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第354話

Auteur: 星柚子
正修の瞳の色が、ふっと深く沈んだ。喉仏が二度、ゆっくりと上下した。

奈穂が体を起こそうとした瞬間、彼は不意に彼女の後頭部を引き寄せて、そのまま深く口づけた。

さっきの軽いキスだけで、足りるわけがない。

「ん……」

長いキスが終わり、ようやく解放される。奈穂は反射的にドアのほうを見た。

誰も入ってきていない。

「……こ、ここって監視カメラとかないよね?」不安になってきょろきょろ見回した。

正式な婚約者同士とはいえ、あんな濃厚なキスを他人に見られるのはやっぱり恥ずかしい。

正修は笑った。「もうキスし終わってから心配するの、遅くない?」

そもそも、彼ら専用の個室だ。たとえ監視カメラがあっても、誰もそれをオンにしようとはしないだろう。

「もう……全部あなたのせいでしょ」奈穂は彼を睨み、ぶつぶつ言いながら席に戻る。

「さっきは『機嫌直してあげる』って言ってたのに、今度は俺が悪いのか」正修は苦笑した。

奈穂はくすっと笑い、真面目な顔になった。「ねえ、ほんとに。私、あなたしか好きじゃないからね。どれだけ声かけられても、他の人なんて見ないよ」

少し考えてから、控えめに付け足し
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