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第8話

Autor: かけるに
礼都の秘書である唐沢は、すでに待機していた。

「秋谷さん、どうぞこちらへ」

梨沙は礼儀正しく頷き、望の手を引いて邸宅の中へ足を踏み入れる。

吹き抜けになった十数メートルもの高さのロビーを抜け、黒革のソファの前まで案内された。

唐沢が手を差し示す。

「少々お待ちください。土岐様は書斎にいらっしゃいますので、お呼びしてまいります」

「わかりました」

梨沙は望を連れてソファに腰を下ろした。

望は三メートルはありそうなシャンデリアを見上げ、小声で呟く。

「ママ、ここすごくきれい......!」

梨沙は微笑み、望の耳を軽くつまんだ。

「そうね」

望はさらに尋ねる。

「ここに住んでる人って、ママのお友達?」

梨沙は少し考えてから答えた。

「ママのお友達じゃないわ。ママを助けてくれた優しい人。望の――」

そこまで言いかけた時。

二階から足音が響いた。

梨沙は反射的に立ち上がる。

振り向いた彼女の視界に最初に入ったのは、階段を降りてくる礼都の長い脚だった。

仕立ての良いスラックスに包まれた脚は、無駄なく引き締まり、力強い。

絨毯敷きの階段を踏む音は重すぎず軽す
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    オークション会場の入口。きっちりと制服を着込んだ受付係が手を差し出した。「招待状とVIPカードをご提示ください」梨沙は淡々と言う。「梨沙です。飛田海渡の妻です」受付係は眉をひそめ、値踏みするような視線を梨沙の顔から裾へと滑らせた。「飛田様とその奥様でしたら、三分ほど前にすでに入場登録を済ませていますが」梨沙は眉を寄せる。「彼に電話してください」受付係は口元をわずかに歪めた。斜めから見下ろす目には、露骨な揶揄が滲んでいる。「飛田様は今、奥様とご一緒ですので。わざわざ気分を害するような真似はしたくありません」この業界では、こういう話など珍しくない。

  • 再婚、そしてまた再婚......気づけば御曹司に溺愛された   第3話

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  • 再婚、そしてまた再婚......気づけば御曹司に溺愛された   第2話

    雪は音もなく降り積もる。まるで、この世のすべてを埋め尽くしてしまうかのように。車内では、森下の声だけが静かに響いていた。「結婚後、夫婦の財産管理はずっと飛田さんが握っていましたよね?一度、彼の資産状況をきちんと調べた方がいいと思います」梨沙は不思議そうに首を傾げる。「以前、IT企業のトップが『年収1円』だった件を思い出したんです......いえ、飛田さんがそこまでしているとは思いませんが。結婚当初からあなたを騙すつもりだったとは、さすがに考えにくい」梨沙は黙って頷いた。「調べてみます。その前に、銀行へ寄ってもらえますか」銀行を出て帰宅した梨沙は、玄関を開けた瞬間

  • 再婚、そしてまた再婚......気づけば御曹司に溺愛された   第1話

    「海渡さんと梨沙さんが結婚して2年の間に、私たち、500回もしたんだよ?ねえ、海渡さん、梨沙さんってこれを知ってるのかな?」甘ったるい声が、ドアの隙間から漏れ聞こえてきた。秋谷梨沙(あきや りさ)はその場に立ち尽くした。全身の血が、一瞬で冷え切っていく。耳が聞こえるようになったことを飛田海渡(ひだ かいと)に伝えたくて、浮き立つ気持ちのまま彼のオフィスへ来たのに。そこで聞かされたのは、海渡の裏切りだった。相手は他の誰でもない。海渡の義妹――そして、弟を植物状態に追い込んだ元凶でもある、露木明里(つゆき あかり)。梨沙は目を伏せた。――聞こえるって、こんなにも

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