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第174話

Auteur: 幸月
「無理をしていないか?」

裕司は帰らず、杏奈の隣の椅子に腰を下ろした。「もし辛いなら、協業の話は……」

「大丈夫です」杏奈は首を振り、言葉を遮った。「あちらから好条件を出してきているのに、断る理由がどこにあるんですか」

「それもそうだな」

裕司は小さく頷いた。杏奈がすでに過去を吹っ切っていることが、その横顔から確かに伝わってきた。

「そういえば」ふと思い出したように、杏奈は振り向いて裕司を見た。

「正直に教えてください。主催者が招いたというあの著名なデザイナー、一体誰なんですか?どこかでお見かけしたような、まるでよく知っている人みたいな気がして」

本当は、自分の師匠ではないかと思っていた。ただ、師匠はとうの昔に国際的な舞台で確固たる地位を築き上げている。こんな国内の展示会に、わざわざ足を運んでくれるはずがないと、必死に自分に言い聞かせていたのだ。

「誰だと思う?」

裕司が答えるよりも早く、背後から静かな声が響いた。

杏奈は全身を硬直させた。恐る恐る振り返り、その人物の顔を認めた瞬間――目頭が、じわりと熱を帯びた。

「師匠……」

記憶の中にある姿からは、随分と変わ
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