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第327話

Author: 青ノ序
以前、綾が無垢で守るべき存在だと思っていた。

だがこの1年で、自分は綾のことを何も知らなかったと気づかされた。

綾は、自分が知る誰よりも強く、そして信念を持った人だった。

「湊、準備は全て整った。午後には療養所へ行けるよ」

達也が病室に入ってきた。今日は白衣を脱ぎ、スーツ姿で現れた。

湊は苦笑を浮かべて聞いた。「送ってくれるのか?」

「ああ、空の上でくたばった時の見届け人ってところだ」

達也はぶっきらぼうに言った。湊の頑固さは筋金入りだ。今日行くと言えば、何があっても引き下がらない。

「悪いな」

湊が視線を向けた途端、笑みが凍りついた。

「アンナ?」

「ごめんなさい、こんなに遅くなってしまって」

アンナはゆっくりと病床へ近づくと、涙を浮かべて湊を見つめた。

しかし、湊は冷たく突き放した。「会いたくない。出て行ってくれ」

かつてI国を訪れた時も、アンナは湊を避け、ボディガードを使って追い返した過去がある。

あの日を最後に湊は、自分には母親などいないと思うことにした。

「あなたのお父さんが私を海外へ売ったあの年、私はエステ家のカジノに多額の借金を作り、死ぬま
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