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第46話

Author: リンフェイ
「牧野さん、もっとゆっくりしていってくださいよ」

河西は優越感に浸り、それを見せつけるのに力を入れているところなのだ。今牧野明凛を帰すなんてそんなもったいないことはしたくなかった。

「河西さん、すみません、私たち合わないと思います。今後会うこともないでしょう」

牧野明凛は直球ストレートで彼に投げつけると、内海唯花の手を引いて去っていった。

歩いていると、親友が突然立ち止まって動かなかった。

「唯花、どうしたの?」

「私の夫だ」

「はあ?」

牧野明凛がまだそれに反応する前に結城理仁が二人の前に現れた。彼は深く沈んだ漆黒の瞳を内海唯花に落とした。口角を少し上げて何も言わなかった。しかし、内海唯花には彼から漂ってくる皮肉を感じ取っていた。

なにを皮肉っているのだろうか?

内海唯花は後ろを振り向き追ってきている河西を見てすぐに理解した。彼女はどういうことなのか説明した。「私の友達の明凛がお見合いに来たんです。私は彼女に付き添って来ただけですよ」

彼女は別に焦って次を探しに来たわけではなかった。

しかし結城理仁は依然として沈黙を保っていた。

牧野明凛はここにきてやっと親友のスピード結婚の相手に会うことができた。超クールでカッコイイ!

彼女は結城理仁が唯花のことを誤解しないように、事のいきさつを説明した。

結城理仁はようやく口を開き冷たく言った。「さっさと家に帰れ」

内海唯花は一言「うん」と言って彼に尋ねた。「あなたはどうしてここに?」

「ばあちゃんがこの店の菓子を買ってこいと言ってきたんだ。ここのが好きだからな」

結城理仁はおばあさんがわざとしたことだとわかった。内海唯花が親友のお見合いに付き添って来ることを知って、わざわざ彼にお菓子を買いに行かせたのだ。

内海唯花が他の男と一緒にコーヒーを飲んでいるのを目撃し、孫息子がヤキモチをやくと思ったのだろう。

「ああ」

内海唯花は簡単にそれに答えると、夫婦はお互い黙ってしまった。

結局内海唯花がこの膠着状態を打開して言った。「じゃあ私先に帰ります。おばあちゃんにお菓子を買って持っていてあげてください。ドアはロックしないでおきますから」

結城理仁は低く冷たい声で答えて言った。「わかった」

夫婦二人はこのようにして分かれた。

内海唯花は親友のバイクに乗ってこの店を離れた。結城理仁はお菓子
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