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第752話

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隼人は不動産をたくさん持っているから、引っ越しは珍しいことじゃない。賢もそう思っていた。でも、こんな真夜中に連絡してくるなんて、どう考えてもおかしい。

だから隼人から、月子の家から引っ越すと聞かされた時、賢はようやく事の重大さに気づいたんだ。

賢は人を四人ほど呼んで家に入ると、その場で呆然と立ち尽くした。

部屋の電気は消えていて、窓の外のネオンが少し差し込むだけだった。隼人は一人ソファに座り、まるで石のように固まって闇に溶け込んでいた。

賢が電気をつけると、その明かりが眩しかったのか、隼人は目を閉じて手で覆った。

黒いシャツのボタンは二つほど外れ、あちこちシワになっている。隼人が手を下ろすと、その口元には青々とした無精髭が生えていた。

表情だけ見れば、隼人は普段と変わらないように見える。だけど、その全身から発せられる空気は息が詰まるようで、珍しくやさぐれていた。

「隼人、どうしたんだ?」賢は薄々何かを察していたけど、信じられなかった。きっと、何かの間違いだろうと。

「俺の荷物を全部運び出してくれ」隼人は静かに命じた。

賢は顔色を変え、何かを問い詰めようとした。でも、すぐに冷静さを取り戻し、連れてきた人たちに荷造りを始めるよう指示した。

すぐに、広い部屋には作業の音だけが響き渡った。賢は隼人のそばにいてやりたかったけど、そうもいかない。ここは月子の家だから、どれが隼人の荷物か分からないものは、その都度確認しなければならなかったからだ。

「まだ開けてないプレゼントがあるんだけど、これは置いていくのか?」

隼人が視線を向けると、それは出張の土産に月子へ買ってきたアート作品だった。彼女はまだ、それを開ける時間がなかったらしい。

「それはここに置いていけ」

賢はまた作業の監督に戻った。服や日用品、隼人の写真、そして二人のツーショット写真まで。隼人に一つ一つ確認しながら、すべてを箱に詰めていった。

二時間後、部屋からは隼人が暮らしていた痕跡がほとんど消えていた。月子へのプレゼントを除いては。隼人は出張に行くたび、何か思いつけば月子にプレゼントを買ってくるのが常だった。

まだ一年も住んでいなかったのに、荷物は段ボール箱で二十個以上になった。

「隼人、この箱は全部、隣の部屋に運ぶのか?」

隣の部屋なんかに住んで、月子に会いたくなる気持ちを我慢でき
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Comments (5)
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敬江
悲しすぎてツラい… 月子と隼人の復活を願っています。
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アイアイ
二人で乗り越えるべきだと思うけど…なんか胸糞悪くて読み進める気が失せた…
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kanco
隼人が去ることが本当に正解なのかな…。
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