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偽装死した夫が義姉と不倫?私は最高の男と再婚
偽装死した夫が義姉と不倫?私は最高の男と再婚
Auteur: ハル

第1話

Auteur: ハル
菅原青葉(すがわら あおば)と菅原拓海(すがわら たくみ)が結婚して3年目、拓海は任務中に命を落とした。

拓海の双子の兄である菅原拓真(すがわら たくま)が、血に染まったバッジを持ち帰り、かすれた声で言った。「青葉さん、拓海は……もう戻ってこない」

青葉はその場に崩れ落ち、意識を失った。

目を覚ますと、青葉は狂ったように拓海を捜しに行こうとし、それを義母の菅原沢子(すがわら さわこ)が抱き留めた。

その後、青葉は三度も自殺を図り、そのたびに助けられた。

みんなこう言っていた。「菅原隊長と奥さんは、本当に愛し合っていたんだな……」

ええ、本当に。

それほど「仲が良かった」からこそ、拓海が「死んで」3ヶ月が経った頃、ようやく青葉は真実に気づいたのだ。

死んだのが、拓海ではないということに。

……

三度目の自殺未遂から助かった日の夜。青葉は青ざめた顔で義実家へ向かった。拓海の遺品を引き取って心を慰めようとした時、奥の部屋からひそひそ話が聞こえてきた。

「拓海、いつまで隠し通すつもり?青葉さんはあなたのせいで3回も自殺を図っているのよ!」

青葉の爪が、手のひらに強く食い込んだ。

拓海?

義母はなぜ、拓真を「拓海」と呼んでいるのか?

「母さん、もう少し待って」その声は拓真のものだったが、かつて拓海が青葉をなだめる時にそっくりだった。

「兄さんは死ぬ間際、俺に雪乃のことを託した。雪乃は体が弱いから、兄さんの死の事実を聞けば生きていられない。だから俺が兄さんになりすまして、雪乃との間に子どもを作る。そうすれば、その子が生きる支えになるはずだ」

青葉の全身の血が凍りついた。耳に入ってきた言葉が信じられなかった。

死んだのは拓真であって、拓海ではなかった。

自分の夫は生きていた。しかもその兄に成りすまし、毎日、隣の部屋で菅原雪乃(すがわら ゆきの)と眠っているのだ。

「でも、青葉さんはどうなるの?」沢子が焦った声を出す。

「あなたは毎晩雪乃さんの部屋で寝ているけれど、青葉さんの気持ちを考えたことがあるの?」

「青葉は、雪乃よりも強いから……」

その言葉が刃のように胸を刺した。青葉はよろめいて後ろに下がった時、壁際にあったほうきを倒してしまった。

部屋の中は急に静まり返った。

青葉は、逃げるように慌てて走り去った。

走りながら手のひらに激しい痛みを感じた。手を開いて見ると、握りしめていたバッジが皮膚を切り裂き、血が溢れていた。

この3ヶ月、毎晩そのバッジを握りしめて涙した。しかし今、それらすべてが馬鹿らしく思えた。

自分の夫は生きていた。

拓海はただ、雪乃のために、彼自身が死んだと自分に思わせておいたのだ。

5年前、青葉は親睦会で拓海と出会った。

拓海は屈強な部隊の隊長で、青葉は部隊の専属劇団のダンサーだった。

拓海を狙う女性は多かったが、彼は客席から熱心に「白鳥の湖」のステージを見届け、踊りきった青葉のもとへ向かい、その大きな上着を肩に掛けて言った。「風が冷たいので、暖かくして」

その大きな上着に包まれながら、青葉は恥ずかしさで真っ赤になった。

それから拓海のアプローチが始まり、任務の前には遠回りしてでも青葉の劇団を訪ねてきた。

青葉が交際を申し込まれた日、拓海は酔っ払って彼女を抱えて回りながら叫んだ。「俺の一生の人は青葉だけだ」

結婚後、誰もが拓海を愛妻家と呼び、青葉を大切にしていると噂していた。

青葉自身も、これ以上ないほど愛されていると感じていた。

しかし、現実はどうだ?

拓海は雪乃のために拓真を演じ、毎晩布団を共にして、妊娠の準備までしている。

そして自分は間抜けのように、夫のために泣いて、死のうとし、地獄のような思いをしてきたのだ。

拓海は、自分にも心があり、痛みを覚えるとは思わなかったのか?

青葉は頭がぼーっとするなか家へ戻ると、そこにはまた、仲人の上野紗枝(うえの さえ)が訪ねてきていた。

「青葉さん、賀川隊長が2週間後に離島に赴任されます。これでもう7回目の訪問になりますけれど……今回お断りするなら、一生帰ってこないそうですよ」

賀川隆平(かがわ りゅうへい)。拓海の同僚である。

青葉が夫の不在を告げられてからというもの、隆平は何度も訪ねて、結婚の意思を尋ねてきた。

しかしこれまでの6回は、断り続けていた。

自分には一生、拓海以外の人など愛せないと思っていたからだ。

だが、今は……

青葉は視線を上げ、穏やかな声で答えた。「はい。そのお話、お受けします」

紗枝は呆気にとられた。「えっ、本気でおっしゃっているんですか?」

「ええ」青葉は笑顔を見せた。「お手数ですが、あちら側にお伝えください。2週間後に彼のもとに嫁ぎ、一緒に離島へ行くと」

その瞬間、ふすまが開いた。顔を曇らせた拓海が立ち尽くしている。「青葉さん、誰と結婚するっていうんだ?」

青葉は彼を見て、ただおかしく思えた。

「拓真さん」青葉は低く答えた。「これは私個人のことです」

拓海は紗枝を見つめたが、手は青葉の腕を痛みを感じる強さで締め付けた。「青葉さんには俺がついてますから。それに彼女は拓海を心から慕っておりました。再婚などありえないので、二度とこんな話を持ち込まないでください。次は容赦しませんよ!」

紗枝は混乱を隠せなかった。「しかし、さきほど青葉さんが承諾……」

話の途中で、青葉がそっと紗枝を引き離した。「上野さん、デパートに行く用事があるんでしょう?今のうちに済ませてください」

促されるまま紗枝は慌てて応じ、逃げるようにその場から去った。

紗枝がいなくなるのを確認してから、拓海はようやく手の力を緩めた。「青葉さん。拓海を亡くして辛いのは分かりますが、俺がついてますから。今後はこのような縁談は、俺が全て追い返しますので……」

今、青葉にとって、すべての仕草が哀れに思えてならなかった。

他の部屋で雪乃と寝ているくせに、自分の再婚は怖いというのか?

この世に、そんな身勝手な道理があるだろうか。

だが、青葉はただそれを押し込めて、おとなしく頷いた。

どうせ2週間後には他人になり、永遠に離れるのだから、何を言われても関係なかった。

その晩、青葉が静かにパッキングをしていると、薄い隔てを超えてあの擦れ合う音が響いた。

以前であれば、そんな動きも愛し合う普通の夫婦のやりとりだと済ませられただろう。

しかし今は、その息遣いがまるで刃物のように突き刺さる。

あれは間違いなく、愛し合う時に拓海が漏らしていた音だ。自分だけが聞いていたはずの、拓海の声。

「うああ!」

夜空に響き渡った悲鳴。駆けつけると、薄着で乱れた様子の雪乃を抱えて飛び出す拓海が見えた。月明かりに、雪乃の真っ白なパジャマが赤い血に染まっていく。

近隣の住民が騒ぎに気づき、数人が身を乗り出して尋ねた。

「まあ、いったい何かしら?」

「そういうことをしているときに、ちょっと激しすぎて出血したらしいよ……」

「あらあら。拓真さん、日頃はずいぶん厳格そうなのに、なかなか激しかったのね……」

人混みの中に立ち、青葉は冷え切っていく感覚に陥った。

戻ろうとすると、隣人が彼女を引き止めた。「青葉さん、家族なんだから様子を見てきなよ!」

あらぬ噂を立てられるのを防ぐため、彼女は上着を羽織って病院へと向かった。

廊下に立ち込める消毒液の匂いが、青葉の目に染みた。

拓海が不安そうに歩き回り、青葉の姿を見つけると一瞬止まった。

「なぜここに?」

青葉は口元を歪めた。「家族として、様子を見るのは当然のことですから」

突然手術室のドアが開き、医者が顔を出した。

「安心してください。奥さんは大丈夫ですよ。妊娠中ですから、しばらくは控えめにするように……」

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