로그인持ってきた写真に息子が全く興味を示さないのを見て、寛哉はがっかりし、写真を封筒に戻してから気落ちした様子で言った。「その女性がいつになったら現れることか、結城おばあ様が戻られたそうだから、もう一度会いに行ってこよう。またあの先生に来てもらってその女性が一体どこにいるのか占っていただくんだ」弦は言った。「父さん、先生も縁は尽きたから、私たちにはもう会わないと言っていたじゃないか。おばあ様にすらも会わないと言っていた。あのような方は平凡な私たちとは違うんだよ。彼が会わないって言うんだから、こちらから探しに行っても見つけられないだろう」寛哉は黙ってしまった。あの占い師は確かにそのように言っていた。彼は、弦たちと縁があったから会って一度だけ運命を占っただけだと言った。その縁が尽きれば、二度と会うことはない。それに、弦たちと会った後には、おばあさんとの縁ももう尽きたと言ったのだ。そしておばあさんにはもう連絡をしてこないように言っていた。おばあさんは名残惜しかったが、相手を尊重することにした。ほとんどの人があの占い師に会ったことがない。このように突然現れ、いつの間にか消えるような人物だから、ただ伝説のようになってしまっているのだ。その言葉を聞き、寛哉は落胆して書斎から出ていった。弦は心配して父親に言った。「父さん、そんなに落ち込まないでよ。その時は必ず来るものだろう。彼も私には将来妻ができると言っていたんだから、いつかそうなるんだ。いつもいつも心配しないで、気長に待っていればいいんだよ」しかし、寛哉は息子の話など全く聞こえていないようだった。失望して下におりていった。寛哉の妻である九条静江(くじょう しずえ)が部屋に入って、夫の落ち込んだ様子に気づいた。夫が手に持っているあの大きな封筒に視線を移し、一体どういうことなのか理解し、気遣った。「どうしたの?あの子ったらまた何も感じなかったのね?何度か見たらちょっとは違うんじゃない?」寛哉はあの封筒をローテーブルの上に置いて、ソファに座った。「意味ない。あいつは全く反応しなかった。誰に対してもじっと見ることはなかった」静江はため息をついた。「もう何度目よ?」彼女は写真を取り出して見た後、言った。「もしかして、この中の女性たちは綺麗じゃないのかしら?」「綺麗な娘
寛哉はソファの前まで来ると、封筒をローテーブルの上に置いた。そしてソファに座り、振り返って息子にさっさと妻候補を選べと命令した。「父さん、言っただろう。私はその人たちには全く興味がないんだって」弦はそう言いながら父親に近づいていった。寛哉は険しい顔をして言った。「まだ見てもいないのに、興味がないだなんてどうしてわかるんだ?今回は二十四歳の娘さんたちを探してきたんだ。あの先生がお前は今年二十四歳の女性が運命の相手だと言っていただろう。お前とは十歳も差があるんだから、相手がお前をおじさん扱いして嫌がるかもしれん。しかし、そうであっても、父さんがなんとかしてその相手と結婚できるようにしてみせる」弦は不機嫌そうな顔で言った。「運命の女性なら、別に父さんが探す必要はない。私が自分で見つけて彼女にアプローチするんだから」弦も別に何もできない男ではない。以前の彼は本当に遊ぶのが好きで、そんなに早く結婚というものに縛られたくなかった。それから自分はパーソナリティ障害があることが判明した。すると、結婚したくてもできないことがわかった。彼は自分の意思では女性に興味を持つことができないのだから、彼が九条家の跡取りであっても、無理に結婚して相手の女性を苦しめるわけにいかない。「だったら、さっさと見てみなさい。私も母さんもこの悩みで髪が真っ白だぞ。このバカ息子め、全く焦る様子もなく気にしていないんだからな。一生独身を貫くつもりか?」息子がそれでも写真を取り出そうともしないので、寛哉はまた怒りを爆発させていた。寛哉はこの息子のためにいろいろと考えてあげているというのに、息子のほうはそれを理解してくれない。弦はただ形だけで、ゆっくりと写真に手を伸ばし、父親の隣に座った。そして一枚ずつ写真を見ていった。寛哉は息子のために最大限尽くしていた。写真は全て二十四歳で未婚の女性である共通点を除いて、あとはふくよかな体型の人、細めの人、綺麗な人、見た目はそこまで良くない人、普通な人などさまざまだった。弦は全ての写真を見終わると、写真を揃えてまた封筒に戻した。「どうだ?全然何も感じなかったか?」寛哉は息子が一切反応を示さず穏やかにしているのを見て、また徒労に終わったとわかった。彼は息子から封筒を取りあげ、中から全ての写真を出して一
弦の身分、地位、それから家柄を除いても、彼の経済力や持っている魅力だけでも男たちの中では希少だ。彼は理仁や悟に引けを取らない。弦は写真の女性を見つめ、思わず顔を近づけてキスをし、ヘラヘラと笑いだした。そうか、この愛おしい感覚が普通の男性が好きな相手を見る時の心境なのか?生まれてから、かれこれ三十年あまり、彼が初めて経験する感覚だった。以前、彼がどの女性を見ても何も感じなかったのは、てっきり自分の目が肥えすぎていて周りの女性では満足できないからだと思っていた。ある程度の年齢になってクラブなどへ足を運んだ時もやはりどの女性にも反応しなかった。そして彼は自分が女性に対して要求が高すぎるのではなく、ただ体の問題だったのだと気づいた。しかし、彼は面子というものを重視するため、病院で検査を受けたことはなかった。三十歳になると、両親からの結婚の催促が激しくなった。彼も十分遊んだし、成熟した考え方になった。有名な医者に診てもらい、自分がパーソナリティ障害を持っていることが判明した。それで両親も催促することはなくなった。彼が普通の男性のように女性に興味を持つ可能性はないかもしれないからだ。そんな中、結城おばあさんが首をつっこんでこなければ、弦は実の父親を鼠が猫を見るかのように避けて逃げ回ることもなかっただろう。「今日からは、もう神崎さんに花を贈ったりはできないな。君に私と神崎さんに男女の関係があると思われたら、誤解を解くことができなくなる」弦はまだ相手の名前もわからないというのに、彼女のために操を立てようとしている。一颯の手助けをすることで、未来の妻に誤解されては困る。弦の出現によって、比較対象が生まれ、詩乃の善に対する態度もかなり良くなった。今ではほぼ善を神崎家の婿として黙認している。弦は一颯との賭けもそろそろ終わりを迎えていいと思った。詩乃はもう一颯と姫華をくっつけようと彼につきまとってはいない。ドンドンドン。この時ドアをノックする、いや、壊そうとする音が聞こえてきた。聞くまでもなく、あの乱暴な叩き方は弦の父親の寛哉である。「弦、開けなさい!」寛哉は外でドアを蹴破ろうとしながら、息子にドアを開けるよう命令した。「車を見かけたから帰っていることはわかっているぞ。さっさとドアを開けろ。父さんはまた素晴らしい女
ただ、冴が自分にここまでいろんな意見を持っていたとは明凛は想像していなかった。悟の従姉というだけで助かった。九条家の栄養士をやっているが、普段は九条家で暮らしているわけではない。それに、明凛が妊娠したから、冴はよく来るようになっただけだ。いくら冴が明凛に対して意見を持っていようと、何かの影響を受けるわけでない。小百合はまた唯花の話もしていた。結城家もきっと唯花のために栄養士を雇って毎日三食メニューを考えるだろうと言っていた。そうなるかもしれないが、結城家はきっと唯花に制限をかけることはしないはずだ。小百合と冴の話が終わって、数分過ぎてから明凛はやっとトイレから出てきた。「明凛さん、お腹でも痛い?」小百合は心配そうに尋ねた。「いいえ、そんなことないですよ」明凛は気まずそうに言った。「いつもトイレに行く時に携帯を持って行っちゃう癖があって」それ以上言わなかったが、つまりどういうことなのかわかる。現代の若者はみんなトイレでも携帯を扱うのが好きなものだろう?「明凛さん、今は妊娠中だから、携帯から離れるようにしたほうがいいですよ。電磁波の影響があるから」冴は反射的にそう言った。明凛は笑って言った。「別に常に携帯をいじってるわけじゃないですよ。普段はお店にいて、基本的に本を読んでいて携帯は扱ってないから」そう言うと、彼女は小百合に尋ねた。「お義母さん、準備できましたか?先に唯花に届けてきます。あの子、もう検査が終わって病院から帰ってきているから」「ええ、できているわ」小百合は微笑みながら使用人を呼んで、準備した物を明凛が乗る車に運ばせた。すぐに、明凛は小百合と冴に見つめられる中、出かけていった。一方、弦のほうは自分の書斎にある椅子にもたれかかり、さっき拾ってきたあのキーケースを触っていた。そして何度も写真を見ていた。見ているうちに、彼はどんどん笑顔になっていった。その長い指でそっと写真の女性を触っていた。あまりにも優しいその動作を、もし彼をよく知る人が見れば、きっと思わず声が出るほど驚くことだろう。「この可愛らしい素敵な笑顔を見ていると心地よくなるな。思わず顔が緩んでしまう」弦は写真に触れながら独り言を呟いていた。彼には写真の中の女性が天使のように見えている。そのキラキラと可愛らしい
冴は小百合をちらりと見た。小百合が何も言わないので、彼女もそれ以上は言わなかった。明凛は小百合の義理の娘だからだ。それに明凛のお腹にいるのは九条家の次の世代だから、冴もただ栄養士としての意見を言ったまでだ。小百合も実際あまり口うるさく言いたくないのだ。明凛がさっき言ったのは彼女の母親が漬けたものだからだ。それに嫁も毎日実家に帰って食べているわけではなく、たまに帰ってちょっと食べるくらいなのだから、別に大したことではない。「ちょっとお手洗いに」明凛はそう言うと、サッとトイレに行った。明凛がいなくなると、冴は小声で話し始めた。「おば様、明凛さんって、もしかして私が食事に関して口うるさく厳しいと思っているんじゃないでしょうか?漬物は確かにあまり食べないほうがいいです。もちろん普段私たちもです。私たち両家とも、食卓にああいうものが出たことはないでしょう。明凛さんはとても好きみたいですね。ご実家に戻って食事したとか、つまり私が考案したメニューが口に合わないんでしょうか?おば様にお願いされたから、悟君のことも考えて、私も来たんですよ」小百合は穏やかな声で姪に言った。「妊娠すると好みが変わるのよ。妊娠中にあれを食べたい!って思ったらどうしても口に入れたくなるの。あなたが考えてくれたメニューはとても素晴らしいわ。栄養豊富で野菜中心だし、明凛さんも今では健康的な肉の付き方になって、顔色もよくなったわ。あちらは明凛さんのご実家で、二十年以上暮らしてきたのだから、お母様がお作りになる料理の味に慣れているのは当然よ。たまにその家庭料理を食べたくなるのはおかしくないわ。だから気にしないでね。明凛さんはそんなタイプの子じゃないのよ。あなたのことを嫌がることはないから。それに、私たちだって実家に帰って食べるな、だなんて言えないでしょ?ただ一、二回おうちでお漬物を食べたくらいでたくさんじゃないし、問題ないわよ。妊婦の検診ではお医者様も子供は問題なく育ってるって言ってるもの。彼女はつわりもなく食べられるから幸せよね」小百合は言った。「今彼女の親友である唯花ちゃんって子が妊娠してるんだけど、きっと結城家も栄養士を頼んで彼女のために食事メニューを考えるはずよ。同じ境遇の親友がいるんだもの、文句はないに決まってる。だから気にしないでね」冴は暫くの間沈黙してか
栄養士は外で食事したい人に構うことはない。彼女はおばである小百合に頼まれて、家族の健康管理をするために来ている。彼女は家で食事をとる人のことだけ気にかけ、外食したい人のことまで考えることはなかった。それに今、彼女が最も重要視しているのは、従弟の奥さんだ。悟は若者世代の中で一番に結婚し、妻の明凛のお腹には次の世代が宿っている。小百合だけがその子供を重要視しているわけでなく、一族みんながそうだ。明凛が健康で賢い子供を生めるように、栄養士は妊婦用のメニューを考案している。栄養豊富で、種類もバラエティーに富んでいる。毎日違った食事メニューで、明凛が好きか嫌いかによってメニューが変わることはない。明凛は食いしん坊なので、好き嫌いがないから良かった。だから今までもずっと問題なく過ごせている。足音が聞こえると、小百合と栄養士の冴の二人は同時に部屋の入り口に目線を向けた。「明凛さん、おかえり」明凛が帰ってきたのを見ると、小百合は手元のお祝いを置き、彼女のほうへやって来て微笑んだ。「こんなに暑い日に、戻ってきてもらって悪かったわね」「大丈夫です。出かける時にはエアコンがかかった車に乗っているから、全然暑くありませんので」明凛は笑って、祝い品のほうを見て、また冴に会釈した。「冴さん」冴はただ会釈するだけで何も言わなかった。明凛は冴が無口なことに慣れていた。「あのね、唯花さんに妊娠のお祝いを用意したから、本来自分で届けるつもりだったんだけど、あなたもきっと持っていくだろうと思って、それなら、私たちで一緒に準備してあなたに届けてもらおうかと思ったのよ」小百合はそう言いながら、明凛が喉が乾いていないか気にした。「お義母さん、喉は乾いていませんよ。ここまでいろいろ考えてくださってありがとうございます」明凛は小百合のほうへ近づいていって、サッと準備されたものを見てみた。そこにあったものは全て妊婦向けのものばかりで、冴の意見を参考にしたらしく、明凛は全く心配していなかった。「明凛さん、何か漬物系でも食べました?」この時、冴が突然明凛に尋ねた。明凛は答えずに黙った。冴は明凛が昼に食べたものまで、まるで鼻の利く犬のように、話すときに出る息から嗅ぎ取ったのだろうか。本当に犬のようだ。小百合も明凛を見た。明凛は正直
理仁はしばらく唇を固く閉じて黙りこんだが、やがて口を開いた。「彼女は冷静になりたいって言ったから、邪魔しないほうがいい。少なくとも今は、行かないでくれ」おばあさんは頷いた。「理仁、あなたが唯花ちゃんを実家に連れて来たこと、おばあちゃんは嬉しく思ってるのよ。成長したわね。以前のように強引に引き留めたりしないで、適当な距離を置いて、相手に一息つかせてあげる時間を与えることを覚えたのは、良いことだと思うわ」理仁の顔色は相変わらず暗いままだった。「おばあちゃんは二、三日したら唯花ちゃんに会いに行くわ、あなたのためじゃなくて、おばあちゃんが彼女に謝らないといけないからね。最初に彼女を騙したの
陽は相変わらずご飯粒だらけの顔になっていた。テーブルの上にもたくさん粒が落ちている。詩乃と姫華はそんな陽のやりたいようにさせていた。詩乃は、小さな子供は自分のことは自分でやらせたほうがいいという考え方だったのだ。最初うまくいかなくても、何度も何度も繰り返し練習することで、だんだんコツを掴んでいき、できるようになっていくものだからである。あと数カ月すれば、陽も三歳になる。だから、自分で食べるようになるべきなのだ。理仁は陽の頭をなでなでしてやり、神崎夫人のほうへ向き、落ち着いた声でひとこと「神崎夫人、お邪魔いたします」と挨拶した。詩乃は軽くそれに返事をし、優しい声で言った。「さあ、食事
明凛は清水に出前を取り、店の鍵を彼女に預けて言った。「清水さん、ご飯を食べ終わったら、帰りたい時にお店を閉めちゃってください。鍵はそのまま持っててもらって構いません。それか、唯花に渡してもらってもいいですよ」「若奥様はここ数日時間がないとおっしゃっていましたので、その間は私がお手伝いいたします。だから、鍵はそのまま私が持っておきましょう」清水は笑って言った。「お二人はどうぞごゆっくりお食事に行かれてください。ここは私にお任せを」清水がこの本屋を手伝うのもこれが初めてというわけではない。前に何度も手伝って、仕事内容もすっかり覚えてしまった。だから、彼女一人で店番しても、店の営業に何か
俊介は姉をきつく睨んだ。「姉さん、俺の部屋をちゃんと片付けてくれよ。それに、これから恭弥のしつけをちゃんとしてよ。毎回来るたびに大騒ぎになるなんて。前からよく陽をいじめたりおもちゃを奪ったりしてただろ。この前は嘘もついて、陽を病院送りにさせてしまったってこと、もう忘れたのか。恭弥がまだ小さいからって放っておいたらよくないぞ。今ちゃんとしつけしないと、大きくなったら手が付けられなくなるぞ」英子は反論しようとしたが、自分が来た目的を思い出し、ぶつぶつと承諾した。「わかったわ、ちゃんと片付けてあげるから。でも恭弥は元からああいう性格だから、どうしろって言うの?」俊介は妻をなだめた後、姉に