Share

第467話

Penulis: リンフェイ
理仁は車を止めた後、佐々木俊介が財産を移した証拠のことを思い出し、車から降りようとしている唯花を呼び止めた。

「友人に頼んで、佐々木俊介の財産の件を調べてもらった。あいつよくやってくれたよ、証拠は昨夜俺に渡しに来てくれたんだ。そのまま車の後部座席に置いてある。その黄色いファイルに入っているよ」

「あなたのお友達って本当にすごいわね。こんなに短時間で証拠を集めてしまうだなんて」

唯花は理仁の友人にとても感謝するとともに、興味が湧いてきた。どんな人なのか会ってみたい。

彼女はこの証拠が集まるにはかなりの時間を要すると思っていたのだ。佐々木俊介は最近になってから財産を移したわけではないだろう。もっと前から計画的に行っていたはずだ。

たった一日で、その友人は証拠をきれいに集めてしまった。

「理仁さん、あなたのそのお友達、探偵事務所をやってないだなんて、すごくもったいないわよ、こんなに能力が高いのに」

唯花は車を降りると、後部座席のドアを開け、中から黄色いファイルを取り出した。

「彼の家族には専門に情報収集をして生業にしている人がいるからね。彼らのその人脈があってこそ、こんなに早く証拠が集められるんだ」

九条家の情報網の範囲は非常に広い。星城市はもちろん彼ら九条家の地盤でもあるわけだから、星城内の情報の数といったら桁違いだ。九条家が知りたいことは余すことなくかき集めることができる。

しかし、その費用は相当に高い。普通の人には九条家にお願いできるような資格もないのだった。

「このような人って、私ずっと小説の中だけにしか出てこないと思っていたわ。まさか現実世界にもこんなすごい一家が存在しているだなんてね」

唯花は黄色のファイルを取ると、理仁が彼女に贈ってくれた花束を座席の上へ戻した。

理仁は彼女を見つめた。

唯花は「お姉ちゃんは今、落ち込んでいるでしょ。私たちのこういうイチャついてるような様子はお姉ちゃんの前で見せないほうがいいわ」と慌てて説明した。

彼女は彼に近寄って、顔にキスをして笑って言った。「あなたから花をもらって嬉しい気持ちは変わらないわ」

人前でイチャつく機会なら今後いくらでもあるのだ。こんな時にそんなことをする必要などない。

理仁は納得した。「君たち姉妹は本当に仲良しだな」

「だって十何年もお互いに助け合って生きてきたんだもの。お
Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi
Bab Terkunci

Bab terkait

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第468話

    「清水さん、お姉ちゃんと陽ちゃんはやっと落ち着いて寝ているから、起こさないでおきましょう。お粥を作って、後で起きてきたら食べさせてあげてください」清水は頷き「わかりました」と返事した。三人は一緒に朝食を取った。唯花はインスタントコーヒーを入れて飲んで目を覚まさせた。清水は食事を終えると、食卓から離れて出て行った。彼女がいなくなったのを見て、ここぞとばかりに理仁は唯花の手を握った。「唯花さん」理仁は優しい声で言った。「君はここで休んでいて、俺が行ってくる」唯花は彼の手を握り返し、彼を諭すように言った。「大丈夫、コーヒーで何とかなりそうだから。それに、柏木家に行ったら喧嘩になるかもしれないでしょ。口喧嘩なら私のほうがあなたより強いわ。たぶん辰巳君たちでは英子に口で敵わないわよ」彼らはみんな教養があって品のある人たちだから、喧嘩は専門外だろう。「私は陽ちゃんの叔母だもの。陽ちゃんがあいつらにこんな目に遭わされて黙ってなんかいられない。絶対に仕返ししてやるんだから。昨日陽ちゃんが気を失って、こっちのことで頭がいっぱいだったから、柏木家に怒鳴り込みに行く時間がなかったわ。今日は陽ちゃんの調子もちょっと良くなったし、安心してあいつらを懲らしめに行けるのよ」理仁はじいっと彼女を見つめた。唯花は笑った。「理仁さん、そんな目でいつも私を見つめないで。私のこと誘ってるんじゃないか勘違いしちゃうじゃない。そんな目で見つめられたら、心臓バクバクして変なこと考えちゃうのよ。ああ、さっさとベッドに押し倒してあげたいわ。いいの?」結城理仁「……」「プルプルプル……」この時、理仁の携帯が鳴った。それは結城辰巳からだった。彼がその電話に出ると辰巳が話し始めた。「兄さん、俺たちXXインターの料金所近くの駐車場で待ってるよ」「わかった、今から行く」理仁は電話を切ると、唯花に言った「あいつらが昨日と同じ場所で待ってるって」唯花は飲みかけのコーヒーを二、三口で一気に飲み干した。そして清水に姉たちのことを任せると、夫婦は唯月の家を出て行った。道の途中で、神崎姫華から電話がかかってきた。「唯花、あなたに送った写真はもう見た?なんか親しさみたいなものを感じた?」姫華は唯花が実家の田舎のほうで昔女の子を養子にした人もいると聞いて

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第469話

    唯花が不安がっていると、姫華は話し始めた。彼女は異常なまでに落ち着いた声で唯花に尋ねた。「唯花、お母さんは昼に家に戻るの。あなたのところに陽ちゃんを迎えに行ってもいい?」姫華は自分の叔母に対してあまり印象がなかった。写真で見てみても、どうもピンとこない。唯花の話からすると、子供は小さい時はみんな可愛いということだが。陽が彼女の叔母に似ているというのであれば、ただほんの少しだけしか似ていないとしても、それを見過ごすことはできない。陽を連れて母親に会わせてみないことには。姫華はこの時、自分が唯花と初めて出会った時に感じたあの不思議な親近感を思い出していた。陽に初めて会った時も、同じように一目で彼のことを気に入ってしまった。もし陽が彼女の叔母の孫であれば、どうして彼女が一目で陽のことを好きになったのか説明もつくというものだ。彼女も陽と同じくらいの子供と接したことがないわけではない。しかし、陽に関しては他の子供たちと違い、陽を自分の甥っ子にしてしまいたいくらい一目で好きになってしまったのだ。陽におもちゃを買ってあげている時、一切の迷いなく、陽におもちゃ工場でも経営してあげて、彼のためだけにおもちゃの生産をしてあげたくなるくらいだった。それは唯花に対しても同じだった。姫華のこの身分であるから、身の回りにはいつも彼女と関係作りをしようとしてきたり、彼女をおだてて気に入られようとしてきたりする人間は後を絶たなかったが、そのような人たちは自分の視界にも入れなかった。26歳である彼女には本当の友人と呼べる人は指折り程度にしかいなかった。それは彼女の好き嫌いが激しいからだ。しかし唯花とは会った瞬間からまるで昔からの親友だったかのように感じたのだ。彼女に唯花の出身や家庭レベルなど気にもさせないほど、友達になりたいと思った。それは、ただ唯花が彼女に好きな人の落とし方を教えてくれたという理由だけではないのだ。それもあって、彼女は本当に心から唯花を好きになり、友達になりたいと思ったのだった。「姫華、今はちょっと都合が悪いの。陽ちゃん、ちょっとトラブルに巻き込まれちゃって」それを聞いて姫華の心は何かにぎゅっと掴まれたかのように苦しくなり、緊張した面持ちで尋ねた。「陽ちゃんに一体何があったの?」唯花は一瞬ためらったが、やはり本当のことを話

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第470話

    「うん、旦那って大家族なのよね。姫華、ありがとうね」姫華は唯花の夫が自分の家族を連れて助太刀に行くと聞き、安心して言った。「唯花、あなたと旦那さんってスピード婚なんでしょ?なんだか二人の関係はイイ感じみたいね。あなた達に何かある時には彼が必ず助けてくれるみたいだし」唯月の夫とはまったく違っている。知り合って十二年という長い時間は一体何の役に立つというのだ?そんなに長い付き合いなのに、唯花がスピード結婚した旦那に遠く及ばないではないか。「わかったわ、今回は私は遠慮しておきましょう。だけどね、次もしも何か困ったことがあったら、絶対に私に言ってよね。そうしてくれないなら、私をもう友達だと思わないでちょうだい。そうだ、お姉さんのお家の住所を教えてくれない?私、唯月さんのお家に陽ちゃんの様子を見に行ってくるわ」唯花は彼女のこのお願いは断らなかった。電話を切った後、唯花は姉の住所を姫華に送った。理仁はずっと耳を澄ませて唯花と姫華の通話を聞いていた。姫華が人を連れてやって来ると聞いた時には、彼は車のハンドルをぎゅっときつく握りしめていた。姫華がもし来たら、彼の正体がばれてしまうことになる。彼はこんな突然に真実を明かしたくなかった。それでは唯花に心の準備ができておらず、本当のことを受け入れられないだろう。それに、夫婦二人はまだ相手に対するお互いの気持ちがまだ定まっていない。だからいきなり正体をばらすのは相応しくないのだ。幸いなことに、唯花が姫華の好意をやんわりと断ってくれた。理仁は姫華に対しては好感を持ってはいなかったが、姫華の唯花に対する優しさは認めざるを得なかった。姫華のあの荒い気性とその身分が、彼女を何があっても心の赴くままに行動させていた。じっと我慢している必要はないのだった。理仁は何も気にしていないかのようなふりをして尋ねた。「神崎さん?」「うん、姫華がお母様と叔母様の小さい頃の写真を送ってきたの。あの山荘に行っていた日、ちらっと見ただけで何も気づかなかったんだけど、帰ってからよく見てみたらね、突然なんだか彼女の叔母様が陽ちゃんとすごく似てるなって思ったのよ」理仁は彼女のこの言葉に驚き、危うく前を走行している車に追突してしまうところだった。彼は焦って急ブレーキをかけた。唯花の体はその衝撃で前のめり

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第471話

    それか、姫華は叔母が大人になった後の姿をイメージできなかったのだろう。唯花は柏木家から帰って来た後、神崎家のそのおばさんが大人になった後のイメージを描いてみようと思った。姉に似ているだろうか?「そういうことなら、君のお母様が神崎さんの叔母さんだっていうこと?」理仁は「有り得ない!」と心の中で叫んだ。まったくもって有り得ない!そんなこの世で最も有り得ないようなことが、まさか自分の妻の身に起きるとは!最も助けてくれと叫びたくなることは、神崎姫華が以前、彼に公開告白をして、追いかけ回していたということだ。しかも唯花は姫華に彼を落とすためのアドバイスをしていたのだぞ。もしも彼が指輪をはめて神崎姫華にわざと見せていなければ、彼女は今でも毎日彼に付き纏い、彼を相当イラつかせていたことだろう。本来であれば、神崎姫華にはしっかりと教訓を与えてやるところだったのだが、まさかその彼女と唯花が仲の良い友人になるとは思ってもいなかったのだ。それで彼は何もできなくなってしまった。唯花に対して心から優しくしてくれる人には、彼は特別に好待遇をしてあげるつもりだ。内海家のあのクズどもは最近ピタリと鳴りを潜めていて、唯花に迷惑をかけにくることはなかった。彼が手を出したことだし、姫華も一役買っている。内海家は唯花の後ろ盾となっているのが彼であるということは知らず、姫華のほうだと勘違いしていた。それで姫華を恐れて今は静かになっているのだった。「私もどうなのかはわからないわ。お母さんは十五年前に亡くなっているし、もしも……」唯花は神崎夫人が数十年もの長い間ずっと妹の行方を捜していて、ようやく見つけたと思ったら、その妹はすでにこの世を去っていると知ったら、かなりのショックを受けてしまうだろうと思った。唯花は自分の母親に対しても、とても心が痛んだ。「たぶん、他人の空似だろう」唯花は落ち込んだ様子で言った。「神崎夫人は妹さんをずっと捜し続けて諦めたことがないわ。お母さんが生きていた頃、一度も自分の家族について話してくれたことはなかった。だけど、もし生きていたら、きっと、自分の家族を見つけたいと思ったでしょうね。お母さんは以前、私たちに話してくれたことがあるの。自分は一体実の両親に捨てられてしまったのか、それとも誘拐されて売られて来たのかを知りた

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第472話

    しかしそれよりも、今すべきことは陽のためにあいつらを懲らしめることだ。自分の正体については、まだ暫くの間は隠し続けることができるだろう。彼はもうすぐ桐生蒼真と雨宮遥の結婚式に出席するためA市に赴かなければならないのだから。どのみち、少しでも時間稼ぎができるなら極力そうするまでだ。彼も神崎夫人と会う前に、唯花に正直に話せばいい。その時は……唯花があまりに大袈裟な反応をしないのを祈るだけだ。彼は結婚当初、彼女に対して一切の感情も持っていなかったし、よく相手のことを知らなかったわけで、自分の正体を隠して彼女の人となりを見極めようと考えるのは、いたって普通のことだと思っていた。彼のこの身分なのだから、彼に近づいてくる女が金目当てなのか、それとも彼自身が好きなのか判断のしようがない。今、唯花の人柄や、物事を処理する際の向き合い方、自信を持ち強く自立した女性であることは正に彼の好みだった。そして彼女と共に過ごしていく中で、いつのまにか彼女に惹かれていった。電話をかけてきた姫華のほうは、唯花との電話が終わると、すぐに使用人に指示を出した。「坂下さん、ちょっと栄養の補助ができるような健康食品を用意してくれないかしら。子供が食べるものよ、人に贈るの」坂下は「そのお子様はおいくつでしょうか?」と尋ねた。「2歳ちょっとよ」「2歳過ぎのお子様でございましたら、特になにもなければ、栄養補助食品などは必要ないと思いますが」坂下はこのように自分の家のお嬢様に教えた。お嬢様はまだ結婚していない。子供のことをよく理解していないのは当たり前のことだ。彼女にこのように教えるのも彼女の仕事の一つなのだ。このお嬢様が相手に相応しくない贈り物をして恥をかき、家に帰って彼女に当たり散らすのを避ける必要もある。「まったく口にしちゃだめなものなの?」陽は健康だから、確かに何か栄養補助食品などは必要ないだろう。「鉄分、亜鉛、カルシウムなどの健康食品は問題ございませんが。しかし、こちらには置いていません」神崎玲凰は結婚しているが、自分の妻を溺愛中で、夫婦二人だけの世界にまだ浸っていたいので、子供は作っていなかった。神崎家の次男と長女である姫華は言うまでもなく、まだ独身貴族だ。それ故、家には幼児用の健康食品などは置いていなかったのだ。「だったらい

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第473話

    神崎夫人はそれを聞いて驚いた。「結城さんに彼女ができたの?」「結婚しているの。しかも奥さんにとても優しくて、溺愛してるみたい。お兄ちゃんでもその奥さんが一体誰なのか調べてもわからないんだから、情報が漏れないようにしっかり守っているんでしょうね」神崎夫人「……彼が結婚しているのなら、もう諦めなさいね。彼はそもそもあなたのものではないんだし、ずっとあなたの片思いだったし」神崎夫人は結城理仁のことを高く買っていたが、彼が自分の娘のことをまったく好きではないことがわかっていた。ただ娘自身が彼にアタックしてみたかったのだ。壁にぶち当たったのなら、他の道を探すまで。「お母さん、ちょっと話があるのよ」姫華は母親とこれ以上結城理仁の話をしたくなかった。彼の話題になると、ぎゅっと心が締め付けられる。長年好きだった男性が、ある日突然、結婚していると知ったのだ。彼女は危うく人の恋路の邪魔をする第三者になってしまうところだった。そしてその瞬間から彼のことを諦めなければならず、辛くないと言えば嘘になる。今の彼女は自分の気持ちを保つために、できるだけ結城理仁の話題は避けようとしていた。「なぁに?お母さん、もうすぐ家に着くわよ。それからじゃだめなの?」「あのね、聞いたら喜ぶと思って、叔母さんの新しい手がかりが掴めたのよ」それを聞くと、やはり神崎夫人は真剣な表情になり、驚きと喜びに溢れた。「姫華、手がかりが掴めたって?叔母さんは今どこにいるの?」「あの友達の唯花が、えっと、あの、この間『不孝者の孫娘』って炎上した子がいたじゃない?お母さんと叔母さんが小さい頃の写真を彼女に送って心に留めておいてもらおうと思って見せたんだけど、さっき彼女に電話した時、その写真をよく見たらなんだか彼女の甥っ子の陽ちゃんと叔母さんが似てるような気がするって言っていたの」それを聞いた神崎夫人の顔色は喜びの色から一転し、少し青ざめた。この間の炎上の件では、騒ぎは結構大きくなり、彼女は内海家が削除してしまった写真を見てはいなかったが、娘の口から大体のことを聞いていて知っていた。内海姉妹といえば、二人の両親はすでに他界しているはずだ。もし、唯花の甥が彼女の妹に似ているのであれば、それは唯花の母親が彼女の妹であるということで、その妹はすでに十五年前に亡くなっている

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第474話

    もし、唯花姉妹が神崎夫人の姪なのだとしたら……神崎夫人は二人の姪っ子が今までに味わって来た苦難を思うと、さらに心が締め付けられて苦しかった。「もうすぐ家に着くわ。待っててちょうだい、あなたと一緒に陽君に会いに行くから」これが最も可能性の高い手がかりだ。彼女は絶対に自ら妹に似ているという子供に会いに行くと決めた。……その頃、柏木家では。「お父さん、お母さん、引っ越さないでちょうだい。私、唯花に賠償金は払わせないって約束するから、これでいいでしょ?」英子は両親が家から出て行こうとするのを必死に止めていた。昨日、両親は帰るとすぐに荷物の整理を始めた。しかし、娘から泣きながら二度とあんな真似はしないと訴えられて、二人は一夜はなんとかここに留まっていたのだ。一晩もすれば、両親の怒りは収まると考えていたのだった。それがまさか今、やはり引っ越して出て行くと言われるとは思っていなかった。特に父親のほうの気がどうしても収まらないようだ。英子の夫である柏木輝夫も一緒に二人をなだめた。「義父さん、義母さん、英子の言うとおりです。引っ越してお二人の家に戻ったって、誰も世話をする人がいないのに、僕たちは安心できないですよ。僕たちと一緒に住んでいたほうが、家族一緒にわいわい楽しく過ごせるじゃないですか。義父さん、智哉も間違いを反省していますから。後で英子とあの子を連れて陽君に謝罪してきます。僕も昨日はしっかりと智哉にしつけてやりましたから」佐々木父はソファに腰かけてタバコをふかし、何も言わなかった。彼の横には荷物を整理したスーツケースが置かれていた。佐々木母は夫を見つめながら、何か言いたげだったが、言葉に出せないようだった。佐々木俊介に関しては、一言も発言することができないようだった。彼は昨日姉の家に着いて、甥が姉の旦那にひどくしつけられているのを見て、彼も怒りがほとんど消えてしまった。「お父さん」「黙っとれ」佐々木父は冷ややかに一喝し、顔を上げて娘をぎろりと睨みつけた。そして、彼の息子のほうはというと、一言も発せず隣に黙って立っているのを見て、彼はさらに怒りが込み上げてきた。それから、孫の智哉は娘婿にひどくしつけられたようだった。しかし、智哉の顔は氷で冷やした後、すぐに腫れが引いた。確かにまだ青あざは少し

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第475話

    「あんたら何しに来たんだい?」英子は彼らにきつい口調で尋ねた。彼女は唯花たちを中へ入れる気はなかったが、一人では力不足で彼らを止めることができなかった。彼女の夫はそんな彼女と真逆の態度で、腰を低くし唯花たちを中へと通した。智哉は唯花たちを見ると、怒りで目を大きく見開き睨みつけていた。それを父親に見つかり、捻られてしまった。「後できちんと謝罪しろよ」輝夫は小声で息子に注意した。「この人たちは、手に負えるような相手じゃない」柏木家の中をめちゃくちゃに破壊しても、彼らは何のお咎めなしなのだから。昨日警察は、まったく柏木家のほうに味方しようとはしなかったのだ。輝夫は結城家に何か並々ならぬものを感じ、逆らってはならない一家だと不安になり、自分たちの負けを認め息子には誠心誠意彼らに謝罪するよう注意した。実は輝夫は考えすぎだった。警察は監視カメラを見て、智哉がさすがにやり過ぎだと判断し、家の中が壊されたことには目を伏せることにしただけなのだ。他人の子供を病院送りにまでしておいて、相手に腹を立ててはいけないと言えるか?まだ子供を持っていない人なら、両親のその怒りと心を痛めることを理解することは難しいだろうが、子供がいる人なら、誰でもその映像を見れば怒りを爆発させることだろう。智哉は口を尖らせて、黙っていた。彼は自分が悪いとは全く思っていない。恭弥が陽に殴られたんだと主張していたからだ。智哉は恭弥の兄なのだから、弟が殴られたらもちろん弟の代わりに仕返しをするだろう。陽が先に手を出さなかったら、こんなことにならなかったくせに。それに別に陽が死ぬまで殴ることはしていないというのに、どうして大人たちの世界では、自分が大罪を犯した極悪人のようになっているのだ。智哉の考え方は彼の母親と完全に一致している。「唯花さん」佐々木父は穏やかな声で唯花に尋ねた。「陽君の様子は?」「お父さん、智哉を見てよ、この子はもうすっかり良くなったでしょ。陽ちゃんだって絶対治ってるわよ」英子は唯花が話す前に自分が話し出した。唯花は冷ややかな目で英子を睨みつけた。英子は不機嫌そうに言った。「なによその目は?唯花、昨日よくもうちの中をめちゃくちゃにしてくれたわね。被害額は……」父親に睨みつけられ、また夫から止められて、英子は結

Bab terbaru

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第616話

    返事をもらえず、隼翔は話し続けた。「私が君を採用したことで、会社内で苦労させてるのは知っている。だが、他人の言葉は気にせず、自分の仕事に集中すればいいから」「東社長、私は仕事を辞めたいと思っています」隼翔はじっと彼女を見つめた。「理由は?」唯月は暫く黙った後、顔をあげて言った。「あの時は離婚して息子の親権を得るため、会社でどんな陰口を叩かれても、他人から嫌がらせをされても我慢できたんです。それは陽の親権を得るため、仕事が必要だったからです」「今は離婚して、親権も得られたから仕事を辞めたいってことか?まだ試用期間も終わってないぞ」隼翔は彼女の話を遮った。「内海さんには実力がある。職場の人間関係は複雑だということをきっと知っているだろう。他人の言葉は気にせず、自分が後悔しない生き方をすればいいと思う」「でも、私が東社長を取り入ろうとしていると言われて、私は東社長の評判に傷をつけたくないんです」人がいる所には必ず争いがあるものだ。唯月はそれを理解している。元財務部長だった彼女が直接に東社長の採用で入社したため、誰もが彼女がツテを使って入社したと噂をしていた。上司や上の管理職たちは彼女が自分の役職を奪うのを恐れていた。だから、オフィスの同僚たちは裏で彼女をいじめ、排斥し、罠を仕掛けてきた。さらに、東は独身だった。彼が一人の女性社員に注目すれば、その女性はすぐに多くの人の標的になるのだ。唯月は彼女たちと争いたくなかった。だから仕事を辞めて、自分の計画通りに起業しようと考えていた。隼翔「……誰が言ったんだ?」「内海さん、自分の仕事だけに専念したっていいんだ。その連中は俺が対処する。今後誰かがまた君にそういうことを噂したら、全員クビにする。大勢の人がそうしたって責められないと思ってるようだが、俺を怒らせたら全員解雇だな」彼が唯月を採用したのは、確かに理仁の面子を考えてのことだ。まあ、これに関しては、唯月がコネで採用されたというのも事実ではあるのだが。しかし唯月が彼を誘惑する気があるという……あまりにも非常識だった。離婚したばかりの唯月がそんなことするはずがないのに。社員同士のいざこざなど、多忙な東社長はあまり気にしないし、手も出したくなかった。しかし、度が過ぎれば処分せざるを得ない。「東社長、ありがと

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第615話

    唯月は振り返り、オフィスに戻った。その同僚はまだ他の人たちと楽しそうにおしゃべりを続けていた。唯月はまっすぐに相手のデスクの前に行った。その人はようやく唯月が戻ってきたことに気づいた。他人の悪口を言う時、その本人に聞かれるのはどれほど気まずいことか。その人は今まさにこの気まずい状態にいて、どうしたらいいかうろたえていた。「あなた、東社長に片思いしているんでしょう?」唯月が発した最初の言葉は、その女性の顔を赤くさせた。「そんなことありませんけど」彼女は否定した。「じゃあ、どうして私と東社長の噂を流すんです?面白いですか。あなたの話からジェラシーしか聞こえないんですけど。東社長に片思いしているから、こうやって私に敵意を向けてるんでしょう。信じてもらえなくてもいいですけど、私は東社長に何の気もありません。私が離婚したのは、クズ男が浮気したからよ。あんなクズと離婚しないで、そのまま一緒に生活し続けるとでも?私が離婚したから必ず東社長を誘惑するって言い切るわけ?東社長は公明正大なお方ですよね。私と何かあったら、隠したりしないでしょう」唯月は冷たい視線で相手を睨んで、何の感情もこもっていない声ではっきり言った。「これからもそのでたらめな噂を流し続けるなら、名誉毀損で訴えますから」言い終わると、彼女は踵を返した。その女性の顔色が暗くなったり赤くなったりして、最後に真っ青になった。他の人も唯月が冷たそうな表情で去っていたのを見て、彼女が言ったこともきちんと聞こえていた。それは彼らへの警告でもあるとわかった。会社で、唯月に関する悪い噂が多すぎるのだ。もし唯月が本当に名誉毀損で訴えたら……。唯月は冷たい表情のまま隼翔のオフィスのドアをノックした。「……顔の傷、大丈夫か?」隼翔は唯月の顔にまだ傷が残っているのを見て、心配そうに尋ねた。「あと二日もすれば治りますよ。お気遣いありがとうございます」唯月は彼のデスクから二メートル離れたところに立ったままだった。「座って」隼翔は彼女にそう言った。唯月は言われた通りに座らず、距離も詰めようとしなかった。ただそこに立ったまま顔をあげ、隼翔を見つめて静かに尋ねた。「東社長、何がご用でしょうか」「ああ、実は……妹さんのことをちょっと聞きたいんだが」

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第614話

    悩んだ結果、彼女は恥を忍んで姫華に悟のことを聞いたのだった。悟が本気で誰かを懲らしめようと思ったら、その相手には生きるより死んだほうがましだと思わせるほど辛い目に遭わせるのだということを知った。彼は人を懲らしめる時、相手が少しずつ全てを失い、絶望をじっくり味わわせるような非常に残酷な手段を取るのが好きだった。そのため、明凛はもし自分が直接悟の好意を拒否したら、彼の逆鱗に触れて、理仁がいじめられるのではないかと心配していたのだ。「そうね、まず付き合ってみるわ。だめだったら無理しないから安心して」明凛は確かに心配していたが、自分を犠牲にするようなことをするつもりはない。彼女はそういう性分じゃないのだ。「唯花、昨晩神崎家に行かなかったの?さっきお姉さんが陽ちゃんを連れてきた時、彼女の様子を見てびっくりしたよ」その話になると、唯花はひどく腹を立てた様子で、また佐々木家のクズどもを罵った。もし佐々木家の二人のクズが姉のところへ行かなければ、彼女と理仁も喧嘩にならなかったはずだ。いや、まあ、理仁のあの性格なら、遅かれ早かれまた喧嘩になるだろう。一体何度の衝突を過ぎれば、お互いの鋭い棘がなくなり、傷つけ合わなくなるのか、未だにわからないことだ。「明凛、今晩仕事が終わったら、バーに行って一緒に飲まない?」明凛は笑った。「結城さんが出張に行ったから、誰も見てないって大胆になったわね」「彼がいたって、私は行きたい場所に行くわ。私は彼を縛り付けないから、彼にもそうさせないからね」彼女の口調がおかしいと感じて、明凛の笑顔が消えた。親友の表情を注意深く見つめながら口を開いた。「唯花、結城さんとまた何かあったの?」彼女が風邪で寝込んだ日も、夫婦二人は危うく喧嘩になるところだった。その原因は琉生が唯花に花を贈るのを理仁に見られたからだった。そのせいで、彼女はまた従弟ともう一度真剣に話し合ったのだ。琉生の悔しそうな様子を思い出すと、明凛はどこか不安を感じていた。彼女の忠告なんて、琉生は全く聞く耳を持たなかった。彼は今もう道の突き当りに閉じ込められ、前へ進む道もなく、後ろへ戻るのも拒んでいて、ただあそこに無意味に止まるしかできないらしい。「ないわよ。ただ最近すごくストレスが溜まっているから、バーで少し飲んで発散したいだけ」彼

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第613話

    唯花が店に着いた時、ちょうど悟が店を出てきたところだった。彼は歩きながら振り返って手を振り「じゃあ、また」と言った。聞くまでもなく、それは明凛に言った言葉だった。唯花を見かけると、悟は丁寧に挨拶した。唯花は挨拶の代わりに微笑んだ。彼女は悟と親しいわけではなく、彼の身分も知ったので、少し緊張していた。悟も唯花とは気安く話せる話題がなく、何より彼女は親友の妻なのだ。その親友がいない場合は長くお喋りするのはよくないと考えた。「内海さん、俺はこれから会社に戻ります」「九条さん、お気をつけて」悟も彼女に笑って、車に乗り、すぐ離れていった。彼が去った後、唯花は店に入った。店に入ると、レジの上にバラの花束が置かれているのが目に入った。見た目からかなり大きな花束だ。花束だけでなく、明凛が普段好きなお菓子が大きい袋に詰められていて、レジの上に置いてあった。お菓子とバラ以外、悟は明凛が普段愛用しているスキンケア用品も何セットか贈ってきた。明凛は陽を抱いてレジの奥に座っていて、お菓子の袋を開けて陽と一緒に食べようとしていた。そして、唯花が入ってくるのを見て、明凛は笑った。「おばたん」陽は唯花を呼んだ後、またすぐに明凛の手にあるお菓子に視線を戻した。明凛は袋を開け、お菓子を取り出し陽に食べさせた。陽は食べながら小さい手で袋を掴もうとした。「陽ちゃん、食べ過ぎはよくないよ、ご飯が食べられなくなるよ」明凛はもう少し陽にあげた後、これ以上食べさせなかった。おやつを食べすぎて、ちゃんとしたご飯が入らなくなるのを心配していたのだ。唯花はお菓子の入った袋とスキンケア用品を見て、親友をからかった。「九条さんはもうあなたの好みを完全に把握してるわね。好きな食べ物と普段使ってるブランドの化粧品ばかりじゃない?」理仁は彼女にお菓子を買ってくれたのも、スキンケア用品を買ってくれたこともなかった。姫華からもらったフェイスパックを使ったら、彼は怒ることしかできなかった。それに、これから好きなブランドを彼に言ったら、買ってくるから、姫華からもらったものを使っちゃだめだとも言った。結局口だけで言って、何の行動もしてくれていない。実は、理仁は唯花にお菓子を買ったことがある。ただその時は、まだまだ余計なプライドが邪魔して、素直になれず、それ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第612話

    唯花は清水が掃除しようとするのを見て、特に気にせず先に出かけた。清水は彼女を玄関まで見送り、エレベーターに乗ったのを確認してから、家に戻り急いで携帯を取り出して理仁に電話をかけた。最初、理仁は電話に出なかった。清水は連続三回もかけたが、それでも出てくれなかった。仕方なく、清水は彼にメッセージを送った。「若旦那様、若奥様が薬を飲みました」すると、一分も経たず、理仁は自ら電話をかけてきた。「唯花さんが何の薬を飲んだんです?」理仁の声はいつものように感情が読めないくらい冷たくて低かったが、彼をよく知っている清水はわかったのだ。彼は今緊張している。「若奥様は寝不足で、頭と目が痛いと言って、鎮痛剤を飲みましたよ」理仁は一瞬無言になった。びっくりしたじゃないか!清水がはっきり説明してくれなかったせいで。彼は唯花が薬を飲んで極端な行動をしたのかと勘違いしたのだった。いや、これは彼の考えすぎだ。唯花は明るい性格だから、他の誰かがそんな極端な行動をしようとも彼女はしない。ましてや理仁が原因でそんな行動をすると思うなんて、自意識過剰にもほどがある。彼女の心の中で、彼は明凛とも比べられないのだ。「若旦那様、若奥様は朝食を食べた時いろいろ話してくださいました」清水はため息をついた。「若旦那様、どうか考えてください。若旦那様は一体若奥様のどこが好きなんですか。もし若旦那様の思う通りに彼女を変えようとしたら、変わった若奥様はまだ若旦那様が好きな彼女でしょうか」「彼女は何も話してくれなかったんですよ。隼翔も知っていることを、俺が知らないなんて」「若旦那様こそ、あらゆることを若奥様に話しているんですか。どうか忘れないでください。若旦那様はまだ正体を隠しているではありませんか。若旦那様のほうが多くのことを隠しているでしょう」理仁は暗い顔をした。「清水さん、どっちの味方なんだ?」「もちろん若旦那様の味方ですが、だからこそ、こんな身分に相応しくないことを口が酸っぱくなるぐらい言ってるんです。でないと、ただの使用人である私が、こんなことを言いませんよ」「清水さんのことはちゃんと尊重していますよ」理仁は確かにプライドが高く横暴だが、使用人に対する礼儀はきちんとしていた。「おばあ様は実家に帰ったばかりなのに、ま

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第611話

    「これは彼がまだ私のことを完全に家族として見ていない証拠ですよ。彼自身がそれをできてないのに、どうして私にだけ要求できるんですか?他人に厳しいのに、自分に甘いにもほどがあるでしょう。それは強引ではありませんか?なんでも彼を中心として考えないと、すぐ怒るし、しかも、私が彼を家族として見ていないって言いだすんですから。私も苛立って、彼が自己中心過ぎて、心が狭いじゃないって言ったら、あっちは電話を切っちゃいました。それでメッセージを送っても全然返事してくれませんでしたよ。毎回こうなんです。怒るとメッセージも電話も無視して、まるでわがままで面倒くさい彼女みたいです」清水「……」若旦那様は確かにそんな性格で、若奥様の分析はいかにも正しかった。理仁は小さい頃から後継者として育てられ、弟たちは常に彼を中心にしていた。結城グループを引き継いだ後は、おばあさんと両親はもう一切手を出さず、彼を本当に結城グループのトップにさせた。会社では、彼の言うことが絶対で、誰も反論できないのだ。弟たちも社員も、相変わらず彼を中心に動いている。元々独占欲が強い性分だったので、そんな環境で育てられたら、ますます自己中心的な性格になってしまった。彼は全てを支配するのに慣れてしまっているのだ。周りの人が自分に従うのが当然だと思っている。唯花は人生を彼に支配されたくないし、何でも従ったり依存したりするのも嫌だった。だから、理仁は自分が唯花に無視されたと思っていた。それで、唯花が彼を重視しておらず、家族として見ていないと感じてしまったのだ。しかし唯花の言った通り、彼自身はすべてのことを何も隠さずに彼女に教えているだろうか。「清水さん、日数を数えてくれますか?今回はこの冷戦が何日続くか見てみましょう。もうメッセージを送るのも面倒くさいと思いました。送ったってどうせ見ませんよね。また私のLINEを削除したかもしれませんよ。もし本当に削除してたら、今度こそ絶対また友だちに追加しませんからね!」清水は彼女を慰めた。「……結城さんは確かに少し横暴なところがありますが、本当に唯花さんが彼を重視していないと、他人扱いされてると思い込んで、それで怒っているんでしょう」「ちゃんと説明したのに、それでも納得できないなら、私にどうしろって?もういいわ、怒りたいなら勝

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第610話

    「内海さん、焦らなくて大丈夫ですから、ゆっくり朝ごはんを食べてください。さっきお姉さんから電話があって、教えてくれました。陽ちゃんをお店に連れて行ったら、そこに牧野さんがいらっしゃったそうです。だから私たちは直接お店に行けばいいから、お姉さんのお家に行かなくていいですよって」それを聞いて唯花はホッと胸をなでおろした。そして食卓に座った。清水は今朝いろいろな具材のおにぎりを用意してくれていた。それから、味噌汁とおやつに黄粉餅まで。黄粉、餅……唯花は携帯を取り出してその小皿に盛られた黄粉餅の写真を撮り、あの怒りん坊に送ってやった。もちろん、結城某氏は彼女に返事をしてこなかった。唯花はぶつくさと不満をこぼした。「内海さん、おにぎり、美味しくなかったですか?」清水は唯花が何かを呟いているのを聞いて、おにぎりが美味しくなかったのかと勘違いし、尋ねた。「内海さんはどんな具材がお好きなんですか。教えてくれれば、明日作りますよ」「清水さん、私好き嫌いないので、どんな具材でも好きですよ。ささ、清水さんも座って、二人で食べながらおしゃべりでもしましょうよ」理仁が家にいないので、清水はかなり気楽にできる。若奥様の前では若旦那様はかなり和らいだ雰囲気を持っているが、理仁のあの蓄積された威厳では清水が一緒に食卓を囲む時にはやはり常に気が抜けないのだ。「清水さん。あなたは結城家の九番目の末っ子君を何年もお世話してきたんですよね。理仁さんと知り合ってからもう何年も過ぎているでしょう?彼ってなんだか俺様な感じしません?自己中心でわがままだと思ったことありません?彼の前で少しも隠し事をしちゃいけないって要求されたことは?」清水はちょうど味噌汁に口をつけたところで、彼女からこの話を聞き、顔をあげて唯花のほうを向き、心配そうに尋ねた。「内海さん、どうしてこのようなことをお聞きになるんですか?」唯花は餅をつまみながら、言った。「昨日の夜、理仁さんとたぶん喧嘩になって、今、ちょっと、また冷戦に突入しちゃったかなって」清水「……」夜が明けたと思ったら、若旦那様と若奥様はまた喧嘩なさったのか。しかも、また冷戦に突入しただって?「内海さん、結城さんとどうして喧嘩になったんですか?」ここ暫くの間、若旦那様と若奥様の関係は見るからにと

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第609話

    数分後、ベッドに座って少し何かを考え、ベッドからおりて自分の生活用品を片付け始めた。そして、それを持って自分の部屋へと戻った。彼の部屋で、彼のベッドで寝るのをやめよう。唯花は怒って、また自分の部屋に戻り寝ることにしたのだ。そして一方の理仁もこの時悶々としていた。唯花からメッセージが届き、彼はそれを見たが返事はせず、そのまま削除してしまった。彼はこの時、ただ唯花から彼は心が狭いと責められ、家族として見てくれていないことだけが頭の中を巡っていた。携帯をテーブルの上に置き、理仁は起き上がってオフィスの中を行ったり来たり落ち着かない様子で、とてもイラついていた。そして、彼はコーヒーを入れに行った。コーヒーを飲んだ後、無理やり自分を落ち着かせて、仕事に没頭し始めた。徹夜する気だ。唯花ははじめは怒りで寝返りを打ち、なかなか寝付けなかったが、一時間少し粘ってやっと怒りが収まってきた。彼も別に初めてこんなふうになったわけではないし、毎回毎回彼のせいでこのように怒っていては、寿命が短くなってしまって、損してしまう。それで彼女は怒りを鎮めて、夢の世界へと旅立つことにした。怒りたい奴は勝手に怒っていればいいさ!すぐ怒る奴はいつも彼を中心にして世界が回っている。自分だって全てのことを彼女に教えることはできないくせに、彼女には小さい事から大きい事まで全てを話すよう要求するのだ。彼は今ここにいないのに、言ったとして、帰って来てくれるというのか?姉の今回の件は、実際彼女自身も特に何もしていないのだ。彼女の伯母が佐々木家の母親と娘に自己紹介をしただけで、あの二人を驚かせてしまったのだ。そしてその後どうするかを決めたのは姉だ。陽のことを考え、姉は最終的に和解することにしたのだ。これは姉が決めたことだ。彼女は姉が決めたことは何でも尊重する。それなのに彼ときたら、また隼翔が知っていて、彼は知らなかったと言って噛みついてきた。東隼翔は姉の会社の社長だぞ。そんな彼が会社の目の前で起きたことを知っているのは、それは当然のことだろう?別に彼女がわざわざ東隼翔に教えたわけではないというのに。なんだか彼は勝手にヤキモチを焼くみたいだ。この夜、唯花は遅い時間にやっと眠りにつくことができた。出張中の理仁はコーヒーを二杯飲んで、翌日の

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第608話

    姉と佐々木俊介が出会ってから、恋愛し、結婚、そして離婚して関係を終わらせ、危うくものすごい修羅場になるところまで行ったのを見てきて、唯花は誰かに頼るより、自分に頼るほうが良いと思うようになっていた。だから、配偶者であっても、完全に頼り切ってしまうわけにはいかない。なぜなら、その配偶者もまた別の人間の配偶者に変わってしまうかもしれないのだからだ。「つまり俺は心が狭い野郎だと?」理仁の声はとても低く重々しかった。まるで真冬の空気のように凍った冷たさが感じられた。彼は今彼女のことを大切に思っているからこそ、彼女のありとあらゆる事情を知っておきたいのだ。それなのに、彼女は自分から彼に教えることもなく、彼の心が狭いとまで言ってきた。ただ小さなことですぐに怒るとまで言われてしまったのだ。これは小さな事なのか?隼翔のように細かいところまで気が回らないような奴でさえも知っている事なのだぞ。しかも、そんな彼が教えてくれるまで理仁はこの件について知らなかったのだ。隼翔が理仁に教えておらず、彼も聞かなかったら、彼女はきっと永遠に教えてくれなかったことだろう。彼は彼女のことを本気で心配しているというのに、彼女のほうはそれを喜ぶこともなく、逆に彼に言っても意味はないと思っている。なぜなら、彼は今彼女の傍にいないからだ。「私はただ、あなたって怒りっぽいと思うの。いっつもあなた中心に物事を考えるし。少しでも他人があなたの意にそぐわないことをしたら、すぐに怒るでしょ」彼には多くの良いところがあるが、同じように欠点もたくさんあるのだった。人というものは完璧な存在ではない。だから唯花だって彼に対して満点、パーフェクトを望んではいない。彼女自身だってたくさん欠点があるのは、それは彼らが普通の人間だからだ。彼女が彼の欠点を指摘したら、改められる部分は改めればいい。それができない場合は彼らはお互いに衝突し合って、最終的に彼女が我慢するのを覚えるか、欠点を見ないようにして彼に対して大袈裟に反応しないようにするしかない。すると、理仁は電話を切ってしまった。唯花「……電話を切るなんて、これってもっと腹を立てたってこと?」彼女は携帯をベッドに放り投げ、少し腹が立ってきた。そしてぶつぶつと独り言を呟いた。「はっきり言ったでしょ、なんでまだ怒るのよ。怒りたいな

Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status