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第1284話

Author: リンフェイ
「唯花ちゃん、何か伯母さんに伝えることがあるかしら?」

この時、詩乃は突然唯花にそう尋ねた。

ちょうど姫華と一緒にある動画を見ていた唯花は、伯母からそう尋ねられて、どういう意味なのか理解していない様子で顔をあげて見つめた。「伯母様、伝えたいことですか?」

姫華も動画を見るのをやめて、唯花と同じように母親を見つめた。

「お母さん、私と唯花が進めている事業のこと?契約にはサインしたから、始めているところよ。今は私が経験豊富な農家の方を探しているの、野菜を植えたら、唯花、私たちの出番よ」

現在姫華は事業を進めている段階だが、農地はまだ手入れをしている最中で、種も植えていない。だから今のところ顧客獲得に走ってはいないのだ。

唯花はうなずきながら言った。「明日の夜のパーティーは良いチャンスね」

小松家のおじいさんが開催するパーティーは、実際はビジネスの場でもあるのだ。

詩乃は二人の話を聞いていて、表情を暗くさせていた。

母親のその不機嫌そうな表情を見て、姫華はここでようやく、彼女たちの答えは詩乃の期待したものではないと気づいた。

そして彼女は唯花を突っついた。

そこで唯花もハッと気づき、詩乃に尋ねた。「伯母様、そうじゃなくて、私のおめでたの話ですか?」

「あなた達の事業に関しては、玲凰も結城さんもサポートしているのだから、私は将来性があるし、別に心配することなんてないの。私はもう年を取ったから、心配しているのはあなた達の普段の生活のことよ」

「唯花、ちょっと用事を思い出したから、出かけてくるわね」

姫華はそう言うとすぐに立ち上がり、友達を捨ててさっさと退散してしまった。

そしてドアまで行き、ひとことセリフを残していった。「唯花、安心して、お願いされたことは、しっかりとやっておくからね」

彼女が言っているのは唯月と一緒に車を見に行くその件のことだ。

詩乃「……唯花ちゃん、あの子を見てよ。姫華と昴には本当に困ったものだわ。二十七歳よ、全然焦ってないんだから」

「姫華は焦らなくても大丈夫でしょう」

つまり姫華にはお相手がいるという意味である。

詩乃は少し沈黙してから口を開いた。「桐生家はA市だから、遠すぎるわ。姫華が遠くに行ってしまうのは認められないの。旦那さんにお願いして桐生さんにそれとなく伝えてもらえないかしら。彼には諦めてほしいって。い
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