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第277話

Auteur: 十一
深夜、激しい雨が降り出した。

海斗は別荘に戻り、車を停めたが、降りる気にはなれなかった。

目の前にあるその家は、凛がない場所であって、もはや「家」と呼べるものではなかった。

彼はタバコを取り出し、火をつけた。

閉ざされた空間では、煙も閉じ込められ、拡散することができない。

深紅の火の粉は男の指先で飛び跳ね、白い煙と共に立ち上り、すぐに彼の顔が見えなくなる。

海斗は暗闇に沈み込み、まるで夜と一体になるかのようだった。

タバコ一本が燃え尽きる時間は、長くも短くもない。

タバコが燃え尽きると、男の曖昧だった視線はいきなりはっきりと鋭くなった——。

凛を諦めるなんて、絶対にありえない!

過去に手にしたものを失ったとしても、将来再び手に入れられないわけではない。

もし……

彼女を取り戻せれば、すべては元通りになる。

海斗はドアを開けて降り、タバコの吸い殻を捨て、別荘へと歩き出した。

晴香が玄関に立ち、笑顔を浮かべている。

海斗は時計を見た。午前1時だ。ふん……

「海斗さん、私……」

晴香が口を開こうとしたが、一言も終わらないうちに、男は彼女を無視して中へと入った。

そこに立つ彼女という存在は、まるで空気と同じように扱われたみたい。

晴香の笑みがこわばった。

しかし彼女はすぐ表情を整え、再び笑みを浮かべた。「海斗さん、今夜は私が料理を作ったの。電話しても出てくれないし、ブロックされたから……メッセージも送れない……」

海斗は足を止め、振り返って彼女を見た。「何、文句あるのか?」

「違う違う……ただ、ブロックを解除してほしいの。連絡が取れないと、心配だから」晴香はおそるおそるに言った。

男は黙ったまま、拒否する言葉さえ言い惜しむ様子だった。

しかし彼女は気づかないふりをして、食卓へと歩み寄り、独り言のように言った。「いつ戻るかもわからなくて、待つしかなかったの……この料理、何度も温め直したから、もう食べられないわ……」

海斗はテーブルの料理を見下ろし、ふっと笑った。

蒸し海老、挽き肉の茶碗蒸し、セロリ炒め、高菜漬けの春雨スープ。

「どうしたの、海斗さん?」

「上手に作れたね。次回からは結構だ」

彼はエビアレルギーで、挽き肉とセロリも食べない。

高菜漬けと春雨は特に問題ないが、スープに大きな生姜の薄切りがあるから、一瞬で食
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