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2 もうひとつの告白

Author: けいこ
last update Huling Na-update: 2025-07-25 11:26:21

祥太君、あなたは本当に素晴らしい才能を持っている。この素敵な音色を、このままずっと聴いていたい。

これから先も、ずっとずっと弾き続けてもらいたい。

心からそう思った。

気づけばコンサートの終了時間。

本当にあっという間だった。

涙をぬぐいながら席を立つ人がたくさん見受けられ、それぞれの余韻を楽しんでいた。

私の隣の女性達も、祥太君に魅了されたことを口にしていた。

「祥太様、最高だった」

「本当に……。もう、素敵過ぎて涙が止まらないわ」

「次はいつ会えるのかしら……。しばらく会えないなんて、何だか切ない」

まるで恋人のような女性達のセリフを聞いていると、翔太君にいつでも会えることに感謝しなければ……と思った。

私も感動で胸がいっぱいになったけれど、なんとか平静を取り戻し会場を出た。

コンサート後の片付けや、そのほかにもいろいろやることがあるだろうから、しばらくは外に出てこられないだろう。

私は、先に、待ち合わせ場所に指定されたレストランに向かうことにした。

到着して席に着いた途端、祥太君からメールがきた。

「レストランで少し待ってて」と。

そして、その数分後、それほど待たずに祥太君が入ってきた。

「えっ、こんなに早くきてくれたの?楽団は大丈夫?片付けとか、いろいろあるんじゃない?」

驚いて訊ねたら、祥太君は少し息を切らしながら答えた。

「大丈夫。みんなには大事な約束があるって話してるから。待たせてごめんね」

「大事な約束」と「待たせてごめん」のフレーズにキュンとなる。

ほとんど待っていないのに、しかも、かなり急いでくれたのがわかるから、すごく嬉しい。

優しく微笑む祥太君の顔が素敵すぎて……

私の心臓は高鳴り、ドキドキせずにはいられなかった。

あの演奏を聴いた後だから、余計にそう思うのだろうか?

祥太君も席につき、メニューに目を通し、2人それぞれ違うものを注文した。

美味しそうな洋食がたくさんあって迷ってしまった。

「今日は素晴らしい演奏、本当にありがとう。コンサート、最高に良かったよ。ピアノも素敵だった。すごく感動したよ」

「本当?だったら良かった、どうだったか気になってたから。とにかく来てくれて嬉しい。忙しいのにごめんね。本当にありがとう」

「とんでもない。こちらこそ、招待してもらえて幸せだった。ありがとう」

ありがとうが飛び交う会話、何だか素敵だと思った。

「舞
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