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第2話

Author: ロウイー
熱が下がった日、母から連絡があり、家に帰ってご飯を食べるよう言われた。

「祐介が結婚するから、新居のことを相談しようと思って」

母は相談すると言ったけど、実際にはもう話は決まっていた。

食事中、父が間取り図を出した。

「頭金がまだ800万円足りない。お前と白夜は余裕があるんだから、祐介のために立て替えてやれ」

弟の許斐祐介(このみ ゆうすけ)はうつむいたままスマホをいじっていて、まるで自分には関係のないことだと言わんばかりだった。

私は聞いた。「どうして私なの?」

母は一瞬きょとんとした。これまでの20数年間、彼らが何を求めてきても、私は一度も理由を尋ねたことがなかったのだ。

「あんたは姉でしょ。姉は弟を助けずに、誰を助けるの?」

「彼は27歳で、仕事もあるし、お金だって稼げるんでしょう」

母は顔を曇らせた。

「祐介の結婚は家族みんなの大事でしょ。服を何着か我慢すれば、お金なんてすぐ貯まるでしょ」

私は母の新しいコートを見た。

先月、お正月に着る服がないと言われ、12万円を振り込んだばかりだった。

私自身、そんな高い服を買ったことなど一度もない。

白夜がテーブルの下で私の手を握った。

彼が私の味方をしてくれるのだと思ったが、彼は銀行カードを取り出した。

「お義母さん、お金は俺が出します」

母はすぐに笑顔になった。

「やっぱり白夜は話がわかるわ」

私は銀行カードをひったくった。

「これ、私たちが引っ越しのために貯めてたお金でしょ」

白夜は思わず眉をひそめ、声を潜めた。

「祐介が急いでるんだ。引っ越しは後回しにすればいい」

「私に相談した?」

「こういうこと、前の君なら気にしなかっただろう」

彼の目には、本気で戸惑っている色が浮かんでいた。

まるで、昔から何でも言うことを聞く私こそが、彼にとって当たり前だったかのように、拒むことも、怒ることもある私が、かえって見知らぬ他人になってしまった。

祐介が顔を上げた。

「義兄さんがいいって言ってるのに、なんでそんな顔するんだ?返さないって言ってるわけじゃないし」

「あんたが前に借りた240万円、返した?」

祐介の顔は真っ赤になった。

母が箸をテーブルに叩きつけ、私を指さして怒鳴った。

「家族なのに、そこまできっちり計算して何が楽しいの?」

「すごく楽しいよ」

私は銀行カードをしまい、席を立って家を出た。

母が玄関まで追いかけてきて、思いきり私の頬を叩いた。

焼けるような痛みが、一気に広がった。

母は私を力いっぱい外へ突き飛ばした。

「私はこんな恩知らずを育てた覚えはないわ!」

白夜が追いかけてきて、私にコートをかけてくれた。

「熱が下がったばかりなんだから、風に当たるな」

私は震える手で、コートを彼に返した。

「あなたも、私が間違ってると思う?」

私は静かに彼を見つめ、心の奥には、ほんのわずかだけ期待が残っていた。

たった一度でいい。彼が私の味方になってくれますように、と。

でも、1秒、2秒と待つうちに、心がゆっくり沈んでいった。

私は手のひらを強く握りしめた。

ようやく、彼の気のない返事が聞こえた。

「お義父さんとお義母さんのやり方は良くなかったけど、祐介は本当に困ってるんだ。助けて何が悪い?親に口答えするのは良くない」

「じゃあ、私は殴られても当然ってことなの?ずっと我慢し続けるべきなの?」

「君は姉だ」

私は笑った。

またそれだ。

子どもの頃、私は姉だから、家族写真に私一人がいなくても構わなかった。

その後も、私は姉だから、ケーキは弟が先に取るべきだった。

大人になった今も、姉だから、私のお金も、家も、時間も、すべて差し出すべきなのだ。

「白夜、私は姉であると同時に、あなたの妻なの」

あなたは私の味方でいるべきじゃないの?

彼は一瞬、言葉に詰まった。

「わかってる」

「いいえ、あなたはわかってない」

彼は難しい顔をして、最後にため息をついた。

何かを言いかけたその時、静玖から電話がかかってきた。

彼女の離婚調停で問題が起きたらしく、来てほしいという内容だった。

白夜は困ったように私を見た。

「先に帰ってたらどうだ」

私は答えなかった。

すると彼はなだめるように私の手を軽く握った。

「夜、帰りに君の一番好きな店の甘栗を買ってくるから」

そう言うと、彼は慌ただしく去っていった。

その足取りには、一瞬の迷いもなかった。

その後、私はひりひりと痛む顔のまま、一人で家に帰った。

しばらくして、静玖から動画が送られてきた。

動画の中では、白夜が彼女の前に立ち、誰にも触れさせまいと必死にかばっていた。

あんなふうに彼が誰かを守る姿勢を見せたことは、私には一度だってなかった。

それどころか、夫の白夜は私のために、一言余計に言ってくれたことさえもなかった。

誰かが彼と静玖の関係を尋ねていた。

私は彼の答えを最後まで聞かず、動画を閉じた。

白夜が家に帰ったのは、かなり遅くなってからだった。

玄関を入った時、彼の手には何もなかった。

私がまだ起きているのを見て、彼は少し驚き、いつものように私を抱きしめようとした。

ふわりと、女性ものの香水の匂いがした。

この匂いを覚えている。ある年のバレンタインに、白夜が私に贈ってくれた香水と同じものだった。

その後、静玖のところで同じ匂いを嗅いでから、私は一度も使わなくなった。

彼の口調には、機嫌を取るような響きがあった。

「金は渡してない。これから共有口座を使う時は、先に君に相談するから」

私は答えず、ただ言った。

「甘栗、買ってきてくれるって言ったよね」

彼は一瞬、固まった。その後、何事もなかったかのように私から手を離し、ネクタイを緩めた。

「買おうとしたら、ちょうど最後の1袋でさ。静玖が食べてみたいって言うから……明日また買ってくるよ」

心の奥から、冷たいものが広がっていく。

一度や二度、用事があって忘れたのなら、まだいい。

でも今回は、彼はまるで習慣のように、私がこれまでのように気を利かせて、最後の1袋の甘栗を譲るのが当たり前だと思っているのだ。

彼のスマホがまた鳴った。案の定、静玖からだった。

白夜はベランダへ出て行った。

私はようやく、かすれた声を出した。

「もういいよ」

でも、彼は聞いていなかった。

その背中を見つめながら、私はただ、こんな生活なんてもう疲れた、と思った。

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