『パラレル』─ 愛の育み方を間違え相手の気持ちを理解できず、愛を失くした男の物語 ─

『パラレル』─ 愛の育み方を間違え相手の気持ちを理解できず、愛を失くした男の物語 ─

last updateDernière mise à jour : 2026-02-08
Par:  設樂理沙En cours
Langue: Japanese
goodnovel12goodnovel
Notes insuffisantes
67Chapitres
2.2KVues
Lire
Bibliothèque

Partager:  

Report
Overview
Catalog
Scanner le code pour lire sur l'application

由宇子は、2人の子供と夫との4人暮らし。幸せな日々を過ごしていた。 夫の将康は、仕事大好き人間で由宇子の反対をスルーし、会社から転勤を 命じられると迷うことなく、1人嬉々として単身赴任先へと赴く。 将康は、既婚者でありながら、社内社外で非常にモテる男であった。 しかし、彼自身は決して浮気性な人間ではないので、妻の由宇子が心配するようなことは、何もないのだが。 ただ、脇の甘い将康に、近づいてくる独身女性たちがいて、妻が聞いたらば眉を顰めそうなことばかり将康はおこすのだった。 そのような中、由宇子はひょんなことから夫のある胸の内を知ることになり、 絶望する。そして──由宇子は自分を守るために行動を起こすことに。

Voir plus

Chapitre 1

1◇単身赴任

“문채아 씨, 보호자분께는 연락해 보셨어요? 혹시 아직도 연락이 안 되세요...?”

간호사가 물었다. 간호사가 이 질문을 한 지도 벌써 세 번째다.

연락이 닿았다고 말할 수 있으면 참 좋으련만 상대가 전화를 받지 않아 문채아는 여전히 입을 꾹 닫고 있을 수밖에 없었다.

흰색 불빛 아래 문채아는 두 손으로 휴대폰을 꽉 말아쥔 채 고개를 살짝 숙였다.

그저 흰 티에 검은색 슬랙스 차림일 뿐인데도 그녀는 매우 예뻤다. 게다가 지금은 얼굴에 우울함까지 더해져 이제는 아련해 보이기까지 했다.

그 모습에 마음이 약해진 간호사는 부드러운 말투로 다시금 입을 열었다.

“이대로 혼자 집으로 가시게 되면 발목 인대에 무리가 갈 수 있어서 보호자분과 함께 돌아가시는 게 좋아요. 의사 선생님도 꼭 보호자분 오시면 보내드리라고 신신당부하셨어요.”

“...죄송합니다. 많이 바쁜지 연락을 안 받네요.”

문채아는 고개를 더 떨구며 기어들어 갈 것 같은 목소리로 답했다.

몇 시간 전, 그녀는 같은 예술 대학교를 나온 후배들의 부름으로 미술관에서 도와주러 갔다가 한차례 소란을 겪었다.

사건의 발단은 두 명의 아이가 전시품인 조각상을 훼손해서였다. 아이들의 부모님은 애들이 놀다 보면 그럴 수도 있는 거라는 말도 안 되는 얘기를 늘어놓았고 직원들은 무책임한 그들의 태도에 결국 언성을 높이게 되었다.

감정은 점점 더 격해졌고 나중에는 욕설과 물건이 부서지는 소리까지 들리게 되었다.

문채아는 상황이 더 커지기 전에 최대한 중재하려고 했다. 그런데 싸움을 말리려다가 그만 발목을 심하게 다쳐버렸고 피도 철철 흘리게 되었다.

병원으로 이송된 후, 그녀와 비슷하게 다친 사람들은 치료를 받은 다음 금방 집으로 돌아갔지만 그녀는 날이 어두워질 때까지 계속 혼자 병원에 남아 있었다.

“그럼 혹시 남자 친구는 있으세요? 남자 친구분께서 오셔도 돼요.”

간호사의 대안에 문채아의 얼굴은 한층 더 어둡게 가라앉았다. 그녀가 지금껏 전화를 걸어 부르려 했던 사람이 바로 남자 친구였으니까.

어색한 공기가 흐르던 그때, 누군가가 볼륨을 크게 틀어버린 바람에 티비에서 갑자기 아나운서의 목소리가 들려왔다.

“해정 그룹의 박도윤 대표가 여자 친구를 위해 글로리 호텔의 VIP홀을 대관했다고 합니다. 대관한 이유는 여자 친구에게 한정판 크리스탈 구두를 선물해 주기 위해서라고 합니다. 두 사람은 열애 중이 맞다고 인정했으며 3개월 뒤에는 약혼식을 올릴 예정이라는 희소식을 전하기도 했습니다. 박도윤 대표의 여자 친구는 강씨 가문의...”

아나운서의 목소리와 함께 휴대폰 카메라로 찍은 듯한 영상 하나가 띄워졌다. 영상 속에는 화사한 웃음을 짓고 있는 여자와 문채아가 연락이 닿길 바라고 또 바랐던 남자가 있었다.

박도윤은 한쪽 무릎을 꿇은 채 앞에 있는 여자의 발을 잡으며 친히 크리스탈 구두를 신겨주었다.

꼭 자기들만의 세상에 갇히기라도 한 것처럼 두 남녀는 서로만 바라보았다.

뉴스를 확인한 간호사는 잔뜩 부러운 얼굴로 한숨을 내쉬었다.

“부자들은 이벤트도 남다르게 하네요. 가끔 보면 드라마보다 더 드라마 같다니까요? 에휴, 누구는 호텔 VIP홀을 대관해 꽁냥거리고 누구는 늦은 시간까지 병원에서 일이나 하고.”

가뜩이나 통증 때문에 혈색이 안 좋던 문채아의 얼굴이 지금은 완전히 창백해졌다.

잠시 후, 문채아는 결국 절친한 친구인 주연우에게 전화를 걸고서야 병원에서 나올 수 있었다.

주연우는 요즘 전시회 준비 때문에 많이 바쁜 상태였다. 문채아도 그걸 잘 알고 있었기에 할 수 있으면 주연우에게는 연락하고 싶지 않았다.

주연우는 눈가가 빨개진 문채아를 보자마자 그녀를 와락 끌어안았다.

“너는 그런 일이 있었으면 제일 먼저 나한테 연락을 했어야지! 왜 이제야 전화를 한 거야? 아주머니는 뭐래? 또 너 알아서 하래?”

13년 전, 문영란은 재혼한 후 어린 문채아를 데리고 함께 박씨 가문으로 들어갔다. 그리고 그때부터 문채아는 친엄마가 버젓이 살아있는데도 엄마가 없는 애처럼 살게 되었다.

그 이유는 문영란이 박씨 가문 사람이라는 것을 인정받기 위해 모든 신경을 전부 남편과 그 남편의 아들에게만 쏟아부었기 때문이다.

박도윤에게 있어 문영란은 뭐 하나 흠잡을 것 없는 다정한 새엄마였지만 문채아에게는 계모보다 악독한 친엄마였다.

“나 뉴스 봤어.”

주연우가 이를 꽉 깨물었다.

“뭐가 어떻게 된 거야? 박도윤이랑 너, 3년 전부터 사귀고 있었던 거 아니었어?”

문채아가 멈칫했다. 친엄마에 관해 얘기했을 때는 아무렇지도 않았던 입꼬리가 박도윤이라는 이름 석 자가 나온 순간 힘없이 내려갔다.

“그러게. 박도윤 여자 친구는 난데...”

문채아가 박도윤과 처음 만난 건 8살 때였고 박도윤을 좋아하게 된 건 새로운 집에 적응하지 못하고 있던 그녀가 가문 내 괴롭힘에 더 이상 버티지 못하고 가출했을 때였다.

그날 박도윤은 문채아의 이름을 크게 부르며 어두운 길가를 이리저리 뛰어다녔다. 그러다 드디어 그녀를 발견하고는 망설임 없이 품에 끌어안았다.

집으로 돌아가는 길, 그는 문채아를 등에 업은 채 천천히 입을 열었다.

“앞으로는 내가 다 해결해 줄게. 내가 네 곁에 있을게. 그러니까 울지 마.”

다 잠긴 목소리로 이런 말을 건네는데 어떻게 마음이 흔들리지 않을 수 있을까. 문채아는 그때 차갑게 식었던 마음이 다시금 데워지는 것 같았다.

박도윤의 등에 업혔던 그 느낌을 평생 잊지 못할 것 같았다.

하지만 두 사람은 신분 차이가 컸고 대외적으로는 또 오빠와 동생 사이였기에 문채아는 박도윤을 향한 마음을 꼭꼭 숨길 수밖에 없었다.

그런데 문채아가 성인이 되던 해, 둘 사이에 변화가 생겼다.

그날 문채아는 술에 잔뜩 취한 채 박도윤에게 그간 숨겨왔던 마음을 전부 고백하고야 말았다. 그야말로 취중 고백이었다.

당연히 거절당할 거라고 생각했는데 예상외로 박도윤은 흔쾌히 그 고백을 받아줬고 그녀의 남자 친구가 되어주겠다고 했다.

다만 두 사람의 사랑을 지키기 위해 당분간은 가족을 포함한 모든 사람에게 비밀로 하자고 했다.

문채아는 그 말에 조금의 망설임도 없이 환한 얼굴로 알겠다고 했다.

박도윤과 함께 사랑을 키워나가다 보면 언젠가는 가족에게도 인정받고 사람들 앞에서도 당당하게 사귄다고 얘기할 수 있을 거라고 생각했으니까.

하지만 세상일은 그녀가 원하는 대로 흘러가지 않았다.

3년이라는 시간을 함께했는데 기다림의 끝에 얻게 된 건 박도윤의 곁에 있어도 된다는 인정이 아닌 박도윤과 다른 여자의 약혼 소식이었다.

...

주연우는 전시회 일로 아직 할 일이 많았기에 문채아를 집까지 데려다준 후 금방 다시 작업실로 돌아갔다.

문채아가 집으로 들어와 보니 도우미들이 신이 나서 떠들고 있는 것이 보였다. 박도윤의 약혼 얘기가 뉴스에까지 보도되었으니 시끌벅적할 만도 했다.

도우미들 중에는 약혼녀가 강씨 가문 사람이면 약혼식은 물론이고 결혼식까지 성대하게 할 게 분명하다며 자기 일처럼 흥분하는 사람도 있었고 이미 두 사람 사이에 아이가 생긴 건 아니냐며 추측하는 사람도 있었다.

문채아는 주먹을 꽉 말아쥔 채 도우미들 옆을 지나 다리를 절뚝이며 계단을 올랐다.

지금은 그냥 한시라도 빨리 방으로 들어가 침대에 눕고 싶은 마음밖에 없었다.

하지만 방 앞에 도착해 문을 열었을 때 그녀는 발걸음을 멈출 수밖에 없었다. 웬 불청객 한 명이 그녀의 방 안에 우두커니 서 있었기 때문이다.

Déplier
Chapitre suivant
Télécharger

Dernier chapitre

Plus de chapitres
Pas de commentaire
67
1◇単身赴任
「ねぇ、今度こそ――――  会社から打診されている仕事を受けようかと思ってるんだ」 「打診って……それって強制じゃなかったよね、確か。  別に今まで通り本社での仕事を続けていてもいいんでしょ?   単身赴任しないといけないなんて、私は応援できないわ」  以前にも夫から、一度昇進するためにも単身赴任の仕事を受けてみたいと 聞かされたことがあった。  本当なら子供もまだ未就学なのだから、思い切って子供を連れて 帯同すればいいのかもしれない。  しかし私たち夫婦には、現在、そして夫婦の結婚前からの将来設計などを 鑑みても、夫にくっ付いて行くということは選択肢になく、夫がどうしても その新しい仕事に取り組みたいとなれば、単身赴任は必至だった。  その夫の単身先の仕事というのは、家族にとってものすごく厄介だった。 あちらに居る期間がどれくらいなのか、全く決められていないのだ。 子供を持つ既婚者がするような仕事じゃないわよ全く。  会社も会社よね。  どうして出先に出ないと出世ができないような仕組みにするのか?  社長に文句言ってやりたいくらい。  こんな仕事形態《勤務形態》なので、出世を捨てて安定した家族との生活を 選んでいる社員も少なくはないのだとも、夫からは聞いている。  就職してからすぐに頭角をめきめきと現し、会社に将来を嘱望される ようになった夫は――――。   私と結婚した時には、すでに激務をこよなく愛するモーレツ仕事人間《社員》になっていた。  それでも恋愛中、そして新婚時代、第一子妊娠中、娘が3才になるか ならないかの頃まで……まぁ、第二子出産辺りまでは、それでも土・日は家に 居られるような生活だった。 夫は、娘のことも可愛がってくれたし、家族に目が向いてたように思う。  そんな私たちの結婚生活は、6年が過ぎようとしていた。   
Read More
2◇やるせないため息
 子供たちだってこれから親を親として認識していく年齢だというのに。   たとえ、1年や2年で赴任先から帰って来れたとしても、娘たちが 夫の顔を覚えているかどうか怪しいものだ。 私は自分の父親が所長をしている税理士事務所で働いていて、転勤先に 帯同することは難しい。 仕事がすごく好きで仕事第一人間の夫にしても、月に一度でさえ、こちらに 帰ってくるかどうか怪しいものだ。 もし任期が5年……ううん10年選手もいると聞くし、7年8年となったら 考えるだけでも恐ろしい。 単身赴任が原因で、実際離婚した人も少なくないと聞く。  そして私が思いつく限りの心配事は夫も理解できるはずなのに、 それでも幼子2人と仕事を持っている妻を残して、仕事を優先させたいと そう私に告げているのだ。『仕事と私、どちらが大事?』 などと、恋人同士のような甘ったるいことを問い詰めたりしたいわけじゃ ないけれど、だけどこんな状況で問い詰めない妻が一体何人いるだろうか。 家族と仕事、どちらが大事なの? と、聞くまでもないようだ。  残念なことに……。  夫はすでに答えを出しているのだから。  思いっきり仕事がしたいのだ。  単身で赴任して仕事ができれば、それこそ独身と同じだから、一心不乱に だぁ~い好きな仕事がお腹いっぱいできてあなたは幸せなのよね。  大好きな夫のために…… 愛する夫のために……ここは応援して送り出してあげないと、いけないのよねぇ~っ……。 ぇっ? そうなの?  私は一度もOKしてないというのに…… 『反対だー』と怒ったり、キツイ口調で『止めて欲しい』とも 言わなかったから、夫はもう行く気でいるらしい。    浮かれている。  その様子を横目に、息子を抱いたまま私はそっと『……』と呟き、 やるせないため息をついた。
Read More
3◇不埒な虫
 娘の美誠が3才、息子が生後8か月の頃、私は会社のイベントで バーベキューに参加した。 毎回参加しているわけではなくて、この時は3回めの参加だった。  子連れなので、多少何度か話したことのある水谷あかねという女子社員 が子供を見てくれたり、料理の準備など私のサポートをしてくれた。 彼女は既婚者で子供のいないDinksのキャリアウーマンだそうで このことは、以前参加した時に本人から直に聞いている。 彼女は私より年上で、常識を持ち合わせた安心感のある人だ。  話をしていると分かる。 今回たまたま夫が娘を抱いて離れた場所へ行ったことで、この彼女と ふたりきりになる時間があった。 息子は上手い具合にバギーの中で寝ていた。 私たちは野菜を次々に切っていかなくちゃならなくて、ふたりで 手分けして野菜を洗った。 その時、彼女から次のような言葉を掛けられた。 「由宇子さんも綺麗だからモテるでしょうけれど……」 えーっ、お世辞合戦なの?  お世辞合戦はきらい。 思ってなくても相手のことをいろいろ持ち上げないといけなくなるから。 はっきりいって既婚者で子持ちになってまで、そういうのは 勘弁だなぁ~なんて、思った。  だけどそうじゃなかった……そうじゃなかったのだ。  話は私が想像だにしてなかったことだった。           ◇ ◇ ◇ ◇ 「ご主人の大倉さんも、なかなかモテるみたい」「そうなんですか?」  そっか、まだまだ夫……いけるんだ。  ふ~ん。 「由宇子さん、ごめんなさい。  もったいつけた言い方はもうやめますね。 奥さんを不安にさせたり煽ったり面白半分で言うのじゃないことだけは 最初に言っておきますね。 これから私がお話することはあまり愉快な内容じゃないんです。 今回たまたま奥さんがイベントに参加されたこと…… しかも、私がなんとなく一緒に側でお手伝いするような役回りに なったことで、踏ん切りがつきました。  そう言って彼女は話を続けた。 話すつもりはなかったようだけれど、事件簿が起きてからそんなに日が 過ぎていないことと、今日私が会社のイベントに参加したこと、そして 2人目が生まれていたことなどを知り、本当に迷ったが、話しておくべきか と思ったのだそうだ。
Read More
4◇水谷あかねから、もたらされた情報
 それは夫と部下の男性1人と馬場真莉愛そして水谷あかねとの4人で 出張に2泊3日で行った時のことだという。 話が拗れた場合は宿泊を延長してでも、というほどの大口の取引だった。 そんな中、その日のためにいろいろ準備していたことが実を結び、 予想以上の効果があって2日目で仕事が取れた。  成果があったことと、翌日は会社に行かず各自家に帰っていいという 予定を組んでいたのとで、最後の夜はみんな無礼講でお酒に舌鼓をうち――。 24時近くになってお開きになり、それぞれホテルの部屋に戻ったのだそうだ。 ただ岸谷という男子社員だけは家から緊急の連絡が入り、途中で 帰っていったのだとか。「その夜、私、途中トイレで目が覚めたんです。  そしたら横で寝ているはずの馬場さんがどこにもいなかったんです。 大倉係長の部屋は岸谷さんが一足先に帰っていて、その日の夜大倉係長は 部屋におひとりだったので、まさかと思いながらも気になりました。 ――というのも、日頃から馬場さんは大倉係長のファンを公言してましたので。 女子社員の間では、馬場さんが大倉係長のファンだということは、随分と 知れ渡っています。 あっ、でも大倉さんはいつもささっと上手くかわされていたので、 問題はないのです、と言いたいところなのですが……」「問題が起きたんですか? その日……」 こんな質問したくはなかったけれど、彼女の話を促すには そんな風に聞くしかなくて、問いかけながら少し凹んだ。 「トイレから戻ってベッドに入って10分ぐらいした頃でしょうか、  彼女が部屋に戻ってきました。 私は寝た振りをしました。 彼女も一度は自分のベッドに入り、布団も掛けてそのまま寝たようでした ので、私はそれを確認して再度眠りにつきました。 飲み慣れていないお酒でお腹の調子を悪くしていたのでしょう、 明け方5時少し前にまたトイレに行きたくて私は目が覚めてしまいました。 そしたらまた隣に寝ていたはずの馬場さんがいなくて本当に驚きました。  その後、彼女が部屋に戻ってきたのは結局8時頃になってからでした。 いくらなんでも直截的に大倉さんの部屋にいたのとも追求できなくて 『いままでどこにいたの? あなた夜通しこの部屋にいなかったみたい だけど……』と訊きました。 彼女の返事にもう私ぶった
Read More
5◇夜這い
 じらさないで、早くその先を……と思いつつ、何も言わず水谷さんの 次の言葉を待つ。 信じられないその女は何と? 聞きたくないことを聞かされるのではないかという怖さ、不安を抱え ながら、それでもやっぱり早くその続きを……と私は思ってしまった。           ◇ ◇ ◇ ◇ 「実は大倉さんに夜這いしてたんですぅ。ふふっ。 だけどぅ『お前ここで何やってんだぁ、自分の部屋に戻れ!』って 追い出されたんですよね。 んでぇ、一度はこの部屋に戻って寝ようとしたんですけど 私ぃ、あきらめらんなくてぇ。 だってこんな同じホテルにお泊りできるチャンスは、またあるかもぉ だけど、大倉さんがひとりっていうチャンスは、もう来ないかもしれない じゃないですか。  そう思うと、最後のチャンスなのにこんなに簡単に引き下がれないって 思って、もう一度部屋に入ったんですよ。 そしたら大倉さん可愛い顔して爆睡中でした。  もう嬉しすぎて私……大倉さんの横に入って朝まで一緒の布団で寝てま した。 あ~、あたし めっちゃ幸せ~」(はーと)  「――って馬場さん悪びれもせず、そう言ったんです」「『朝起きた時、大倉係長は何て言ったの、あなたに……』 って、彼女に聞きました」 「あははっ、むちゃくちゃ驚いてましたけど……こういうの 後の祭りっていうの?  あはは、思い出したらまたおかしくなってきちゃったぁ。  『早く自分の部屋に戻れ』って言われました。 ちょっと焦ってたかもぉ。  まぁ、一緒に寝ただけでなんもありませんでしたけどね。 でも、大満足」          ◇ ◇ ◇ ◇ 「馬場さんの話に、私は、もうすごく脱力しました。    何もなかったようなので、逆に私も奥さんにあの日のことを こうやってお話できるんですけどね」  「そんなことがあったんですかぁ~」  何もなかったようだと言われてもなんだかなぁ~、すごく嫌な気持ち。  それはその馬場という人にもだけど、あまりにも無防備な夫に対しても。  夫は確かに悪くないと思う。 据え膳に手も出さなかったわけだし、水谷さんの解釈通りならね。 だけど……だけど、何か釈然としないわ。  もやもや感が半端ない。「まだお話に続きがあるんですけど、大丈夫でしょうか?」  へっ、ま
Read More
6◇水谷あかり、馬場真莉愛との会話を大倉の妻(由宇子)に話す 
   私は引き続き大倉係長の奥さんにあの日のことを伝えるために、話を続けた。          ◇ ◇ ◇ ◇ 真莉愛と私は背中合わせで座っている。   広いオフィスの中―――― メインが内勤の私たちは、営業の人たちが出払うと、時々2人きりになる ときがある。 2人きりと言っても厳密には違うけれど。  ……というのも離れたシマにはパラパラと人がいるから。 ただし内緒話が届かないくらいは離れているので、 そういう意味でふたりきりの時があるのだ。 そんな風に周りに人がいなかった日のこと。           ◇ ◇ ◇ ◇ 「ねぇねぇ、水谷さんっ、すごいもの見せてあげましょうか」 「すごいもの? なぁ~に?」  この子の言うすごいものって、何だろう。 頭のネジが1本抜けてる子の言うすごいものって……怖過ぎる。 何って一応訊いてはみたけど、見たくないよねぇ~できるものならば。 前々からちょい変なヤツ認定はしていたけれど、この間の大倉係長に夜這 いをかけた発言以来、さらに私にとって彼女は、要注意人物になっている。 正直なところ、こんなやつと2度と一緒の出張なんてごめんだ。 「わたしぃ、ブログやってるんですけどぉ~もう我慢できなくてぇ~」 我慢出来ないことが多過ぎやしないかっ……。 「……」  「ついにブログにYoutubeをupしちゃいました」 「それって動画のことよね?」 「ふふっ、今ブログのページ開けてるので見てみませんか。  これこれっ!」 「何これ……この映像あなたが撮ったの?」 「ふふっ、内緒ですよ? シーっ!」 「シーって、シーって……こんなものを、公のYoutubeにuoloadするなんて だめだよ、真莉愛ぁ」 「すぐ消しますってば、水谷さんや親しい人にだけですよ。  見せたらすぐっ消すつもりぃ」  「それにしてもたくさんよく撮れたわね」「えへへっ、愛ですよっ……愛Love」 「あなた、こんなに何度も大倉係長が残業してた時に一緒にいたのね。 それもびっくりだわ。  いつの間に。 ねっ、悪いこと言わないから早く削除しなさい。 あなたは気にしてないけど、大倉さんや奥さんが見たら不快なものだよ? それに周りの見た人たちに誤解を招くと思うわ」*「水谷さんってばぁ、真面目に捉え
Read More
7 ◇Youtubeの中のふたり
「大倉さんってばぁ、酷い人ですね」「なんだよ、いきなり。それよりちゃんと仕事しろっ!  そんで早く帰りなさい」 『大倉係長ってば、逃げてるぅ。かわいいっ!』 「折角私みたいな若くって可愛い女が夜這いしたのに、何でなんですかっ」 「何だっ、そのわけワカメないきなりの質問と罵倒は。  こっちがわけワカメだよっ」 「まぁ、いいですよ。  朝まで一緒の布団で寝られたし……って、 妊娠したから責任とってくださいって言ったらどうします?」 「ブッ。  君の話聞いてると頭痛くなってくるなぁ~もう。  もうね、俺は神や仏の領域に入ってるんだから、妊娠なんて有り得んよ」 「何なんですか、その神仏の領域だんなんだか……っての」 「もうここしばらくSEXしてないし、しなくても済むって話」 「えーっ、ホントですか、それっ」「なんだっ、えらい喰い付がいいんだな。参った……」 「だって、まだ大山さん30代でしょ?  信じられないですもん。  それって奥さんとご無沙汰ってことですよねぇ?」 「まぁね」「それが本当なら奥さん可哀相ぅ~、真莉愛が奥さんだったら泣いちゃう。  ……って、だけど大倉さんのところ最近下にお子さんできてませんでし たっけ? おかしいなぁ~」 「下の子は産まれてもう5ヶ月になるけど、妻が下の子を妊娠してからは 嘘じゃない、一度もないよ」 「育児に忙しい奥さんに拒まれてるんですか?」 「違うよ。誘ってないんだから拒まれるわけないだろ!」「えーっ、酷いっ」 「何がだよ。子供もふたり目出度くできたわけだし、仕事も忙しいし、 妻も小さいのがふたりいるから忙しいだろう。 あちらも何も言ってこないから、俺と同じ気持ちかもしれない。    もう家族なんだよ俺たち。 家族になるとね、そういう気にはならないもんなんだよ。  君も結婚したら分かるよ、俺の言ってる意味が」「あのぉ、私はそんなの分かりたくないですぅ。  でも……家族だからできないっていうのなら、他の女性とは できるんですよね?   じゃあやっぱり私、立候補しまぁ~す」「だめだよ、そんなことしたら立派な不倫だろ?  修羅場はごめんだし、社会的信用をなくすわけにはいかないんだよ俺は。    これから更に仕事に邁進して、力を試してみたいと思ってるからね
Read More
8 ◇看過できないこと
 私は夫の会社のイベントで、顔見知りの社員、水谷あかねから会社での夫の近況の様子などを聞かされた。 どうも夫に付きまとっている女子社員がいるらしく、その彼女の目に余る言動に黙っていられなくなったのだという。 付きまとっている馬場真莉愛という社員が、夫との出張時に自ら起こした出来事と、これまでの残業中にあった彼女と夫との会話をこっそりと録画し、それをYoutubeにuoloadしているというものだ。 私はそれでもなんとかその時は平常心でいられた。 けれどその日、予め用意しておいたのだろうブログアドレスのメモを水谷さんから渡された後では、到底胸のドキドキを止められるはずもなかった。 帰宅した翌日、はやる気持ちを抑えきれない……そんな心持ちで馬場真莉愛のブログを見た。 uploadされていた動画はいくつかあって、馬場真莉愛は水谷女子にはすぐに削除すると言ってたようだが、残っていた。 見たあと、とても平静ではいられなかった。 この日は日曜だったため、日頃の疲れもあってか夫はまだぐっすりと眠っている。 夫が起きてきたら、どんな顔をして会話を交わせばいいのか。 いくつもの動画の中の夫は、いつの時も上手に馬鹿な女の言葉をかわしていた。 だけど、その中にあった動画のひとつは、私にとって人生をかけるほど拘りのあるモノとなった。 到底看過できるものではない。 けれどそれは、夫に面と向かって問い詰められるようなことでもなかった。非常にデリケートな問題だ。 だけど、こんなデリケートな問題を──こともあろうに、あんな鶏頭の女にあっさりと話すなんて。 それは私が最近ずっと気にしていたことでもあったのだ。 そう、私たちは息子が産まれて数ヶ月になるけれど、夫婦生活が一度もなかった。 どうしたの? どうして? 私の子育てがひと段落つくのを待ってるの? 何度も喉から出掛かった言葉。 だけど、真莉愛の作ったという動画の中で、夫ははっきりとその理由《わけ》を語っていた。 もはや、質問する意味はなくなった。 私のことは、もう性愛の対象ではない……と夫は言い切っている。 そんな夫に一体、私から何ができるのか。 まだこんなに若いのに? 悶々と誰にも言えない問題を抱えて、この先夫婦でいられるのか? 予想だにしてなかった展開に……
Read More
9 ◇大切なこと
 どうしてこんなことに……。  夫の考えが理解できなかった。          ◇ ◇ ◇ ◇  産後のことだった。  1ヶ月里帰りをした時のこと。   父親が病院まで迎えにきてくれて、母があれこれ準備してくれて待っている 実家に向かう道すがらの、車の中でのこと。 カーラジオからたまたま流れていた夫婦のSEXの話。 はっきり覚えているのは、子供を何人か産んだあと、もっともっと 夫婦のSEXは良いものになると医師と誰だかが薀蓄を垂れていた。  はしたないかもしれないが、私は夫婦の営みは嫌いじゃない。 そして肌と肌の触れ合いも、夫婦にとっては大切なモノだと 思っている。 そんな私だから……実は産後の夫婦生活を逆に楽しみに していたほどなのだ。 女性によっては、逆に夫と同じような理由とか、産後特に身体に 触れられるのが嫌になったとかっていう人も中にはいるらしいけれど。  私は違った。  それはそれは楽しみにしていたのだ。 またレスのままだと、夫の浮気の心配も出てくる。  そういった疑ったりすることも嫌だ。  このまま一生レスであるとするなら、夫の浮気もずっと気に掛けて 暮らしていかなければならないだろう。 そんな風に考えながら、私はこうも思った。  真莉愛は鶏頭のいかれた女だが、いい仕事をしてくれたのかも しれない……と。  真莉愛が、夫から本心を引き出してくれていなければ、きっと私は延々と その思いを知らずに暮らしていたのかもしれないから。  そうだよ、悲しいことだけど真実を知ることは…… 現実を見ることは……大事だ。  そしてこの一連の出来事を知った日から2ヶ月後に、由宇子は、夫の将康 から単身赴任の話を聞かされたのだった。  
Read More
10 ◇単身赴任のリスク
 もともと自分には伸び代があって、どこまでやれるか試してみたいと夫は言う。 そして、赴任後こちらへ戻ってきた時には、年収がざっと今の2倍くらいにはなるのだからと……。 収入のことも理由のひとつであることは否めないと言う。 目をキラキラと輝かせて新天地での仕事のことを語る夫を見ていると、強く反対することもできなかったというか……何よりこれまでの私たち夫婦の関係を鑑みて、反対する気になれなかったと言ったほうが正しいかもしれない。 考えるところがあり、私は夫に言った。「単身赴任って、リスクがあるよね?」「例えば?」「浮気に走る男性《ひと》が多いって聞くわ。 お互いに浮気したら離婚っていうのは結婚する時に誓ってるけど、これからあなた単身赴任するわけで、実際リスクが大きくなると思うのね。 その時に揉めるの嫌だから、離婚届けを先に書いておいてほしいの」 そう言って前もって用意しておいた緑の紙を夫に渡した。「分かった。 単身先へ行くまでに書かないといけない欄を埋めて君に渡すよ。 俺は平気だよ? 君にこの届けを出されない自信があるからね。 仕事がしたくて君や子供たちと離れてまで行くのだから、君以外の女性に余所見したりするはずないだろ? 世間のいい加減な意見に惑わされないでほしいな」 結局単身赴任を許した形になったけれど、最後まで私は賛成するとはひと言も言っていない。 なのにそれでもこの人は行くのだ。 交際している時もプロポーズされてからも、私のことを一番に考えてくれた夫が、今、私の気持ちよりも自分の気持ちを優先させるのを目の当たりにし、私は気付いてしまった。 夫の私への気持ちは、いつの間にか小さなモノになってしまったのだと……。
Read More
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status