Masuk主人公の伊崎紗千香は声優の仲佐皓也に憧れ声優の道へ。 ある時、憧れである仲佐と仕事を一緒する事に。仲佐は低音ボイスで甘い言葉を吐き、世の女性達を虜にしてきた声優。歳を感じさせない容姿と無意識に放たれる色気は犯罪レベル。 紗千香はその色気に当てられて失敗ばかり。 「俺が教えてあげる」 年齢=彼氏いない歴の紗千香に男を教えてあげると宣言。 突如訪れた憧れの人と甘い時間。 憧れから始まる恋……時々嫉妬に執着?
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「紗千香が好きだよ。愛してる」 その言葉を聞いた紗千香の頬に涙が伝う。 ずっと、ずっと望んでいた言葉。何度も諦めようとしたし、悩み、苦しみもした。 心臓が押し潰されそうだったし、感情だってぐちゃぐちゃだった。 仲佐さんに会ったら色々問い詰めてやろうと覚悟も決めていたのに、そんなの丸ごと何処かに吹き飛んでしまった。 「すぐにでも返事を聞きたい所だけど、まずは俺にも聞きたい事があるでしょう?」 聞いていいのだろうか?重い女だって思われない?このまま黙っていれば上手く収まるんじゃない? 頭の中で自問自答を繰り返していたが、仲佐さんの笑顔に後押しされ、ゆっくり頷いてしまった。 気持ちを落ち着かせるように深く息を吸い、口を開いた。 「……仲佐さんの気持ちを疑う訳ではないんですが……本当に私でいいんですか?仲佐さんは香里さんと一緒にいる時の方が楽しそうだったし……」 一度口を開いてしまったら、気持ちが決壊してしまい止めることが出来ない。 「私は香里さんと違って大人じゃないから、うまく感情をコントロールできないんです。好きな人が他の女性と話してるだけで胸が痛むし、何処で誰と一緒にいるのかとか不安になるような重い女なんです。そんなの、仲佐さんの負担にしかならない。そんな自分が嫌で、まだ傷が浅いうちにと距離を取ってみたんです……自分勝手でしょう?」 自嘲しながら言い切る頃には涙で視界が曇り、前が良く見えない。 仲佐がどんな表情をしているのか分からず、紗千香は顔を俯かせ答えを待った。 言いたいことは言った。この後、どんな結果になろうとも、後悔はない。覚悟を決め、握りしめている拳に力が籠る。 だが、すぐに大きな腕に抱きしめられた。 「ごめん。泣いてる紗千香ちゃんには悪いけど、凄く嬉しい。だって、そ
優弥に背中を押され、仲佐さんと話す事とになったが…… (沈黙が重い……) いざ面と向かってしまうと何を話していいのか、頭が真っ白になって言葉が出てこない。 空に浮かぶ雲を眺めて、気持ちを落ち着かせようと深呼吸を何度もするが、落ち着くどころか緊張感が増してくる。 「……ごめんね」 か細い声が重い空気を打ち破った。 「……え?」 何が?とは聞けず、空気が抜けた様な声しか出ない。 「不安にさせちゃったね……」 「!」 眉を下げて弱々しく微笑む仲佐に、紗千香は戸惑いを隠せない。その言葉の意味が分らないほど馬鹿じゃない。 「君にはしっかり話さなきゃいけないと思いつつ、何も聞いてこない君に甘えてしまっていた」 項垂れ、頭を抱えている。まるで、懺悔している様に…… 「……噂通り、香里とは男女の仲だった。お互い、いい歳だからね。結婚も視野に入れていたんだけど、ちょうど仕事が忙しくなり始めた頃でね。仕事と恋愛の両立が出来ずに別れてしまったんだ」 「……」 「香里も納得してくれた思っていた。……けど、今頃になって寄りを戻したいと言って来た」 ドキッと胸が跳ねる。答えを聞きたいけど、聞くのが怖い。 「大丈夫。聞いて?」 私の様子に気が付いて、手を握りしめながら真っ直ぐに目を見てくる。いつものように穏やかで優しい瞳。たったそれだけの事なのに、安心感を得られた。 「香里の事は愛していたし、別れたばかりの時は後悔もした。いつまでも考えていても仕方ないと、忘れるように仕事に打ち込んでいた。しばらくすれば、香里の事も忘れ仕事ばかりの日常に戻った」 昔を思い出しながら語る仲佐さんは何処か寂し気だけど、愛おしそうな表
「私は……」 亜美に問われて、すぐには答えられず言葉に詰まる。 亜美の言う通り、優弥を選べば幸せになれる。けど、それは私の本当の気持ちじゃない。優弥ならそれも全て受け止めてくれるとは思う。でも、それは優弥の優しさに甘えて優弥の気持ちを利用しているだけ。 それで幸せと言えるだろうか……「私は…仲佐さんと一緒にいたい。どんな結果になろうと後悔はしない」 真っ直ぐ、亜美の目を見つめたまま言い切った。 二人の間に重苦しい空気が漂い、しばしの沈黙。息が止まりそうなほどの緊張感に、紗千香の額に汗が滲む。「──はぁ~」 大きな溜息が聞こえ、息を吹き返した。「まったく、あんたは一度決めたら頑固なんだから……」 眉を下げ、苦い笑みを浮かべた。「正直、私は優弥の肩を持ちたいけど、あんたの気持ちも大事にしたい」「亜美…」「まあ、当たって砕けるのも、一度くらいは酷い目に合うのも経験。いつでも泣ける場は用意しておいてあげる」 子供に向けるよな温かい笑顔で勇気づけられた。 まさか素直に受け入れてもらえるとは思わず、少し意外だった。学生時代の亜美だったら、何が何でも止めていた。 亜美もまた、子供が出来て心に変化が生まれたんだろう。みんな恋をして成長していく。(私も前に進まなきゃだね……)「亜美、ありがとう」「別に、私は特別なことは言ってないよ。ただ、あの紗千香が本気の恋をしてることが嬉しいだけ」「……本当、恋って面倒で苦しいね」「それも思い出になる時がくるよ」「そうなればいいな……」 明日には地元を離れる。帰ったら、仲佐さんと話をしよう。自分の気持ちを話して、仲佐さんの気持ちを聞こう。いつまでも逃げていられない。 *** そうして次の日、帰り支度をして家を出ると、目の前に優弥が立っていた。「行くのか?」「うん
「この後、時間ある?一緒にランチなんてどうよ?」 そう、亜美に誘われるがまま、ファミレスへとやって来た。「ごめんね。子供がいると小洒落たカフェは入れなくて」「ううん。私もファミレスが気が楽だし」 子供をあやしながら、私の事まで気にしてくれる。母親は偉大だと言うが、本当だと実感する。「ほら、何食べる?イチゴあるよ」 メニューを開き、まだ読み書きのできない娘に指をさして何が食べたいか問う姿は、母そのもの。小さい頃から知っている人が、お母さんしている姿は、見ていて不思議な感じがする。 嫌な感じではなく、新鮮でほのぼのとする。「亜美も立派なお母さんね」「そうはいうけど、子育てってホント大変よ?言うことは聞いてくれないし、部屋は散らかってばっかり。この間も、買ったばっかりの服、汚されたんだから」 怒ったような口調で話すが、顔は全然そんな事ない。あまりにも態度と言葉がちぐはぐだもんだから、思わずクスッと吹き出した。「もぉ!紗千香も早く結婚しなさい!」「いや、私は……」「優弥がいるじゃない」 絶対出てくると思った……「あいつほど紗千香の事知ってる人いないでしょ。学生の頃からずっとアンタ一筋だし。浮気の心配はないでしょ?」「……」 今の私には、物凄く刺さる言葉。一途に想われているのは嬉しいが、その反面、ちゃんと向き合わないといけないというプレッシャーがある。「それとも、他に気になる人がいる感じ?」「!!」 黙って肩を震わすと、目ざとい亜美はニヤッと口角を吊り上げた。「──へぇ?それは知らないなぁ?何処のどいつだ?うちの紗千香の心を奪ったのは」 楽しげに詰め寄ってくる。こうなった亜美は執拗い。話すまで問い詰めて来るのが目に見えている。「……怒らないでよ……?」 そう前置きした上で、仲佐さんに対する気持ちや関係……香里さんの事に至るまでを話して聞かせた