ログイン白山碧のほうはまだマシだ。少なくとも、彼はよく女友達と交流している。遊びに行くのにも数人女友達を連れている。しかし、白山玲は本当に結城社長のせいで道を外してしまった……いくら結城社長がハイスペックな男性であり、星城一の財閥家、結城家出身だとしても、なんだというのだ?同性愛者は今でもやはり世間から受け入れられないことのほうが多いではないか。「まったく何を考えてるんだい?この花は碧君にあげるものじゃないんだ。お兄さんは会社にはいないのか?」奏汰は尋ねた。「彼は出てるのか?」碧は奏汰から手を叩かれても怒ることはなく、わざと奏汰に言った。「毎日兄さんにくっついているけど、まだまだ甘いようですね?兄さんがどこにいるのか知らないなんて。兄さんなら今日は午後ずっと会社にいませんよ。知らなかったんですか?」「……」奏汰は本当に知らなかった。奏汰はただ、玲から夕方迎えに来て、一緒に夜のパーティーに出席してほしいと言われただけだ。玲が今夜出席するのは、柏浜のとある名家の邸宅で行われるもので、ホテルではない。それで奏汰は仕事が一区切りすると、急いでここに来た。しかも、着替えもせずに来た。いや、着替える必要もない。彼は毎日スーツだから、着替えたところで同じくスーツだ。彼のように生まれつきのイケメンは、ラフな格好をしていても、すぐに注目の的になる。「その顔からすると、兄さんからは何も聞いてないみたいですね。へへ、奏汰さん、半年もの間兄さんにつきまとって、兄さんの好みを女から男に変えてしまったっていうのに、こうして見てみると、兄さんはまだそこまで奏汰さんにハマってはいないみたいですね」そう言いながら、碧は同情するように奏汰の肩をポンポンと叩いて笑った。「ちょっと忙しいので、この辺で失礼します。このまま中に入っても、帰っても、好きにされてください。それでは、俺はこれで」碧は本当に奏汰をその場に放置し、数人の管理職たちと一緒に去っていった。そして、歩きながら、仕事の話を続けた。奏汰がそう容易に碧から打撃を受けるような人間だろうか。彼はすぐに一階の受付までやって来ると、まだ仕事をしていた受付に尋ねた。「白山社長は午後、本当に会社にはいなかったのですか?それとも副社長は俺を騙そうとしているとか?」「彼でしたら、確か
唯月はどう返事をすればいいかわからず、ただ黙って隼翔を抱きしめた。暫くして隼翔はそっと彼女から離れ、優しい声で言った。「さあ、部屋に戻って休んで。もうこんな時間だ、おやすみ」「おやすみなさい。あなたも早めに寝てね、明日は星城に帰るんだし」二人は互いにおやすみの挨拶を交わし、唯月は隼翔の部屋を出た。隼翔は車椅子に乗って部屋の入り口まで来て見送った。彼女が隣の部屋に入るのを見届けてから、ドアを閉めた。そして夜は静かに過ぎていった。翌日、隼翔は朝食を済ませて、唯月に見送られる中、車に乗ってラグジュリゾートを離れた。唯月は空港まで見送ることはなく、彼が車に乗って離れるまで、ホテルの入り口に立っていた。空港まで行っても、結局は別れがくる。ギリギリまで一緒にいては、余計に別れが惜しくなってしまう。隼翔の乗る車が見えなくなるまで見送り、唯月はボディーガードたちと、柏浜滞在中に使用する二台の車のほうへ歩いていった。隼翔は星城に帰っていった。彼女も引き続き自分のやるべき事に集中しなければならない。忙しい時は、特に時間が経つのが早く感じられる。朝が来たと思ったら、あっという間に夜になっている気がする。奏汰は玲が午後会社にいないとは知らず、いつものように、夕方白山グループ本社に車を走らせ、玲の仕事が終わるのを待っていた。そして一緒に食事に行くつもりだった。玲はとても忙しいため、彼と過ごす時間は限られている。毎日食事をする時だけが、奏汰が玲との仲を深められる時間だった。車は白山グループに入ると、いつも駐車するスペースにとまった。奏汰は助手席から花束を抱きかかえて降りてきた。彼は本社ビルの入り口で、中から出てきた碧と鉢合わせた。碧は他に数人の管理職たちと一緒に歩きながら何か話していた。奏汰に気づき、一行は立ち止まった。「奏汰さん、ここへ何しに来たんですか?」碧は開口一番にそう尋ねた。その質問の意味がよくわからず、奏汰は聞き返した。「お宅の会社に来たらいけないんですか?」毎日来ているというのに?碧が追い出せるとでも?追い出そうとするものなら、奏汰はすぐに碧の両親に電話をして訴えればいい。白山グループの現社長は玲だ。しかし、会社の株の多くを会長である茂が持っている。茂こそ、会社のトップなのだ。
「ああ、明日帰る。唯月さんも忙しいから、彼女の邪魔しちゃ悪いだろう。帰って陽君のお世話をすれば、彼女は後のことなんて心配する必要はない、安心して柏浜に俺と陽君のために町一つ、つくってしまうかもしれんぞ、はははは」そう言うと、隼翔は大笑いしていた。唯月はすぐ傍で聞いていて、おかしくなって言った。「最後には巨大な債務で押し潰されちゃうかもね」そこへ隼翔が太っ腹にこう言った。「何を心配する必要がある?俺がいるじゃないか。一兆の借金でない限り、俺が代わりに返済するさ。だから、君は構わず突き進んでいい。この世の終わりが来たって俺がどうにかしてみせる。損するんじゃないかとか、債務に追われるんじゃないかとか、そんなものは気にしなくていいから」唯月「……」一兆の借金?そんな額、想像もできない。彼女の現在の経済状況からすると、一兆の借金など、考えただけでも、一気に老けてしまう。すると理仁が言った。「義姉さんには隼翔という後ろ盾があるんだ。義姉さんは後の事なんて心配する必要はない。柏浜で絶対的な地位を得るさ。じゃ、俺はこれで失礼するよ、おやすみ」そう言うと、理仁は電話を切った。すぐそばで理仁の言葉を聞いていた唯月に隼翔は言った。「ほら、理仁の君への信頼は絶大だぞ」「あなた達がいつもこんなに私を信頼してくれるから、もっと努力しないと、期待を裏切ることになっちゃう」「君もあまり疲れすぎないようにね。何か困ったことがあれば、真っ先に俺に言ってほしい。確かに俺は今足が不自由だけど、頭は使える。君と一緒に問題解決のために考える力は十分あるから」唯月は彼が足が不自由なことを持ち出すのが好きではなかった。「きっと良くなるから大丈夫よ、そんなふうにあなたが言うのを聞きたくない。これからは足が不自由だって話は禁句よ。また歩けるようになって、私にプロポーズしてくれるって約束でしょ?私はその日を待っているのよ」隼翔は顔をニヤつかせて、言った。「君にそう言われちゃ、良くなるしかないな」唯月は顔を赤く染めて、恥ずかしそうに言った。「あなたも早めに休んで。私も部屋に戻ってもう寝るわ。明日はまた会社を立ち上げるために走り回らなくっちゃ」「うん、じゃあ、おやすみ」隼翔はそう言いながら、自分の頬に手をあてた。唯月におやすみの
「佐々木俊介はまだ君のことを忘れられないんだろうな」隼翔が言った。彼は俊介が陽に自分の悪口を言っていても、気にしていない。俊介がそのようであれば、陽は実の父親のことを嫌いになり、逆に隼翔との仲が深まるだろう。陽が毎回、佐々木家から帰ってくるたびに、自分への態度がどんどん良くなると思っていたが、こういう事情があったのだと隼翔は改めて理解した。陽は隼翔に対して、幼いながらも申し訳ないと感じているのだろう。実の父親である俊介が彼の悪口を言うからだ。「彼は私への気持ちなんてとっくの昔に冷めているわ。もし、愛していたのなら、裏切ったり、私を悲しませるようなことなんてしなかったもの。それに、結婚している間も、家族が私に嫌がらせをするのを許さなかったでしょうし。本気で、ある女性を好きになったら、誰かにいじめられているのを黙って見ていられる?嫁と姑がギクシャクしていたら、夫である彼はどうにかして解決しようとするはずよ。両親や姉が私を好き勝手責めるのを見ているだけなんてありえない。彼はただ不公平だと感じているだけよ。ほら、もしあの人と成瀬莉奈がとても幸せな結婚生活を送れていたら、こんなふうにはなってないわ。いろんな事があって、二人とも仕事を失っていなければ、幸せに暮らしていたでしょうね。それに子供も無事生まれていたら、私のことなんか構う暇さえなかったはず。そうなっていれば、あの人の陽に対する気持ちも薄くなっていったはずよ。だって、新しく愛する人との子供が生まれたら、今までだって陽とは親子の絆が薄かったし、陽のことをちゃんと面倒見ていた事すらなかったんだから、大事になんてしなかった、きっと」隼翔は少し考えて、頷いた。「胸糞悪くなるだけだ、ああいうクソな人間の話はもうやめよう。俺は明日星城に戻るからな。唯月、一緒に陽君の服を選びに行こうよ。あと、おもちゃも。俺の代わりに彼が喜びそうな物を選んでくれないか?俺が選んで持って行くと、彼はあまり好きじゃなさそうなんだ」唯月も元夫の話題をいつも出したくなかった。彼とのことはすでに過去のことになっていて、何も感じないが、隼翔の前で元夫の話をすると、彼が嫉妬してしまうのではないか、気になってしまう。交通事故に遭ってから、隼翔もかなり弱い部分が出てきてしまった。それは主に、両足に障害が残ってし
唯月は言った。「唯花が持ってないものなんてあるかしら?頑張ってリハビリを続けてね。私が星城にいない間は、ちゃんと自分で管理するのよ。時間がある時は陽に会いに行ってあげて。あの子もあなたに会いに行くと思う。陽ったら、今は実の父親よりもあなたのほうにすっかり懐いちゃってるもの」隼翔は得意げに言った。「それはそうだ。俺は心から陽君のことを大切にしているんだからな。彼の父親は俺の悪口しか言えないらしい。俺がどれだけ悪い奴かってひたすら話しているってな。陽君はとても賢く、心が清らかで雑念なんて存在しない。だから、良し悪しをきっちり分けて考えることができるんだ。彼の父親が俺の悪口を言うたびに、どんどん父親から遠ざかりたくなるだろうね」そこまで話して、隼翔は振り返って唯月を見た。彼女は俊介の話題になっても、顔色ひとつ変えなかった。唯月は元夫の事を聞いても、何も感じなくなっているのだ。「なんでそうやって私を見るの?まだあの男のことを気にしてると思ってる?あの人は今、陽の父親である、ただそれだけよ」唯月は言った。「まさか、私がまだあの人のことを好きだとか思ってるの?彼の話題になると落ち込むんじゃないかって?あれからどれだけ時間が経ったと思ってる?私がまだあの人のことを好きなわけないじゃない。彼の話題になって動揺することなんてないわ。まだ彼のことが好きだったら、そもそもあの時離婚を選んだりしてないわよ。気持ちが冷めてしまったら、一刻も早く別れるに越したことないわ」俊介はきっちりと約束を守っている。彼とその家族は、あれから二度と唯月の人生を邪魔しに来ることはなかった。二人の間にある繋がりは、陽だけだ。ただ、俊介は穏やかな気持ちで、唯月と隼翔が一緒になるのを見ていられないらしい。それに、継父になるかもしれない隼翔が、実の父親である自分よりも良いと思われるのが嫌なのだ。それで、我慢できずに陽の前で、隼翔のイメージを壊そうと、悪口ばかり言ってしまう。陽がまだ隼翔のことを怖がっていた頃でさえ、俊介が隼翔は悪い人間だと言うと、陽は隼翔を庇っていた。以前から、隼翔のイメージを壊そうとする父親を完全に否定していたのだ。それなら、今のように隼翔ととても仲良くなった陽からすれば、父親がそのようなことを言うのに我慢できるはずもないだろう。毎回父と子
隼翔の話に、その場の全員が笑顔になった。奏汰はレストランに到着するなり、すぐに料理を注文していて、隼翔と唯月が来ると、スタッフがすぐに料理を運んできた。みんな和気あいあいと賑やかに食事を楽しんだ。食事の後、玲はすぐに別れの挨拶をした。彼女はグラン・エデンへ藤崎社長との商談に行かなければならない。幸い、グラン・エデンはラグジュリゾートからとても近く、斜め向かいだ。いくら近くても、奏汰はどうしても玲を送ると言って譲らなかった。唯月は隼翔の車椅子を押してホテルを出ると、付近をぶらぶらと散歩し始めた。柏浜の街中を散策し、夜景を楽しんだ。「気持ちは少しは落ち着いた?」隼翔は後ろにいる唯月に声をかけた。唯月は少し沈黙してから、口を開いた。「ええ、だいぶ落ち着いてきたわ。これから先、私の身に起きることは今回の事よりも、もっと残酷になるでしょうし、もし今回のこれくらいの事を克服できなければ、私も柏浜に留まることはできない。それなら星城に帰って自分のお店を経営するほうがいいわ」そんなことになれば、伯母である詩乃の望みを叶えることはできず、期待を裏切ることになる。「気持ちを切り替えられれば、大丈夫だよ。いろいろ見て回ったけど、何か欲しい物はない?」隼翔は振り向いて彼女に尋ねた。「欲しい物があれば、買いに行こう。俺がプレゼントするから」唯月は笑った。「自分で買えるから、あなたにプレゼントしてもらわなくていいわよ」「俺は君の彼氏だろう。将来、一生共にする伴侶になるんだ。そんな他人みたいにはっきり境界線を引く必要もないじゃないか。俺だって君に何か贈り物をしたことがないからさ。プレゼントしても君はいらないって言うし、実はうちにある部屋の一つは女性が喜ぶようなプレゼントで埋め尽くされてるんだぞ。全部君に用意したプレゼントなんだ。そのうち君に渡そうとした物もあるけど、受け取ってくれなかっただろ。それ以外にもまだまだたくさん積まれてる。君が受け取ってくれないってわかったから、そこに置いておくしかなかったんだ。将来家族になったら、その部屋にある全て、君の物になるよ。君が使ってくれなかったら、俺たちの家庭の金が無駄になってしまうよ。君の性格なら、そんなこと許せないはずさ」唯月「……」以前の唯月は、隼翔の気持ちは受け入







