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第208話

Author: 小粒キャンディ
しかしこの時、狭い路地の向かい側に、見慣れた人影が陸斗の視界に映った。

カジュアルなスポーツウェアを着た女性が大きな旅行バッグを背負い、ちょうど信号を渡っているところだった。

陸斗が彼女を見た瞬間、彼女のほうも陸斗のほうへ視線を向けたようだった。

二人は少しの間視線を交わし、女性はそそくさと道を曲がって走っていった。そして陸斗のほうは視線をそらさず彼女が近くにある病院に入っていくのを見ていた。

夏海は一気に病院のエレベーターまで駆けていって、ようやく一息ついた。

彼女はさっき見間違えてはいなかった。あの向かい側にいたのは確かに西園寺陸斗だ。陸斗の傍には誰か女性がいて、その横顔にはどうも見覚えがあった。

相手と何か話したわけでもないのに、この時の彼女はどうもソワソワして落ち着かなかった。なんだか、見てはいけないものを見てしまったような感覚なのだ。

夏海は病院の大部屋のドアを開けた。すると隅の狭いベッドの上に母親と弟が一緒にいた。

「姉ちゃん、来たんだね」須藤昂輝(すどう こうき)が口を開くと、夏海は急いで静かにするよう、しいっーと口元に指を立てた。

母親は就寝中で、起こ
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