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第812話

Auteur: おミカン
まるで相手の魅力が跡形もなく消え去ったかのように、梨乃は急に興ざめする。

手に入らないものほど愛おしく思えるというのは、こういうことなのだろう。

今の章に対して、そんな感情は微塵も湧かない。ただ、心の底で皮肉な気分を味わっている。

章は眉をひそめる。

「大したことじゃない」

梨乃は心の中で鼻で笑い、シートに背中を預けて口を閉ざす。

記憶にある限り、章は自分からアプローチして失敗した唯一の男だ。

自分という人間は、元来ハードルの高いことに挑戦するのは好きではない。

困難にぶつかっても恐れることはない。ただ、諦めることさえ知っていればいいのだ。

二十分の道のりが、梨乃には果てしなく長く感じられる。

狭い車内で、章から漂うかすかな香りが鼻先を掠める。

彼女はいっそ目を閉じ、車が夜の街を駆け抜けるスピードだけを感じることにする。

隣に座る男は、ひどく静かだ。

時折こちらを見ている気配はあったが、まぶたが鉛のように重く、頭もぼんやりとしていて、目を開けて確かめる気にはなれなかった。

章は彼女の冷ややかな横顔を見つめ、唇を真一文字に結ぶと、漆黒の瞳をそっと逸らす。

マ
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Commentaires (1)
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hime
アカウントの【E】は絵里のE 今日はラブストーリーだけかい サクサク進めよう!終わらせよう!
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