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第257話

Auteur: 幸月
元は円香の軽口など相手にせず、ただ真っすぐに杏奈を見つめていた。彼女の静かな瞳に軽蔑や怒りの色がないと確かめると、ようやく張り詰めていた心の糸が解けるのを感じた。

なぜかは自分でもわからない。ただ、この人に誤解されるかもしれないと想像しただけで、胸が締め付けられるように痛むのだ。

その緊張した視線を受け止め、杏奈は少し不思議に思いながらも深くは詮索せず、静かに礼を述べた。「ありがとうございます」

「いや、別に……」

短い言葉がぎこちなく交わされ、病室に再び重たい静寂が下りた。

円香が鬱陶しそうに眉を吊り上げる。「まだいるの?」

「あの……」

元は口を開きかけては、また閉じた。どう切り出していいのかわからないらしい。

その様子を察した円香が、ピシャリと言い放つ。「ちょっと待って。そんなに言いにくそうにためらってるなら、いっそ最初から言わなくていいから」

元は内心呆気にとられた。

普通、相手がもじもじとしていたら「どうしたの?」と聞いてくれるものではないのか。

「まあ、いいわ」杏奈が円香を遮り、元へ向き直った。「何か言いたいことがあるなら、はっきり言ってちょうだい」

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