和子「……」詩乃は和子相手にまったく容赦しなかった。和子は何度か深呼吸し、怒りをどうにか鎮めた。そして穏やかな気持ちをどうにか保ち、詩乃に言った。「詩乃ちゃん、これは私からの贈り物。もうお渡ししたのだから、どう処理しようとあなたの勝手よ」そう言いながら、和子は背を向けて大