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第742話

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月子の手は少し震えていた。

「月子、また会いに来る。待ってろよ」

静真が電話を切った瞬間、望遠鏡のレンズに隼人が現れた。彼はすぐに月子を抱きしめて無事を確認すると、鋭い目つきで顔を上げ、静真のいる方角を見つめてきた。かなりの距離があったので視線が合うはずはない。しかし、二人の視線は確かにはち合わせたようだった。見えない火花が二人の間に散った。

静真は鼻で笑った。「もうバレたのか?」

彼はスマホを放り投げ、その場を立ち去った。

月子に会って、声が聞きたかった。でも、見つかる危険もあった……それにしても隼人の動きは早い。自分が何か無茶をするとでも思っているんだろうな。

「どうしたの?」月子は静真の言葉からやっと我に返った。顔を上げると、隼人の目に宿る険しい光に気づいた。「何かあったの?」

「静真が、ここにいる」隼人は冷たい声で言った。

月子は驚いた。静真の執念深さを、少し見くびっていたようだ。まさかここまで追いかけてくるなんて。

「もう追っ手は向かわせた。だが、おいつくかどうかは分からない」隼人の言葉には怒気が滲んでいたが、すぐにそれを収めた。そして月子に向き直ると、「あいつから電話があったのか?」と尋ねた。

月子は目を伏せ、静真に言われたことを全て隼人に話した。「彼は、私たちの間に刺さる一本の棘になるって」

隼人は彼女を見つめ、きっぱりと言った。「そんなことにはさせない」

もちろん、月子も同じ気持ちだった。

誰を好きになって、誰と一緒にいるかは、彼女自身の自由意志だ。他人に簡単に変えられるわけがないのだ。

静真の一件があったので、月子は将来の話を切り出すのを一旦やめた。二人は付き合い始めたばかりだったからだ。まるで長年連れ添った夫婦のようでありながら、まだラブラブな時期でもあった。そこに静真の挑発が加わったことで、二人は暗黙のうちにお互いをより大切に思うようになった。今の二人は、ただずっと一緒にいたいと、そう願うだけだった。

未来のことなんて、数ヶ月もすればまた月子の考えも変わるかもしれない、だから今まだ言わないでおこうと月子は思った。

そうこうしているうちに、時間はあっという間に流れて6月になった。

要と葵の時代劇はクランクアップし、すでに新しい作品に入っていた。美咲が出演した青春映画も撮影を終えた。そして、月子とSYテクノロジーが
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