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第198話

Author: リンフェイ
九条悟も少し呆気に取られていた。

この上司は彼の前で何度も妻がいることを自慢していたが、あれは全部演技だったというのか?

だけど、結城おばあさんはすでに会社のことは全て孫に任せていて、会社に来ることは稀だ。だから、結城理仁は彼の前でそんな演技をしてみせる必要はないはずだ。

ボケちゃったのか?

まあいい、それは結城理仁のプライベートな事だ。彼は自分でどうにかできるだろう。彼ら親友たちは何か面白いことがあれば、椅子とポップコーンでも持って来て、かたわらでそれを食べながら座って見ていればいいのだ。

何も面白いことがないなら、家に帰って寝るまでだ。

二時間後のこと。

内海唯花は時間を確認し、もう三時になったので親友に言った。「明凛、そろそろ帰ろっか。お姉ちゃんのとこにも行かないといけないから」

「わかったわ」

牧野明凛も時間を見て、親友が帰るというのに何も意見はなかった。「後でちょっとスーパーに行こう。フルーツとおもちゃ二つ買って私もお姉さんの家に一緒に行く。家に帰りたくないのよ。母さんのあの意地悪な継母みたいな顔といったら、帰る気なくすわよ」

内海唯花は笑って言った。「大塚家のパーティーで誰かさんが床に寝ちゃったせいでしょ?あなた自身も恥かいたのに、牧野のおばさんの面子も潰しちゃって。お母様が怒って当然よ」

牧野明凛は自分がやらかした事を思い出し笑って言った。「恥くらいかけばいいのよ。母さんとおばさんに私は大和撫子で優秀な女性だからお妃様にでもなれるっていう妄想を消し去ってもらいましょう。今やあの人たちも大人しくなって、私も静かに過ごせるってもんよ。

「あれ、ねえ唯花、あのテーブルに座ってる三人組、あの人あんたんとこの結城さんじゃないの?」

牧野明凛が立ち上がって結城理仁を見て親友の手をポンポンと叩き内海唯花に確認させようとした。

内海唯花は親友に促されて見てみると、本当に彼女の夫がそこにいた。

「彼だわ」

結城理仁が全身から漂わせるあの冷たく厳しい雰囲気を持っている人間は滅多にお目にかかれない。

内海唯花は一目ですぐ彼だとわかった。

「ちょっと挨拶しに行かなくていい?」

内海唯花はためらって言った。「彼は友達と一緒みたいだし、彼らとは知り合いじゃないわ。声かけるのもあまり良くないんじゃないかな」

実際、結城理仁の友人とは一人も会っ
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