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仇敵の妻〜私を救い出した夫は黒幕〜
仇敵の妻〜私を救い出した夫は黒幕〜
Auteur: 方円

第1話

Auteur: 方円
我が家が取り潰しに遭った日、死罪を待つ身から高官へと成り上がった幼馴染の塗景(とけい)は、皇帝から賜った死罪を免じる証を手に、皇宮の正殿の長い階段を一段一段、膝をついたまま登り、私・沈卿雲(しんけいうん)を妻に迎えたいと懇願した。

結婚初夜、私たちは寝所で、一晩に何度も重なり合った。

だが、わずか数ヶ月後のこと。身重の体で彼にお茶を届けに行くと、塗景と側近のこんな会話を耳にしてしまった。

「塗様。沈家に、かつてご一族百名余りを無残に殺されたというのに……

一族の仇を討ち果たしたのち、なぜ仇の娘など救い出し、あろうことか妻に迎えたのですか?」

「復讐のためだ。なぜ俺だけが恨みを背負い、生きた心地もしない地獄を味わわねばならない?

沈卿雲にも、俺と同じ地獄を歩ませる。生きていれば不幸になり、死ぬことも許されない苦しみの中でな」

胸が張り裂けるほどの絶望のなか、私はひどく病弱な息子を産み落とした。

塗景は冷ややかな目で私を見下ろした。

「沈家の血を引く人間とは、どいつもこいつも出来損ないだな。

お前と同じように」

それから6年間。塗景を殺して息子の塗書陽(としょよう)を連れ去ろうと、132回も企てた。

しかし、そのすべてが失敗に終わった。

そしてあの日。塗書陽がうっかり檀木の箱を落として壊してしまった。罰として祠堂(しどう・先祖を祀る部屋)の冷たい床に跪かされたあの子は、意識を失ってしまった。

私はまたしても毒入りの酒を用意し、狂ったように復讐しようとした。

その時、側室の祁絮(きじょ)が塗景の腕の中で甘く笑う声が聞こえた。

「景さん、卿雲さんが命懸けで産んだ子供を、景さんが自分の手で殺したと知ったらどうかしら?

6年間、私たちの子の面倒を見させていたと知ったら、狂ってしまうんじゃないかしら?」

扉の向こうで続いていた嘲りの声は途絶え、やがて聞こえてきたのは、情事の音だった。

私は全身の血が凍りつくような心地でその場に立ち尽くし、手にした毒入りの酒をただ呆然と見つめていた。

6年の間、何度も塗景を殺して逃げようと計画していたのに。

私の努力も、憎しみも、すべては滑稽な笑い話にすぎなかったのか?

私の子は、私の生きる希望は、もう6年も前に実の父親の手で殺されていたのだ。

卑猥な嬌声が窓から漏れ、耳に突き刺さる。

酒を入れた器を握りしめる手が、激しく震えていた。

カチャンという音とともに、部屋の前で、酒の器が砕け散った。

屋内の音がピタリと止まる。

部屋から出てきた二人は、どちらも衣服がだらしなく乱れた姿だった。

祁絮は私を見て、挑発的な笑みを浮かべた。

「卿雲さん、ここで何をしてるの?

まさか、景さんの気を引こうとでもしてるの?」

私は祁絮を無視して、後ろにいる塗景を見つめた。

塗景はいつだって、人前では高潔なふりをしている。

私を見つけたその目元には、濃い嘲りが浮かんでいた。

あふれんばかりの殺意に任せ、袖に隠した刃物を塗景に向けた。

しかし一瞬のうちに、彼は刃物を奪い、それを私の喉元へ突きつけた。

またこれだ。いつもと同じ、私は塗景を殺したいと願い、復讐を望んできたのに。

一度だって成功した試しはない。

塗景の言う通り、私は良く生きることも、いっそ死ぬこともできない。

視線が絡み合い、二人とも無意識に目をそらす。

お互いを見る目つきは、まるで汚物を見るかのように。

あまりにも惨めで、息が詰まるような瞬間だった。

塗景は私を突き飛ばすと、祁絮の腰を抱いて鼻で笑った。

「子供ひとりの躾すらできないくせに、のこのこ騒ぎを起こしに来るとはな」

そう言うと、塗景は砕けた器の残骸に一瞥を投げた。

「書陽の命乞いにでも来たのか?

沈卿雲。お前は人に物を頼む時の『態度』というものを、誰からも教わらなかったのか?」

どんな態度で頼めばいい?今まで塗景を殺そうとして、返り討ちにあう時と同じように?

塗景が求めるままに縋りつけというの?

私は鼻で笑い、無言で顔をそらした。

過去の6年と1ヶ月、そして16日の間に。私は塗景を132回殺そうとした。

しかし塗景はいつでも何一つ損なわれることなく私の前に立ち、無様な私を笑うのだ。

その後、塗景は私を暗い部屋へ引きずり込み、傷つくまでいたぶる。

なのに――その後でわざわざ最高級の塗り薬を取り寄せさせ、私が意識を失っている隙に、ひそかにその薬を塗ってくれる。
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