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第3話

Author: ロウイー
離婚の日まで、あと9日となった頃、私は病院で胃カメラの検査を受けた。

この検査は2か月前から予約していて、白夜は付き添うと約束してくれていた。

出かける前、彼は私のバッグに飴を一つ入れてくれた。

「検査が終わったら低血糖になりやすいから、起きたらまず舐めとけ」

彼は、私が痛みに弱いことも、空腹が続くと手が震えることも覚えていた。

車が病院の前に止まると、彼は私のシートベルトを外してくれた。

「怖がるなよ。ずっとそばにいるから」

彼がここまで細やかに気を配るのは珍しかった。

もう少しで、信じそうになった。

何しろ検査なのだ。誰かにそばにいてほしかった。

麻酔の同意書にサインをしようとしたその時、もう一度、静玖から電話がかかってきた。

彼女は裁判所の前で元夫に会い、行く手を阻まれているらしかった。

電話の向こうは怒鳴り声で騒然としていて、彼女は泣いていて、まともに言葉を話せない。

白夜は顔を真っ青にして、突然立ち上がった。

「ちょっと行ってくる」

私はとっさに彼の袖口をつかんだ。

「検査まで、あと10分しかない」

彼は声を潜めた。でも、その声にはわずかに苛立ちが混じっていた。

「あっちは何かあるかもしれないんだ!」

「私にだって、家族のサインが必要なの」

横にいた看護師が急かした。「次の方、お入りください」

私は同意書を彼の前に押し出した。

「サインしてから行って」

彼がペンを握った。

けれど、まだペン先が紙に触れる前に、電話の向こうから静玖の泣き叫ぶ声が聞こえた。

白夜は険しい顔のまま、素早くペンを置いた。

「喬子、君はいつも自分のことはちゃんとできる。だから俺がいなくても大丈夫だろう。しかし静玖と君は違うんだ。今、彼女のそばには誰もいないんだ」

私は数秒間、彼をじっと見つめた。そして、震える声で聞いた。

「私のそばに、誰かいるの?」

彼は答えに詰まった。

私は同意書を引き戻した。

「もう行っていいよ」

彼は身をかがめ、私を抱きしめた。

「信じてくれ。すぐ戻るから」

私は動かなかった。

結局、看護師が付き添いのスタッフを一人探してくれた。

麻酔をかける前、医師に家族はいるかと聞かれた。

私は涙をこらえ、いないと答えた。

目が覚めると、観察室の明かりが目にしみて痛かった。

周りの人にはみんな支えてくれる人がいた。

でも、私だけは一人でベッドの端につかまって起き上がり、バッグからあの飴を取り出した。

飴の包み紙は体温で温まり、指先に張り付いた。

口に入れたが、甘さは感じなかった。

午後4時、ようやく白夜が駆けつけた。

シャツはしわになり、額の端には傷があった。

「彼女の元夫が手を出してきて、俺が止めに入ったんだ。検査の結果は?」

「慢性胃炎」

彼はほっとしたように息をついた。

「たいしたことなくて良かった」

「私、麻酔の前に3回電話したんだよ」

彼の指がぴたりと止まった。

「現場が騒がしくて、聞こえなかった」

「3回目は、付き添いのおばさんがかけてくれたの。私が麻酔でアレルギーを起こさないか心配で、家族が来てるか確認したかったんだって」

彼の顔色が変わった。

「アレルギーを起こしたのか?」

「ううん」

「そういうことは、なんで前もって言わないんだ?」

私は思わず笑った。

「検査の時間も、麻酔のリスクも、全部あなたに伝えたよ。あなたはただ、私には何も起きないと思ってただけ」

家に帰ると、彼は埋め合わせをするように家の中をあれこれ動き回り、胃に優しい料理まで作ってくれた。

茶碗を置いた途端、静玖から額のあざの写真が送られてきた。

白夜は言った。「ここ数日、彼女をうちに泊めるかもしれない」

「ホテルに泊まることもできるし、ほかの女性の友達に頼ることもできるでしょ」

「彼女は俺しか信じられないんだ」

「じゃあ、私は?」

「喬子、こんな時にやきもちを焼くなよ」

私の検査も、恐怖も、3回の電話も、彼の目にはただの「やきもち」にしか映らないらしかった。

私はスプーンを置いた。

「わかった」

彼は少し意外そうだった。

「許してくれるのか?」

「うん」

どうせ、あと9日だ。すぐに、私の許可なんていらなくなる。

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